場面緘黙症Journalブログ

場面緘黙(かんもく)症。選択性緘黙。学校など特定の場面で声が出ません。

教師・親の理解/無理解の4パターン

2017年01月08日(日)


全ての教師や親が、緘黙を理解しているわけではない


私たちの知っている多くのお母さんたちはとても明るく暖かく子どもたちの支援に取り組んでいらっしゃいます。むしろ、学校に理解し動いてもらうにはどうしたらいいのか、と日々試行錯誤してるのです。

有力な親の会の一つ「つぼみの会 (場面緘黙 親の会 関東)」さんによる、映画『校庭に東風吹いて』の感想の一部です。

↓ 「つぼみの会 (場面緘黙 親の会 関東)」さんのブログへのリンク。
◇ 「 映画『校庭に東風吹いて』鑑賞&お話会まとめ
 (新しいウィンドウで開く

学校は、必ずしも緘黙のことを理解して支援に動いてくれるわけではないのでしょうか。教師の無理解を訴える当事者・経験者、保護者の話は、私も多数目にしています。

その一方で、親が理解してくれない・理解してくれなかったという当事者・経験者の話も昔から目にします。私にしても、学校で話せなかったことに理解がなかったのは、学校よりもむしろ親の方でした(私の場合、診断は受けていませんが)。


教師・親の理解/無理解を4パターンに分類


そこで、教師・親の緘黙に対する理解/無理解を、4つのパターンに分けてみることにしました。

パターン1:教師も親も、緘黙を理解しているパターン
パターン2:教師は緘黙を理解しているが、親は無理解なパターン
パターン3:教師は緘黙に無理解だが、親は理解しているパターン
パターン4:教師も親も、緘黙に無理解なパターン

つぼみの会さんが見ている現状は、パターン3に相当するだろうと思います。一方、私自身の経験はパターン2に近いです。

それぞれのパターンについて、私なりに思うところを書いてみたいと思います。

パターン1:教師も親も、緘黙を理解


これは、緘黙当事者の支援に理想的なかたちです。緘黙の本は、このかたちを前提に書かれている場合もあります。


パターン2:教師は緘黙を理解しているが、親は無理解


場面緘黙症の児童生徒は家庭では話ができることから、親は子どもの問題に気付いたり、事の重大さを認識したりはしにくいかもしれません。こうした親が、親の会に入会することはあまりないような気がします。場面緘黙症Journal にアクセスすることもそうなさそうです。

親は子どもにとって身近な存在です。また、一般に親は、学校の担任教師と比べて長期的に子どもと関わります。それから、緘黙は学校場面だけで現れるわけではなく、学校外での緘黙支援には親の役割が期待されます。親が無理解だと、このあたりが問題になりそうです。

理想的なかたち(パターン1)にするには、教師や当事者が、親に理解を求める方法などが考えられます。Twitter では、当事者・経験者が親に理解を求めたものの、相手にされなかったという話を何度も目にしたことがあります。子どもが親に理解を求めることの難しさを感じます。

なお、家庭には親が二人いる場合が多いですが(私のように片親の家庭もあります)、一方の親は理解があるのに、もう一方は理解がないという場合もあります。


パターン3:教師は緘黙に無理解だが、親は理解


このパターンの場合、学校で緘黙児に対する支援が適切に行なわれていないと考えられます。緘黙は主に学校場面で現れるのに(もちろん、それ以外の場面でも現れることがあります)、その学校で支援が行われていないと問題です。よく緘黙を理解してほしいという話になると、特に教師の理解を得ることが重視されますが、それは、このあたりのところが理由ではないかと思います。

理想的なかたち(パターン1)にするには、親が教師に理解を求めるか、当事者が教師に資料を渡すといった非言語的なかたちで理解を求めることになるだろうと思います。緘黙の本の中には、教師から理解を得るための具体的な方法を書いたものもあります。

平成28年度(2016年度)から障害者差別解消法が施行され、学校は障害者に合理的配慮を行なうことが義務化されました(ただし、私立は努力義務)。緘黙児がこの法律で定める「障害者」の定義に含まれるのかどうか、正確なところはいまだに私には分からないのですが、合理的配慮の流れは緘黙にもきていて、学校は配慮の要望があれば本来放ってはおきにくいはずではないかと思います。


