場面緘黙症の有名人 

−エジソンも不登校だった−

昔、ある不登校関連の読み物を読んでいたら、こういう内容の論評を見つけて、驚いたことがあります。エジソンはまた、アインシュタインとともに、発達障害だった可能性のある有名人として知られているようです。

また、ノーベル経済学賞を受賞したナッシュが、統合失調症だったという話を聞いた時もやはり驚いたものです。

ところが、場面緘黙症では、あまりこうした有名人の話は聞いたことがありません。Wikipedia 英語版の "Selective mutism" の項目には、場面緘黙症の有名人が何人か載っていますが、エジソン、アインシュタイン、ナッシュ級の知名度のある人はいないのでしょうか。

そんな有名人、知ったところでどうするんだという方もいらっしゃるかもしれません。ですが、あの人も場面緘黙症だったんだ!と知ると、この症状を経験したのは自分たちだけではなかったのだと心が軽くなります。さらに、その人が社会的に成功を収めていると、励みにもなります。

それにしても、場面緘黙症の有名人の話を聞かないのは、なぜなのでしょうか。実際にそういう人が少ないからでしょうか。

いや、もしかすると、そういう人は実際にいたにもかかわらず、何らかの理由で伝わっていないのかもしれません。例えば、場面緘黙症に関心のある人が少なく、そういうことを知っている人や調べようとする人が少ないとか。あるいは、幼少期に場面緘黙症を経験した人でも、幼少期の一時期に人前で無口になったことなど大した問題ではなかったと考えて、誰にも伝えていない人が多いとか。それとも、思い出したくない過去の歴史として、当人が封印してしまったとか。

私は、場面緘黙症を経験した有名人が今後明らかにされることがあるとしたら、芸術・文化方面に比較的多くなるのではないかと推測しています。場面緘黙症の人は、他者とうまくコミュニケーションがとれない反面、内的世界は豊かな人が多いと思うのです。いや、なんとなくそう思うだけですが。

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[2008/02/02 07:42] 緘黙症について | TB(0) | CM(0)

場面緘黙症の「続発症」 

場面緘黙症の後遺症…という言葉は、以前からネットでよく見かけます。

緘黙が治って見知らぬ場面でも多少話せるようにはなったけれども、まだ流暢には話せないし、緊張しやすい、というのであれば、それは「後遺症」と表現するのが合っているように思います。

ですが、新たに統合失調症になったとか、うつ病になったとか、そういう場合は、「後遺症」というよりはむしろ、「続発症」と捉えた方が適切ではないかと最近考えるようになりました。

この「続発症」という言葉、あまり耳馴染みがない方もいらっしゃるかもしれませんが(私も)、医学の世界では使われることがあるようです。

場面緘黙症関連の文献の中では、成人期への影響を考察した大村豊氏の論文 (大村, 2006) に、この言葉が出てきます(私は、それをヒントに今回の記事を書いたのでした)。

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場面緘黙症の続発症のお話でしたが、これとは逆に、何らかの障害や病気を持つ人が、続発症として場面緘黙症を発症するというケースはあるのでしょうか?このあたりは私にはちょっと分かりません。

最近では、「二次障害」という言葉を用い、やはり「後遺症」と分けていらっしゃる方もいらっしゃいますね。

[関連ページ]

◇ 後遺症は?場面緘黙症Journal 緘黙基礎知識

[文献]

◇ 大村豊 (2006). 選択緘黙−成人期への影響. 精神科治療学, 21(3), 249-256.

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[2008/01/08 12:16] 緘黙症について | TB(0) | CM(0)

場面緘黙症の研究 2007 

Mut zum Sprechen finden. Therapeutische Wege mit selektiv mutistischen Kindern2007年の国内外の場面緘黙症研究を振り返ります。場面緘黙症研究の最前線をお伝えします。

← 画像は、今年刊行されたドイツの場面緘黙症の本(後述)。

なお、論文・書籍の表記法については「論文・書籍の表記法」(場面緘黙症Journal論文情報)を参照。

■ 論文編

2007年に発表された場面緘黙症の論文ですが、私はせいぜい abstract(要約)程度しか読んでいません(一般人の私が新しい論文を読むのは難しい…)。しかも、私は専門家でもなんでもありません。ですので、書くことが出来る内容は限られてくるのですが、書ける範囲で書いてみます。

◇ 海外の研究

英文雑誌に掲載されたものから一部を取り上げ、コメントを加えます。

Chavira, D.A., Shipon-Blum, E., Hitchcock, C., Cohan, S., Stein, M.B. (2007). Selective mutism and social anxiety disorder: all in the family? Journal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatry, 46(11), 1464-1472.

