「すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成されるよう努めなければならない」

2009年08月25日(火曜日)

児童福祉法が掲げる崇高な理念は、一見の価値があります。

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児童福祉法

第1条 すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成されるよう努めなければならない。

 2 すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない。
 
第2条 国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う。
 
第3条 前2条に規定するところは、児童の福祉を保障するための原理であり、この原理は、すべて児童に関する法令の施行にあたつて、常に尊重されなければならない。

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※ 児童福祉法で言う児童は、「満18歳に満たない者」のこと(同法第4条)。

戦後の新憲法に基づいた理念です。この法律が制定された終戦当時、わが国の子どもたちが置かれた状況はとてもひどかったそうです。

児童相談所や情緒障害児短期治療施設も、上の理念に基づいて、児童福祉法で定められています。

私は上の条文を読んだとき、なんという高い理念なんだと驚かされたのですが、考えてみれば当たり前のことのようにも思えます。

場面緘黙症の児童で、支援が必要なのに、それが行われない者がもしいたら、それは児童福祉法の理念からしてもおかしいのではないでしょうか。わざわざ法律を持ち出すまでもない話かもしれませんが。

なお、児童については、「児童の最善の利益(子どもの最善の利益)」という表現を用いた「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」という重要な条約もあります。


『自信をもてないあなたへ―自分でできる認知行動療法』

2009年08月18日(火曜日)

本優彩さんのブログ「場面カンモク完全克服への道!」(新しいウィンドウで開く)で話題になっていた『自信をもてないあなたへ―自分でできる認知行動療法』という本に興味を持ち、私も買って読んでみました。

場面緘黙症の本は何冊も出ていますが、自力で緘黙を克服したい当事者に向けた本は1冊もなく、私は歯がゆい思いをしていました。それだけに、この本には強い関心を持ちました。この本は緘黙の本ではありませんが、不安障害等の克服に効果を発揮している認知行動療法の本で、緘黙とも多少つながりはあると思います(実際、緘黙の治療に認知行動療法が試みられた事例はあります)。

本によると、イギリスのレディング大学ピーター・クーパー教授らが、さまざまな障害を自力で乗り越えるための Overcoming シリーズを刊行、この『自信をもてないあなたへ』(オックスフォード大学メラニー・フェネル教授著、イギリスにおける認知行動療法の第一人者)もその一つだそうですが、それならば、場面緘黙症を自力で乗り越える Overcoming Selective Mutism も刊行して欲しいところです。

※ この Overcoming シリーズは、現在も Constable & Robinson Publishing から刊行されています。Overcoming School AnxietyOvercoming Your Child's Shyness and Social AnxietyOvercoming Anxiety など豊富な品揃えです。

一通り読んでみたのですが、この本、ただ読むだけでは不十分です。この本に書かれてある方法を実践しなければ、認知行動療法としての効果は出ません。

この本で示されている方法を実践するには、自己評価の低さを絶対に克服するんだ、それを阻む自分の考えには負けないんだという強い意志と、実践を続ける根気強さが必要ではないかと思います。ただ、私はまだ実践していない段階なので、あまり大きなことは言えません。

自力で緘黙やその後遺症を克服したい人には、助けになる本かもしれないと思います。ただし、この本がそれらの克服にどの程度役立つかは、私には確かなことは言えません。


場面緘黙症の薬物療法の展望

2009年08月11日(火曜日)

このブログでは、ときどき場面緘黙症の論文を取り上げています。私は専門家ではないのですが、自分自身の勉強も兼ねて。

今回の論文はこれです。

Kaakeh, Y., & Stumpf, J.L. (2008). Treatment of selective mutism: focus on selective serotonin reuptake inhibitors. Pharmacotherapy, 28(2), 838-844.

■ 概要

場面緘黙症児への治療法のうち、特に薬物療法に焦点を当て、先行研究を総覧し、展望をまとめたものです。

■ 所感

場面緘黙症の治療法に関する先行研究を概観し、展望を示すこの種の論文(「レビュー論文」「展望論文」というのでしょうか)として、以前このブログでは Cohan ら(2006)を取り上げました。しかし、これは行動療法や認知行動療法など心理療法に焦点を当てたもので、薬物療法については言及がありませんでした。今回の論文は、薬物療法の先行研究をまとめたもので、ちょうど Cohan ら(2006)と併せて読めば、場面緘黙症の治療法(心理療法・薬物療法)について一通り概観できます。

場面緘黙症への薬物療法は、実際のところ、単独で行われるものでは必ずしも無くて、心理療法と併用したり、あるいは心理療法がうまくいかなかったときなどに試みられたりします。今回の研究では、単に薬物療法のみならず、そのあたりのところにも言及されている点が良いと思います。

場面緘黙症への薬物療法の導入はアメリカで盛んだそうですが、今回の研究も、アメリカの大学に所属されている方が著したものです。特に Fluoxetine(フルオキセチン)を用いた治療法に関する考察が多くの紙幅を占めていますが、この Fluoxetine とは「Prozac(プロザック)」という商品名で販売されている薬で、日本では未認可だったはずです。このため、日本の方でこの論文に関心のある方は、その点注意して読む必要があろうかと思います。論文の著者によると、場面緘黙症に対する薬物療法で最もよく研究されているのが、この日本未認可の Fluoxetine だそうで、日本に住んでいる私としては、はがゆさも感じます。

日本の学術文献で、緘黙症児に薬物療法を試みた例の報告は、なかなか見かけません。