十亀史郎『自閉症児・緘黙児』 

本今回の話題は、十亀史郎著、『講座情緒障害児3 自閉症児・緘黙児』、黎明書房、1973年 です。

30年以上前の古い本ですが、「緘黙」という言葉を冠した数少ない本の一つで、名前だけなら聞いたことがあるという方もいらっしゃるかもしれません。私の近辺の自治体図書館には、場面緘黙症については唯一この本のみを所蔵しているところもあります。

ただ、場面緘黙症について学びたいのであれば、もっと新しい本を読んだほうがよいのではないかと私は思います。

■ 内容

この本は209ページあり、そのうち158〜209ページが「緘黙症」の内容です。緘黙症について触れたものとしてはページ数はなかなか多いですが、1ページあたりの文字数は少し少なめです。それ以外のページは主に「自閉症」の内容ですが、ここではそれについては書きません。

「緘黙症」については、6つの節で論じられており、その内容は、研究史、緘黙症の分類、学校拒否(恐怖)症候、選択緘黙の分類、治療、おわりに、です。緘黙症の概念の整理や形成要因、心理機制の論述にやや紙幅が割かれていますが、これは、この時代に力を入れて研究されていた分野でもあります。

この本を監修した内山喜久雄氏は、1959〜1960年にかけて、場面緘黙症に関する重要な論文を残しています(「内山喜久雄の緘黙症研究」参照)。

■ 考察

著者の十亀氏は、学校緘黙を「学校拒否(恐怖)症候」という独自の枠の中でとらえたり、選択緘黙の独特の分類を行ったりしています。とても野心的でユニークですが、このため、かえって場面緘黙症について初めて読む本としてはおすすめできません。特に、場面緘黙症の原因に親や祖父母の養育態度を挙げる学説を支持できない方には、そうです。

場面緘黙症に強い関心を持つ方で、最近の場面緘黙症に関する本もだいたい読んだ、さらに昔の先行研究にも目を通しておきたいという方であれば、読んでみてもよいとは思います。

◇ 海外の研究動向なんて、そんなの関係ない?

最後に、方法論のことで一つ。十亀氏は、冒頭で諸外国の緘黙症の研究史を紹介しながらも、次のように述べています。

しかしながら、諸外国での緘黙症に関する研究については学校恐怖症と同じく、特にその社会の文化的背景の相違が症状形成に関連を有すると考えざるをえない以上、一応の参考として評価するにとめておきたい。

こうして、この後は諸外国の研究動向については触れず、日本に限った緘黙症の論述が進みます。続きを読む
[2008/05/13 20:19] 緘黙症の本 | TB(0) | CM(0)

『場面緘黙Q&A』 

本3月に発売された本『場面緘黙Q&A』が、私の手元にも届きました。

この本に関して、感想というかたちで書きたいことが山ほどあるのですが、提灯記事のようになるのは嫌なので、控えておきます。

ここでは、一つ裏話をします。

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この本には、場面緘黙症Journal から引用された内容が何箇所か含まれています。

引用については、本の制作過程で、本を編集されていた方から事前にご連絡をいただきました。当初は、「私のサイトから引用なんてやめてくれ!恥ずかしい! (>_<) 」と考え、お断りしようと思いました。

ですが、よくよく考えてみると、インターネットの場とはいえ、公開したものを引用されるのを断るのはおかしな話かもしれないと考え、了承したのでした。引用は無断でされても少なくとも法律上は文句は言えませんし、引用されるのが嫌なら最初から自分が書いたものをネット上に公開しなければよいのです。

それにしても、本の中に文章を採用された方、みなさん文才でいらっしゃる。私も英語の勉強もいいですが、日本語力をもっと鍛えなければ、と感じました。

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[2008/04/05 20:40] 緘黙症の本 | TB(0) | CM(4)

緘黙の子の写真ドキュメント『りかちゃんがわらった』 

本ずいぶん前に、ある方から、場面緘黙症の子どもの写真ドキュメントがあるという情報をいただきました。

かつて小学校教諭だった鹿島和夫氏が書いた『ひびきあうこどもたち〈1〉りかちゃんがわらった』という本です。

その本を今日、図書館で読んできました。感想を書きたいと思います。

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この本では、小学校1年の「学校緘黙児」、りかちゃんの場面緘黙症が治るまでが書かれています。

しかし、遊戯療法や行動療法に通じた専門家が話の中で登場するわけではありません。また、『場面緘黙Q&A』や『場面緘黙児への支援』のような本を熟読し、スモールステップで場面緘黙症を治そうとするお母さんが出てくるわけでもありません。

りかちゃんの場面緘黙症を治したのは、りかちゃんのクラスメイトたちでした。学校で話をしない、牛乳も飲もうとしないりかちゃんが、みんなと同じように学校でのびのびと過ごせるようになるにはどうすればよいか話し合い、りかちゃんに色々と手助けをしたのです。そうした経過の中で、りかちゃんの場面緘黙症が少しずつ治っていったのでした。

