「かん黙」という表記について

2017年09月22日(金曜日)


場面緘黙症は略して「緘黙」と呼ばれることが多いですが、「かん黙」と表記する場合もあります。前回の「かんもく」に続き、今回は「かん黙」について調べてみました。

「かん黙」の主な用例


「かん黙」の主な用例を挙げてみます。

  • その対象となる軽度の情緒障害児とは、たとえば、登校拒否・かん黙等の……(1969年)昭和44年版『厚生白書』情緒障害児短期治療施設の対象の説明より

  • 『学校かん黙事典』(1989年)書名

  • 自閉、かん黙等情緒障害のある者で、通常の学級での学習におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とするもの(1993年)文部省通達「通級による指導の対象とすることが適当な児童生徒について」情緒障害者の定義より

  • 主として心理的な要因による選択性かん黙等があるもので、社会生活への適応が困難である程度のもの(2002年)文部科学省通知「障害のある児童生徒の就学について」情緒障害者の定義より

  • 「場面かん黙」を知ってますか?(2014年)NHK首都圏ネットワーク

  • 場面かん黙症(2017年)NTVザ!世界仰天ニュース

  • 選択(性)かん<縅>黙(?年)ICD-10

「かん黙」は、文科省など公的な性格の文書で目にすることがあるのが特徴です。ご覧の通り、情緒障害の文脈で使われています。私が最もよく見る用例は、文科省の通知の一文です。これは、緘黙が特別支援教育の対象であることの根拠に関わる重要な一文で、よく引用されます。もちろん、公的な文書以外でも使われることがあります。

また、主な用例としては挙げませんでしたが、「かん黙」は比較的専門的な文献でも目にすることが、たまにあります。

対照的に、「かんもく」は、かんもくネットなど固有名詞に「かんもく」がつくものが関係する場合を除いては、公的な性格の文書や専門的な文献で目にすることはかなり少ないです。専門文献については、学術文献検索サイト Google Scholar で検索しても分かります。

◇ Google Scholar "かん黙"で検索 (新しいウィンドウで開く

◇ Google Scholar "かんもく"で検索 (新しいウィンドウで開く


当事者、経験者、保護者はあまり使わない


わりと堅い読み物で使われることがあるのが特徴の「かん黙」ですが、インターネットで日ごろ緘黙について情報発信をする当事者、経験者、保護者の間では、「かん黙」表記はあまり使われません。

例えば、「かん黙」で Twitter のユーザー検索をすると、ほとんど誰もヒットしません(「緘黙」や「かんもく」では多数ヒットします)。また、緘黙のブログが多数登録されているにほんブログ村カテゴリ「場面緘黙症」でも、「かん黙」という題名のブログの登録は見つかりません。

◇ Twitter "かん黙"でユーザー検索 (新しいウィンドウで開く

◇ にほんブログ村カテゴリ「場面緘黙症」 (新しいウィンドウで開く

また、経験者や保護者らが関わる団体名やイベント名では見かけません。

「かん黙」の検索人気度は「かんもく」より低く、緩やかな減少傾向か


「Googleトレンド」というサイトによると、キーワード「かん黙」の検索人気度は、調査が行なわれた2004年以降、低位で推移しています。緩やかな減少傾向にあるようにも見えます。

◇ Googleトレンド「かん黙」の検索動向 (新しいウィンドウで開く

◇ Googleトレンド「緘黙」「かんもく」「かん黙」の検索動向 (新しいウィンドウで開く

2007年頃までは「かん黙」の人気度は「かんもく」と同程度だったのが、現在では「かんもく」を下回っています。上がるのは、「緘黙」の人気度ばかりです。


むすび


「かん黙」の表記は、行政関係者や専門家、メディア関係者などが使う場合がありますが、当事者や経験者、保護者が使うことは稀です。

「かん黙」が堅い文章で使われる傾向があるのは、文科省の通知に「選択性かん黙」(2001年以前は通達などで「かん黙」)とあることの影響かと思ったのですが、調べてみると、「場面かん黙」など行政文書にはない別の用例も見かけるので、そうとも限らないのかもしれません。

