日本には緘黙症の個人ブログが多い

2008年04月24日(木曜日)

日本には、緘黙症(特に場面緘黙症)をテーマにした個人ブログがとても多いです。goo のブログ検索で「緘黙」と検索すると、80件近いブログがヒットします(スコア0以上のブログ。ただし、この中にはリンク切れのブログも含まれています)。

しかし、こうした傾向は世界中で見られるものではありません。私がよくチェックしている英語圏では、緘黙症をテーマにしたブログは5件ぐらいしか知りません。

Technorati 社の2006年?の調査では、全世界のブログのうち、日本語ブログは37%、英語ブログは36%を占めており、両者は同じぐらいであることが分かります。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0704/06/news057.html
しかし、緘黙症をテーマにした個人ブログの数となると、文字通り桁違いの差があるわけです。

なお、日本語圏、英語圏に次いでブログが多い中国語圏では、少なくとも私の知る限り、緘黙症をテーマにした個人ブログは1件もありません。場面緘黙症児への支援が比較的充実したドイツ語圏でも、同様です。

■ 日本ではどうしてこんなに多いのか

どうして日本では、これほど個人の緘黙症ブログが盛んなのか、はっきりとした理由は私には分かりません。いや、日本に住んでいる私としてはむしろ、どうして海外ではこうしたブログが流行らないのか、そちらの方が不思議です。

日本のネット界では、個人が緘黙症のサイトを開設し、情報を発信するという文化が古くからありました。[1] 私はもしかしたらそのことが関係しているのではないかと見ています。

■ 個人ブログは掘り下げて書くことができる

緘黙症をテーマにしたブログは、そのブログ管理者が、緘黙症について掘り下げて書くことができます。掲示板と違って、一人の緘黙症関係者が、緘黙症について延々と自分のことを書き連ねても、誰からも文句を言われることはありません。[2]

こうしたブログを自由に読み書きできる文化が日本にはあることは、緘黙症に関心のある方にとっては嬉しいことではないかと思います。

■ 日本の緘黙ブログ文化を英語圏に輸出

私が英語ブログを始めたのも、こうした日本の文化を海外に輸出するのが狙いの一つでした。その後、私のブログの影響かどうかは分かりませんが、場面緘黙症をテーマにしたブログが英語圏で増えてきました。先にお話した5件ほどある英語圏の緘黙症ブログは、いずれも私が英語ブログを始めた後に開設されたものです。

うーん、もしかしたら、英語圏では私がパイオニア?でも、英語圏ではまだまだ少ないですから、パイオニアというほどでもありませんね。(>_<)


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[注]

[1] 私が最初にインターネットで場面緘黙症を知ったのは、2001年の終わり頃でしたが、少なくともその頃からそうでした。
[2] 場面緘黙症Journal 掲示板では、こうした投稿について管理者として咎めたことはありません。


「緘黙の子の気持ち、知って」

2008年04月19日(土曜日)

特別支援教育はじめのいっぽ!―個別の支援が今すぐ始められる (教育ジャーナル選書)『教育ジャーナル』という、教師を対象にした(?)雑誌があるのですが、その2008年1月号に「『場面緘黙症』の子どもの気持ちを知ってください」という特集が7ページにわたって掲載されました。

著者は小学校教諭で、実際に場面緘黙症の子どもたちと接した経験がある井上賞子氏です。『特別支援教育はじめのいっぽ!』の著者のお一人でもあります。

学校の先生方にとって、場面緘黙症の子どもたちの気持ちはなかなか分からないものです。「拒否されている」「嫌われている」と誤解したり、反応が返ってこないので手がかりが得られず、「この子はどう思っているのか?何を求めているのか?」と自問し、苦しい思いをしたりすることもあるでしょう。そんな先生方に、場面緘黙症の子どもの気持ちを知ってもらおう、ということのようです。

7ページのうち、4ページは、井上氏が作った「担任の先生へ」という資料で、ここには緘黙の子どもたちの様々な「言えない思い」が詰まっています。

* * * * * * * * * *

思い返してみれば、私も場面緘黙症(自己診断ですが)だった頃、多くの先生方や親切なクラスメイトたちに支えられました。私は「ありがとう」の一言も言えない無反応な子どもだったのですが、そんな私を、みんなが支えてくれのだと思うと、頭が下がります。

資料「担任の先生へ」の中には、「私は先生が大好きなんです」「先生が大好きということ」といったフレーズがありますが、私の気持ちも、まったくその通りでした。ただし、場面緘黙症の自分に対して無理解な対応を取った先生については、この限りではありませんでした。無理解な対応をとられて、「先生なんて、嫌い!」と感じるのも、一つの場面緘黙症の子どもの気持ちではないかと思います。

私が大好きだったのは担任の先生だけでなく、親切に接してくれたクラスメイトも同様でした。本当にお世話になった元クラスメイトの中には、「あの時言えなかった『ありがとう』という言葉を、いつか伝えたい」とまで思っているのですが、今となっては、ある意味会えやしません。(>_<)

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~蛇足~

プロフィールを更新しましたが、ハンドルネームを「富重」から「富重洋(とみしげ・ひろし)」に変えました。ある方からのすすめもあったのですが、下の名前があった方が便利だと思ったからです。皆様は、これまで通り「富重」と呼んでくだされば結構です。

なお、「富重洋」は、あくまでハンドルネームです。私の本名は「ジェローム・チャールズ・ホワイト・ジュニア」です。[注]

[注] 嘘です。


トリイ・ヘイデンの緘黙症分類

2008年04月15日(火曜日)

『檻のなかの子』などの著作で知られる Hayden, T.L.(トリイ・ヘイデン)氏は、ノンフィクションだけでなく学術論文も残しているのですが、その中には場面緘黙症に関するものもあります。

特に著名なものは、これです。

Hayden, T.L. (1980). Classification of elective mutism. Journal of the American Academy of Child Psychiatry, 19, 118-133.

今回は、この論文について取り上げます。私は専門家ではないのですが、自分自身の勉強も兼ねて。なぜこの論文かというと、英語圏においてはよく引用されてきたからです。

■ 概要

場面緘黙症児68人を調べ、場面緘黙症を四つに分類しています。

■ 考察

この論文が世に出たのは、1980年のことです。当時は統計的分析が可能なほど多くのサンプル(場面緘黙症児)を集めた場面緘黙症の研究が英語圏ではありませんでした。そうした時代に、著者は独自の経歴を生かして68人を集めて、分析を試みたのです。

これは当時としては画期的なことでした。英語圏における被引用回数の多さは、この論文の評価を物語っています(2000年以降になっても、よく引用されています)。ただし、厳しい評価も寄せられています。