アメリカの研究です。場面緘黙症児ではなく、その親の研究です。場面緘黙症児の親は、全般性社会恐怖症、回避性人格障害に当てはまる人の割合が一般の親に比べて有意に多いことが分かりました。また、神経症的傾向がある親が多いほか、NEO Personality Inventory という心理尺度(心理検査?12/27加筆)において Openness の点数が低いという結果も出ています。

場面緘黙症児の親が過去に何らかの精神疾患にかかっていたかどうかを調査する試みは、これまでにも行われてきました。しかし、それらは、あくまで子どもの調査をメインにしたもので、親のみに焦点を当てた研究はありませんでした。その点、本論文は珍しいです。

場面緘黙症と家族というと、日本では伝統的に親の養育態度が発症に関係があるのではないかという議論になるのですが、欧米では違います。恐怖症、不安障害との関係を問題にしている点が欧米の研究の特徴です。続きを読む
[2007/12/26 15:51] 緘黙症について | TB(0) | CM(0)

場面緘黙症とは何か(第4版) 

■ 緘黙症って何?

緘黙症(mutism)とは、話す能力があるにもかかわらず、特定の場面で継続的に発語ができない情緒障害です。症状が重篤化すると、話すことができないだけでなく、思うように動くこともできなくなります。

緘黙症は、主に幼稚園児や小学校低学年の児童が発症します。読み方は「かんもくしょう」です。統合失調症やヒステリー失声とは違います。また、発達障害とも通常分けて考えます。

まだまだ研究が進んでおらず、分からないことが多い情緒障害です。

■ 緘黙症の分類

緘黙症は、話すことができない場面をもとに、場面緘黙症(selective mutism)と全緘黙症(total mutism)に分類することができます。

◇ 場面緘黙症

学校など、特定の場面で話すことができません。しかし、家では何の問題もなく話すことができます。特に、幼稚園や小学校への入学をきっかけに問題化します。緘黙症の多くが、この症状だと言われています。

このサイトでは、この場面緘黙症をメインに扱います。なお、「選択性緘黙」「選択的緘黙」「選択緘黙」とも呼ばれています。

◇ 全緘黙症

重度の緘黙症で、あらゆる場面で話すことができません。非常に稀なケースです。

■ 場面緘黙症児の特徴

◇ いつも極端に緊張している

場面緘黙症児の多くは、学校などの特定の場面では、過度に緊張しています。社会不安障害の診断基準に当てはまるという研究結果も(Kristensen, 2000; Dummit et al., 1997; Black and Uhde, 1995)これを裏付けていると見ていいでしょう。

◇ 笑わない

「笑わない」というよりむしろ、「笑えない」と言った方が正確かもしれません。極度の緊張で、話すことだけでなく笑うことすらできなくなります。

◇ 首を使ったコミュニケーション

話せないので、首を使って意思表示をすることがあります。

◇ 自分に自信がない

場面緘黙症児は自分に自信がない傾向があると言われています。この傾向は社会不安障害の人とも重なります。

◇ 不登校はしない

場面緘黙症児は学校に出てくることが多いと昔から指摘されています(河井, 1994; 相場, 1989)。

しかし、近年専門家からは、緘黙症児は登校拒否になる可能性が高いという指摘も出ています(山本, 2005)。ネット上では、不登校の緘黙症児や経験者、その保護者を見かけることがあります。不登校は時代によって変わっており、近年でもかつて指摘されたように緘黙症児が不登校をしないとは限りません。

この問題については、統計的な調査が行われておらず、どの程度の割合の緘黙症児が不登校かは分かりません。続きを読む
[2007/11/28 12:44] 緘黙症について | TB(0) | CM(0)