最近では、検索エンジンで「かん黙」と検索すると、自動的に「緘黙」検索に切り替わることがあります。こうなると、「かん黙」と検索する人はますます減っていそうです。また、情報を発信する側も「かん黙」は避けることでしょう。



「かんもく」という表記について

2017年09月16日(土曜日)


「かんもく」という平仮名表記


場面緘黙症を「場緘症」と呼ぶ人はいません。普通、「緘黙」と略します。

ですが、「かんもく」とか「かん黙」という、平仮名を使った表記も見られます。今回はそのうち、「かんもく」という表記について調べてみることにしました。


「かんもく」の主な用例


「かんもく」の主な用例を挙げてみます。

  • かんもくネット(2007年)団体名

  • かんもくの会(2007年)団体名

  • 『かんもくのあなたへ』(2008年)詩の名称

  • 信州かんもくサポートネットワーク(2012年)団体名

  • かんもくの声(2014年)個人名

  • 『私はかんもくガール』(2015年)書名

  • 信州かんもく相談室(2015年)団体名

  • かんもくグループ(2015年)団体名

  • 北海道かんもくセミナー(2015年)団体名

  • かんもくフォーラム(2015年)イベント名

  • かんもく少女が同人BL漫画を描いて人生救われる話(2015年)ウェブ漫画名

  • かんもくコネクト(2016年?)当事者・経験者

  • かんもくアコースティックライブ(2016年)イベント名

  • 『かんもくって何なの!?』(2017年)書名

「かんもく」表記は2007年から本格的に使われるようになりました。2007年の用例は「かんもくネット」「かんもくの会」の2つだけじゃないかと疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、この2つは当時の二大緘黙団体です。両者とも「かんもく」を冠したことは大きいです。

その後を見ていくと、2015年代半ばに、新たな用例が特に増えていることが分かります。

用例を分類すると、団体・個人名、読み物名、イベント名の大きく3つに分けられそうです。特に、団体名に目立ちます。読み物で「かんもく」の名称を用いた例は、コミックエッセイなど、一般向けの読みやすい読み物です。


「かんもく」表記は2007年から本格的に使われるように


お話したように、「かんもく」という平仮名表記が本格的に使われるようになったのは、2007年からです。2007年4月に誕生した緘黙の団体が「かんもくネット」を名乗ったのが始まりです。

緘黙の団体というと、それより少し早く誕生した「かんもくの会」もあります。ですが、実はこの団体は以前、「緘黙の会」を名乗っていました(正式名称は「日本へ最新の緘黙症治療法をもたらす会」でした)。実際、代表はブログの中で、2007年5月までは「緘黙の会」と書いています。それが、同年6月以降になると「かんもくの会」と平仮名表記になります。詳しくは、記事末尾「関連ページ」をご覧ください。

「かんもくネット」の誕生に続き、「緘黙の会」が「かんもくの会」と名を改めたことにより、2007年春頃、当時の我が国における緘黙の二大団体が、ともに「かんもく」の名称で並び立ちました。

なお、これ以前にも「かんもく」表記は無いことはありませんでした。例えば、1982年に発行された『特殊教育用語辞典』では、「かんもく症」と記されています(余談ですが、この辞典の緘黙の説明は誤りだと思います)。インターネット上でも、例えば2004年には「ちょびのかんもく日記」というブログが開設されています(現在は存在しません)。ですが、本格的に使われるようになったのは、お話したように2007年だったと私は見ています。


「かんもく」は表だけの場合が多い


これらは「かんもく」を冠した名称ではありますが、その中身を見てみると、「緘黙」と漢字表記を使っている場合が実は多いです。

例えば、かんもくネットは団体名こそ「かんもく」ですが、緘黙については「場面緘黙」という用語で統一しています。コミックエッセイ『かんもくって何なの!?』も、本の中身を読むと「緘黙」と書かれてあります。

ですが、少数ですが、中身も「かんもく」を使っている場合もあります。同じコミックエッセイでも、『私はかんもくガール』は、本の内容でも「かんもく」で通しています。また、北海道かんもくセミナーは、「かんもく」の平仮名表記で啓発活動を行なうことが多いようです。


