子どもが緘黙→母、仕事を辞める

2009年02月24日(火曜日)

子どもが緘黙であることが分かったとき、保護者(特に母親)の子育ての負担はどれほど増えるのでしょうか。

私にはよく分かりません。私には緘黙の子の子育ての経験はありませんし、私が学校で緘黙していた頃の保護者(親)は、そもそも問題を認識せず、私に特別なことは何もしなかったからです。

最近は、『場面緘黙児への支援』をもとに子どもの緘黙を治そうという動きもあるようですが、これは見るからに保護者の負担が重そうです。

今月4日、Back Stage というアメリカの芸能関係の業界誌?に、"Family Matters" という記事が掲載されたのですが、そこに場面緘黙症の子を持つ母親の話も出ていました。その母親は、子どもの治療に専念するため、仕事をいったん辞めたのだそうです(父親は仕事を続けています)。この緘黙の子は強迫性障害やうつまで合併していたため、このことが子どもの面倒を見る上でより大きな負担となったのではないかと思います。

記事では触れられていませんでしたが、仕事を辞めると、何よりも経済的な面で打撃になるはずです。これは生活に大きく響きます。また、仕事を通じた自己実現等もかなわなくなります(子どもが緘黙だと、そんなこと言ってられなくなりそうです)。

仕事を辞めるとまではいかなくても、緘黙の子を手助けしようとすれば、保護者は何かを諦めざるを得なくなるでしょう。緘黙の子の面倒を見るため、余裕のない生活を送っている保護者像が私には頭に浮かびます。

もちろん、精神的な面でも負担が非常に大きいだろうということは、言うまでもありません。

実際の緘黙の子の保護者は、私が思うとおりの生活を送っているのか、それとももっと元気に生きているのか、それは私には分かりませんが、いずれにせよ、緘黙の子を持つ保護者の負担について、改めて考えさせられました。


効果的な治療法の研究に、11億ドル(米)

2009年02月19日(木曜日)

アメリカのオバマ大統領が17日、7,870億ドル(約73兆円)の景気対策法案に署名し、同法案が成立したというニュースは日本でも報道されました。

実はその7,870億ドルのうち、11億ドル(約1,060億円)は、病気の様々な治療法のうち、どれが効果的か、費用対効果が高いかの研究に配分されています。

この事実は、おそらく日本のメディアはほとんど報じていないのではないかと思うのですが(他国の細かいニュースですから)、アメリカのメディアは報じています。

Google ニュース検索 "comparative effectiveness research"
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The New Yort Times の記事 "U.S. to Compare Medical Treatments"
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場面緘黙症の治療法を例に解説しましょう。場面緘黙症の治療法には、遊戯療法、箱庭療法、行動療法、認知療法、薬物療法ほか様々な治療法がありますが、このうちどれが最も効果があるか、費用対効果が高いかを研究するということです。もっともこれはたとえ話で、11億ドルの予算が、実際に場面緘黙症の治療法の研究にも回されるかどうかは私には分かりません。

リンク先の一つに挙げたNYTの記事は、このような予算が組まれた背景の一つに、アメリカで膨張するヘルスケア支出の問題を挙げています。今より効果的な治療法や費用対効果の高い治療法がとられるようになると、ヘルスケア支出が抑制できるのではないかということです。

病気や症状の治療には、公的支出が関係している場合が多いです。効果の薄い治療法、費用対効果の悪い治療法を続けることは、その病気の治療を望む患者にとって好ましくないだけでなく、公的支出が過剰に膨らむという問題もあるわけです。

※ 私がこの点をつい強調してしまうのは、大学の専攻が経済学だったからだと思います。希少な資源(人的資源なども含む、広い意味での資源)を効率的に配分するにはどうするべきか、これは経済学の重要なテーマです。

場面緘黙症についても、どの治療法が効果的か、費用対効果が高いかがより明らかにされ、その情報が、専門家のみならず、当事者やその保護者の間でも共有されようになることを願っています。そうなれば、治療を望む緘黙の子やその保護者がより救われるようになるのはもちろん、人、物、お金、etc.も、もっと有効に活用されるようになるでしょう。


緘黙児の言語能力、視覚記憶、社会不安

2009年02月14日(土曜日)

このブログでは、ときどき場面緘黙症の論文を取り上げています。私は専門家ではないのですが、自分自身の勉強も兼ねて。

今回の論文はこれです。少し難しい内容です。

Manassis, K., Tannock, R., Garland, E.J., Minde, K., McInnes, A., Clark, S. (2007). The sounds of silence: language, cognition, and anxiety in selective mutism. Journal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatry, 46(9), 1187-1195.

■ 概要

場面緘黙症児の言語能力、非言語的作業記憶(非言語的ワーキングメモリ)、社会不安の程度を調べ、不安障害のある子とそうでない子らと比較しています。

その結果、言語能力、視覚記憶、ともに、場面緘黙症児は他の子どもたちよりも、検査結果の点数が低いことが分かりました(要するに、言語能力、視覚記憶、ともに悪い)。また、社会不安がより強いことが分かりました。その他、様々なことが明らかになっています。

これらの結果と先行研究をもとに、場面緘黙症の病因等について考察が行われています。

■ 概要の補足

◇ 言語能力について

ここで言う「言語能力」は、話す能力のことではありません。以下の能力のことです。

● 受容語彙:受容語彙とは、その言葉を読んだり聞いたりしたときに理解できる語彙のこと。一方、話したり書いたりするときに使える語彙のことを能動語彙と言います。この研究では、検査をする人が何か言葉を話して、その言葉に合った絵を4つの中から選ばせて、受容語彙を検査しています(The Peabody Picture Vocabulary Test-III)。
● 音素の認識:ある言語音を他のものと区別できるか、また、話されたパターンの中で音声の数、順序を理解、比較できるか検査しています(The Lindamood Auditory Conceptualization Test)。
● 文法:4つの絵のうちどれが、話した文を最もよく表しているか選ばせるという検査をしています(The Test of Reception of Grammar)。

◇ 視覚記憶とは

視覚記憶については、以下の Google ブック検索のページに、分かりやすい解説があります。

視覚記憶とは(『図説 LD児の言語・コミュニケーション障害の理解と指導』より)
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■ 所感

私なりに気づいたこと考えたことをまとめます。