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小学校は勉強の場です。国語、算数、生活などの教科の勉強はもちろんですが、学校生活の経験一つ一つが勉強でもあります。場面緘黙症の子との出会いと関わりも、児童たちにとっては一つの勉強なのだと考えさせられました。こうしたことを考えさせられたのは、この本が児童精神医学や教育心理学の専門家ではなく、教育者の視点から書かれたものだったからでしょう。

クラスメイトたちがりかちゃんの問題を自分たちで考え、りかちゃんを手助けし、場面緘黙症を治したのは、一つの美談と言えます。

ただ、場面緘黙症はやはり、クラスの子どもたちに考えさせるだけではなく、教師や保護者が関わったり、専門家に相談したり、治療を受けさせたりするのが望ましいのではないかと思います。子どもたちに考えさせるとしても、それを見守る教師が場面緘黙症について正しい知識を持っていることが大前提でしょう。物語では書かれていませんが、おそらくりかちゃんの担任の先生(著者)も、陰で場面緘黙症のことを勉強していたでしょうし、もしかしたら専門家に何らかの相談をしていたのかもしれません。

なお、この写真ドキュメントは、小学生向けで、子どもでも読むことができます。子どもに読んで聞かせるのもよいと思います。

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[2008/03/20 21:02] 緘黙症の本 | TB(0) | CM(0)

緘黙の新しい本が出ます 

本場面緘黙症Journal掲示板での交流がきっかけで生まれた「かんもくネット(Knet)」が本を出します。

タイトルは『場面緘黙Q&A −幼稚園や学校でおしゃべりできない子どもたち−』。2008年春出版予定です(もうすぐですね)。

かんもくネットはこれまで、英米の緘黙支援団体の資料を翻訳したものや、オリジナルの資料をネット上で公開してきました。今回はいよいよ本です。

この本の特徴は、ウェブ上掲示板やメール交換による情報交換をもとに制作されたことです。ネット上で緘黙の情報を収集されてきた方がご覧になれば、きっと驚かれることだろうと思います。

本の詳しい内容については、以下をご覧下さい(Knet News からの転載です。改行位置は調整してあります。転載には許可をいただきました)。個人的には、「緘黙経験者や保護者らによって書かれた110個のコラム」を読んでみたいです。

かんもくネットの本が出ます!

2008年春、かんもくネットの本が出版される予定です。

かんもくネット著 角田圭子編
『場面緘黙Q&A −幼稚園や学校でおしゃべりできない子どもたち−』学苑社

この本は、かんもくネット会員やかんもくネットに協力くださった方々によって書かれたものです。Knet資料から得た情報、主に海外の文献、そして保護者・教師・緘黙経験者・心理士が行なった情報交換を、Knet代表角田圭子(臨床心理士)が編集し、まとめました。

以下の3章からなっており、72個のQ&Aと17個の実践、緘黙経験者や保護者らによって書かれた110個のコラムで、構成される予定です。保護者と教師のための「場面緘黙」についての基本的な情報が、掲載されています。

第1章 理解
   1 「場面緘黙」とは?
   2 原因
   3 早期発見・早期対応の重要性

第2章 対応
   1 子どもの状態を理解する
   2 適切な環境を整える
       2-A 保護者のみなさんへ
       2-B 先生方へ 
   3 その子に有効なアプローチを検討する。

第3章 実践 −スモールステップの取り組み−

海外で場面緘黙の研究が進んでいるのに対し、日本では最新の情報が乏しく、緘黙児への対応や支援方法が書かれた書籍がほとんどありませんでした。かんもくネットは、2006年春より、場面緘黙症Journal(SMJ)http://smjournal.com/で、米国と英国の場面緘黙支援団体のhandouts配付資料を翻訳、また独自に資料を作成し、Knet資料として公開し始めました。

あれから1年半、多くの保護者の方がKnet資料をもとに実践を積んできました。「ねばり強く、柔軟に、そして気長に」場面緘黙の取り組みは長期戦です。様々な難しさに会いながらも、ウェブ上で励まし合い、ステップを確実に上ってきた子どもさんが何人もおられます。

緘黙の治療には、幼稚園(保育園)や学校の支援は不可欠です。しかし、残念ながら、日本の学校現場で「場面緘黙」はあまり知られていません。保護者の方が、Knet資料を持って学校や幼稚園に行っても、先生方に「場面緘黙」を理解していただくことは、なかなか簡単にはいきませんでした。

本書によって、ひとりでも多くの方に「場面緘黙」を知っていただきたく思います。

この2008年、日本における緘黙児への支援方法が広まり、進展していく道がどうか大きく開けますように。

★ この記事を読まれた方は、本について、ブログで話題にしたり、お知り合いの方にお伝えいただけると幸いです。

[2008/01/10 17:12] 緘黙症の本 | TB(0) | CM(4)