「かんもく」の検索人気度は「緘黙」より低く、低位で推移


「Googleトレンド」というサイトによると、キーワード「かんもく」の検索人気度は、調査が行なわれた2004年以降ではほぼ変わらず、低位で推移しています。一方、「緘黙」の方は「かんもく」より高い上、緩やかな上昇傾向にあります。両者の人気度は年々広がっています。

◇ Googleトレンド「緘黙」「かんもく」の検索動向 (新しいウィンドウで開く


なぜ平仮名表記が使われるのか


なぜ平仮名表記が、このようなかたちで使われることがあるのでしょう。私なりにその理由を考えてみました。

「緘黙」という字は読めないから


まず、「緘黙」という漢字が難しく、ぱっと見たところ読めない人が多そうだからという理由が考えられます。このうち「黙」はそこまで難しい字ではないので、「かん黙」としてもよさそうなのですが、「かんもく」の方がメジャーです。「かん黙」は一部だけ漢字であることから、中途半端であるとして避けられているのではないかと私は思います。


「緘黙」より「かんもく」の字面の方が、親しみやすそうだから


「緘黙」という漢字表記はいかめしい感じがします。心温まるような詩や、可愛い絵柄のコミックエッセイの表題に使うには不向きそうです。


「かんもく」で他に連想させるものが、あまりないから


「かんもく」という表記を見て「関西木材市場」を連想する人は、一部の地域の業者に限られそうです。


むすび


ご覧の通り、「かんもく」表記が本格的に使われるようになったのは、かんもくネットが誕生した2007年からです。昔は緘黙の団体はありませんでしたし、可愛らしい絵柄で緘黙経験をコミックエッセイにすることもなかったので、「かんもく」表記も少なかったのかもしれません。

「緘黙の会」が、わざわざ「かんもくの会」に改名したのは興味深いです。しかも、当時の会の正式名称が「日本へ最新の緘黙症治療法をもたらす会」なので、「緘黙の会」の方が自然に思われます。なぜ「かんもく」に変えたのでしょう。

「かんもく」表記をよく見かけるようになりましたが、検索人気度では「かんもく」が低位で推移する一方、「緘黙」が上昇傾向にあるのは、私には意外に思えました。





場面緘黙症Journalの記事が、台湾で翻訳される

2017年09月10日(日曜日)


台湾の団体を取り上げた記事


『台灣選擇性緘默症協會』が誕生」という記事を先月公開したところ、場面緘黙症に関心をお持ちの台湾の方たちが、Facebook で拡散してくださいました。光栄なことに、私の記事の翻訳が掲載されるにまで至っています。

↓ 「台灣選擇性緘默症協會」の Facebook ページ。私の記事の翻訳が掲載されています。Facebook に登録されていない方でもご覧になれます。
◇ 「以下日本SMJ的報導……」
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↓ 団体の理事長(会長?)の黃晶晶氏のブログ。ここにも私の記事の翻訳が掲載されています。
◇ 日本SMJ報導台灣選擇性緘默症協會成立
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お蔭様で、たくさんの台湾の方が、私のブログにアクセスしてくださいました。ありがたいです。実のところ、台湾の団体を話題にした日本人は私だけではなかったのですが、私の場合ブログという形で紹介したことから、台湾の方に注目されたのかもしれません。

どちらにしろ、今回のことが、日本にも緘黙に関心がある人がたくさんいることを知っていただくきっかけになれたら嬉しいです。


日本に最も近い、海外の緘黙団体かも


日本には「かんもくネット」など緘黙の団体がいくつかありますが、近隣諸国でこのような団体の存在は、これまで私は聞いたことがありませんでした(韓国などで団体がもしあったらごめんなさい)。もしかすると、今夏誕生したこの台湾の団体は、日本に最も近い、海外の緘黙団体なのかもしれません。

こうなると、日台の団体間で交流が行なわれたら面白いかもしれないと思います。ただ、実のところ、先月私が書いた台湾の団体誕生の記事は、日本の方はあまり読んでくださいませんでした。国際交流の気運が盛り上がらないことには、交流は広がりにくそうです。もっとも、団体間の交流は各団体の方が考えることであり、私がどうこう言う問題では本来ありません。