場面緘黙症の併存疾患(特に発達障害/遅滞)

更新日:-0001年11月30日(投稿日:2007年11月14日)
このブログでは、場面緘黙症の論文について紹介しています。私は専門家ではなく、自信もないのですが、自分自身の勉強も兼ねて。

今回の論文はこれです。

Kristensen, H. (2000). Selective mutism and comorbidity with developmental disorder/delay, anxiety disorder, and elimination disorder. Journal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatry, 39(2), 249-256.

■ 概要

例によって、場面緘黙症児の標本調査です。特に、併存疾患(発達障害/遅滞、不安障害、排泄障害等)の調査に重点が置かれています。

診断基準には米国精神医学会のDSM-IV(精神疾患の診断・統計マニュアル第4版)が採用されていますが、場面緘黙症と発達障害/遅滞との関連を調べるため、場面緘黙症については変更された診断基準が用いられています。具体的に言えば、コミュニケーション障害やアスペルガー障害はDSM-IVは場面緘黙症には含めないのですが、この研究では含めています。

54人の緘黙症児と108人の対照群を調べた結果、発達障害/遅滞[注]が緘黙症児に68.5%(対照群に13.0%)、何らかの不安障害が緘黙症児に74.1%(対照群に7.4%)、排泄障害が緘黙症児に31.5%(対照群に9.3%)認められました。他にも、様々な併存疾患等が調べられています。

これらの結果から、著者は、場面緘黙症は独立した障害というよりはむしろ、様々な潜在的な脆弱性を反映した、不安の一つの症状であると結論付けています。生物学的には、緘黙症児は神経発達の未成熟さのために「日常的なトラウマ」に弱く、そのため新しい場面に対して不安や引っ込み思案というかたちで反応してしまうのではないかと考察されています。

■ 考察

気づいたことを色々書きます。





場面緘黙症の心理アセスメントと治療の実務指針

更新日:-0001年11月30日(投稿日:2007年11月07日)
このブログでは、場面緘黙症の論文について紹介しています。私は専門家ではなく、自信もないのですが、自分自身の勉強も兼ねて。

今回の論文はこれです。

Dow, S.P., Sonies, B.C., Scheib, D., Moss, S.E., and Leonard, H.L. (1995). Practical guidelines for the assessment and treatment of selective mutism. Journal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatry, 34(7), 836-46.

■ 概要

場面緘黙症の心理アセスメントと治療のための実務指針の作成を試みたものです。したがって、臨床家向けと言っていいと思います。実務指針ですので、論文とはいささか違うかもしれません。

■ 考察

◇ 場面緘黙症と不安について

今回の論文は、場面緘黙症は小児期の不安障害であるという、比較的最近欧米で広まっている仮説を踏まえたものです。

欧米の緘黙症研究と日本の研究の大きな違いの一つは、ここにあります。日本では伝統的に親の養育態度が緘黙症の原因として強調されることが多いのですが、不安障害という見方は欧米に比べると広まってはいません。

ただ、日本でも、近年、場面緘黙症と不安障害の関わりについて触れる専門家も増えてきています。『場面緘黙児の心理と指導』の河井芳文氏が研究されていた頃に比べて、日本の専門家の緘黙症に対する理解は変わってきているようです(さすがに、20年ほど経っていますから)。

◇ 心理アセスメントについて

場面緘黙症児の心理アセスメントのための親面接、子どもとの面接、心理検査の実務的な方法について詳しくまとめられています。

ときどき、場面緘黙症Journal掲示板で、私は場面緘黙症なのでしょうか、どうすれば治るのでしょうかというご質問をいただくのですが、こうした掲示板で行うやりとりに比べれば、臨床家は実に緻密にアセスメントを行うことが分かります。場面緘黙症Journal掲示板では別に専門家が掲示板に常駐しているわけではなく、こうしたアセスメントは期待できません(どなたも期待されていないでしょうが…)。ただ、当事者の方に、「どう思われますか?」と軽く質問をしてみる、ということはできます。

◇ 治療法について

今回の論文では、場面緘黙症児に用いられる様々な治療法について検討されています。





こころの病気を知る事典

更新日:2017年11月12日(投稿日:2007年11月05日)
Amazon.co.jp で「緘黙」と和書検索していたところ、『こころの病気を知る事典』という本がヒットしました。以前はヒットしなかったのにおかしいな、と思ったところ、2007年11月30日発売とのことでした。

事典には場面緘黙症のことも載るようです。ただ、推測ですが、おそらく場面緘黙症は数ページ程度の内容に留まるのではないかと思います。

ですが、何かのついでがあれば、書店でこの本を探して、場面緘黙症についてどう書かれているか念のため確かめてみたいと思います。何か特別変わったことが書かれてあったとか、ずいぶんとページ数が割かれてあったとかいうことであれば、場面緘黙症Journal の書籍コーナーに加えたいと思います。

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場面緘黙症について触れた書籍は、和書だけでも数多くあります。Amazon.co.jp で「緘黙」と検索すると、いくつか書籍がヒットしますが、これらはほんの一部にすぎません。

場面緘黙症Journal の書籍コーナーでもかなり取り上げていますが、これも全てを網羅しているわけではありません。特に、医学事典の類で、場面緘黙症のことが書かれてあったけれども、わずか数ページの内容だったという場合は、今のところは基本的に載せない方針です。

[後日談(12/24/2007)]

『こころの病気を知る事典』読みました。緘黙について書いてある箇所は1ページもありませんでした。内容も特に珍しいことが書かれているわけではありませんし、特に探して読むほどのものではないだろうと思います。



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