パターン4:教師も親も、緘黙に無理解


緘黙児は、教師からも親からも支援が得られない状況です。4つのパターンのうち、最も厳しい状況です。

しかも、もし当事者自身が「場面緘黙症」を知らなかった場合、周囲も当事者も緘黙を知らず、緘黙に関する情報から完全に孤立していることになります。ただ、それでも理解ある同級生や友達に恵まれれば、だいぶ変わるかもしれませんが……。


治療専門家を加えると……


これに治療専門家を加えると、理屈の上では、次の8パターンに分けることができます。各パターンについての細かい話は省きます。

パターン1:治療専門家も教師も親も、緘黙を理解しているパターン
パターン2:治療専門家と教師は緘黙を理解しているが、親は無理解なパターン
パターン3:治療専門家と親は緘黙を理解しているが、教師は無理解なパターン
パターン4:治療専門家は緘黙を理解しているが、教師と親は無理解なパターン

パターン5:教師と親は緘黙を理解しているが、治療専門家が無理解なパターン
パターン6:教師は緘黙を理解しているが、治療専門家と親が無理解なパターン
パターン7:親は緘黙を理解しているが、治療専門家と教師が無理解なパターン
パターン8:治療専門家も教師も親も緘黙を無理解なパターン

2/5宮古島市で200名募集の講演会

2016年12月17日(土)


沖縄県宮古島市で2017年2月5日(日)、「場面緘黙講演会」が開かれるそうです。主催者の「宮古島 緘黙っ子親の会(ゆりの会)」さんが、Twitter やブログで告知されています。募集人員は200名と、規模が大きいです。

場面緘黙講演会
「話したくても話せない子ども・大人へのサポートについて」
~家庭・学校・地域でできる配慮~

日時:2017年2月5日(日) 受付は13:30~、講演は14:00~16:00
場所:宮古島市中央公民館 大ホール
講師:高木潤野氏(長野大学准教授)
対象:当事者、経験者、支援者、保護者など
募集人員:200名
主催:宮古島 緘黙っ子親の会(ゆりの会)

↓ 詳しくは、以下のPDFファイルをご覧ください。申請方法や緘黙経験者が作成したイラスト、お知らせ(末尾)などもあります。TwitDoc.comへのリンク。
◇ 場面緘黙講演会 (新しいウィンドウで開く

[追記(2016年12月18日)]

PDF版ではなく、画像版もあります。下記の公式ブログをご覧ください。

↓ 宮古島 緘黙っ子の親の会(ゆりの会)公式ブログへのリンク。
◇ 啓発活動11 場面緘黙講演会開催のお知らせ (新しいウィンドウで開く


宮古島市で緘黙の講演会といえば、過去にもありました。2013年1月26日に行なわれた「園や学校で話せない子どもたちのために~場面緘黙(かんもく)の理解と支援について」と題するものです。講師は角田圭子氏(臨床心理士、かんもくネット代表)、約230名が集まったそうです。『宮古新報ニュース』が報じており(電子版で確認)、当時の記事は今でも残っています。

↓ 当時の記事。宮古新報ニュースコムへのリンク。
◇ 話さないこと責めないで、場面かん黙に理解求め講演 (新しいウィンドウで開く




場面緘黙症の予防?

2016年12月13日(火)


イギリスの新しい本に書いてあること


10月末に発売された The Selective Mutism Resource Manual の第2版を少しずつ読み進めています。イギリスでは緘黙治療のバイブルとも呼ばれる本(イギリス在住MIKUさん談)の15年ぶりの改訂版です。ただ、なかなか読み進めません……。

本の中にはなるほどと感心して思わず膝を打ちたくなるような箇所もある一方で、専門家ではない私にはいま一つ納得ができず、どう受け止めべきるか保留したくなる箇所もあります。

本の本編に入って間もないところにも、私にとってはちょっと驚くことが書かれてありました(7ページ)。

内気な子があざけりにさらされたり、準備ができる前に発話を強いられたりしたら、緘黙を発症する可能性があることに留意することは重要です。それゆえに、全ての内気な子や話すことを渋る子は、落ち着いて自分たちのペースで参加できるよう支援と安心が必要です。

It is important to note that shy children may develop SM if they are subjected to ridicule or pushed into speaking before they are ready. Therefore all shy children and reluctant speakers need support and reassurance to settle in and participate at their own pace.

↓ 以下、専門家でも何でもない私が素朴に考えたことを書いています。


緘黙になるリスクを持った子への、予防という視点


この一節の背景にあるのは、内気とか話すことを渋るといったことは緘黙の「リスク要因」で、そこにあざけりや準備前の発話が「引き金」になって緘黙を発症することもあるという考え方なのでしょう。

実際、この本は、緘黙の原因について、次の3要因に分けて解説しています。

○ リスク要因(Risk factors)
○ 誘因、引き金(Triggers)
○ 維持要因(Maintaining factors)

この本はまた、次のように言い換えてもいます。

○ 脆弱性がある子ども(The vulnerable child)
○ 生活上の出来事(Life events)
○ 維持要因(Maintaining factors)

この一節には緘黙のいわば予防という、これまであまり語られてこなかった視点があり、考えさせられます。これまで語られてきたのは、既に緘黙になった人(今のところ、主に子ども)に対してどのような支援が行えるかということが中心でした。それはこの本で言うところの維持要因に主に働きかける方法でした。ところが、上の一節は緘黙のリスク要因に注目し、脆弱性がある子どもが緘黙になるのをいわば予防するといった話です。


全ての内気な子に予防?それとも、SASという尺度で高得点の子に予防?


ただ、全ての内気な子や話すことを渋る子に、緘黙になることもあるからという理由を持ち出してその子に応じた支援が必要というのは、ちょっと行き過ぎのようにも私には思えます。緘黙はともかく、普通の内気であればよくあることでしょうし、そこまで心配することもないのではないかと、今のところ私は思います。親に過剰な不安を煽るようなことにもなりかねません。それとも、何か根拠があるのでしょうか。

実は緘黙の予防について述べた論考は日本に過去にあって、そこでは予防措置を講じるべき内気な子どもについて、もう少し緻密に論じられています(藤田、浜田、2014)。その論考では、保育園や幼稚園、小学校に入る前に「社会的不安尺度(SAS)」というもので子どもの不安・恐怖を測定し、結果が高い子どもに対して、園・学校に協力を仰いで、事前に新しい環境に慣れさせる準備をしておくという方法が提案されています。ここでは、緘黙発症の引き金として入園と入学が重視されていて、今回のイギリスの本とは違いもあります。

このSASについてもう少し詳しく触れると、これは藤田、浜田両氏が作成したものです。18の質問項目に対して6段階で評価するのですが、そのほとんどの質問項目について「6非常によく当てはまる」に○がついた場合には、先ほどお話したような事前の準備を提案しています。

ですが、なぜこの質問項目でほとんど「6非常によく当てはまる」が当てはまった場合に準備が必要なのか、「5かなり当てはまる」がほとんどの場合は本当に準備は必要ないのか、この尺度の妥当性は、といったところはよく分かりません。この論考の紙幅の関係か、そのあたりの詳細については書かれてありません。


結び


それにしても、緘黙の予防という視点は興味深いです。可能かどうかは分かりませんが、緘黙になるのを未然に防ぐことができれば、それに越したことはありません。予防のためにも、緘黙のリスク要因についてさらに研究が進み、より正確なところが明らかになるとよいです。

なお、緘黙のリスク要因には様々なものが考えられています。今回のイギリスの本にしても、リスク要因に言葉の問題や自閉症スペクトラムなども含めています。また、緘黙の原因論も専門家によって多少異なります。「リスク要因」「誘因」「維持要因」というかたちで説明されないこともあります。







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2015年12月3日再設置。

近々の予定

◇ ラジオ番組「若倉純 かんもくの歌声」第3回

日時:2月26日(日)23:00~23:15
ゲスト:manana さん
⇒ FM世田谷ホームページなどで聴けます

『校庭東風』上映情報

長野県、千葉県での上映決定。広島県ではイオンシネマでの上映決定。詳細は公式ページへ。 ※ 『校庭に東風吹いて』は、場面緘黙症の架空の少女が登場する映画です。

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■ ココロのひろば
「場面緘黙」とネットで検索してもほとんど何もヒットしなかった頃に開設されたサイトです。長く更新停止しています。

■ 「話すことがむずかしいあなたへ」
自分を変えたい、話せるようになりたい--こうした緘黙の当事者向けに、そのための具体的な方法を示したマンガです。はやしみこさん作。

■ 場面緘黙症 - メンタルヘルスブログ村
多数の緘黙のブログが登録されています。

■ 緘黙の話
昔緘黙児だった主婦の方が、高校で克服するまでの想い出を綴られています。

■ 場面緘黙について考える-備忘録-
英国在住の元緘黙児の母親によるブログです。緘黙だった息子さんのこと、英国の支援、日々の暮らしの中での想いなどが綴られています。

■ 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
不安に関する心理学、脳科学的知見から緘黙症を考えています。

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