米国音声言語聴覚学会の年次総会で、緘黙が

2009年11月25日(水曜日)

ASHA(American Speech-Language-Hearing Association;米国音声言語聴覚学会)という学会がアメリカにあります。

その年次総会が、今月19-21日にかけて行われたのですが、その中で場面緘黙症も取り上げられたそうです。

次の4つです。関連資料へのリンクも貼っておきますが、内容は全て英語で書かれています。






行動療法の効果を比較した、イギリスの研究

2009年11月24日(火曜日)

このブログでは、ときどき場面緘黙症の論文を取り上げています。私は専門家ではないのですが、自分自身の勉強も兼ねて。

今回の論文はこれです。

Sluckin, A., Foreman, N., and Herbert, M. (1991). Behavioural treatment programs and selectivity of speaking at follow-up in a sample of 25 selective mutes. Australian Psychologist, 26(2), 132-137.

■ 概要

イギリスの研究です。過去に、場面緘黙症児に行動療法を施した例(11例)と、標準的な治療プログラムを施した例(14例)の予後調査を行っています。調査の結果、行動療法が標準的治療プログラムよりも治療効果が高い等、様々なことが分かっています。

■ 所感・所見

◇ 著者の一人は、あのアリス・スルーキン氏

この研究は、『場面緘黙へのアプローチ』の本に何度も登場します(46ページなど)。また、この研究の著者の一人は、イギリスの緘黙支援団体 SMIRA の代表・Alice Sluckin (アリス・スルーキン)氏で、この方も『アプローチ』の本やDVDに出てきます。

◇ 行動療法を他の治療法と比較

今回の研究の注目すべき点は、単に行動療法を行っただけでなく、行動療法を施した多数の症例を集め、それを他の治療法と比較した点ではないかと思います。もちろんこの比較については、統計学的な処理が行われ、厳密に検討されています。

場面緘黙症の子に何らかの治療法(例えば○×療法としましょう)を試みたところ、治った!という報告はよく見ます。しかし、少し厳密なことを言うと、それだけで、○×療法が場面緘黙症の治療に効果があったと考えるのは、早計です。もしかしたらその子が声が出るようになったのは、○×療法とは別の原因があったのかもしれません。例えば、実はその子は自然に治っただけで、○×療法は全く効果がなかった、という可能性だって考えられます。また、○×療法とは別の治療法を行えば、もしかしたらもっと治療効果が高かった、ということだってあり得ます。

そうした意味で、多数の症例を集めて治療法を比較した今回の研究には、意義が大きいだろうと思います。ただ、今回の研究では行動療法の方が効果が高いという結果が出ましたが、方法にいくつか問題がありますし、一般に場面緘黙症に行動療法が効果的かどうかは、他の文献ともあわせて検討しなければならないのではないかと思います。






「心因性緘黙症児のための心理治療仮説」

2009年11月17日(火曜日)

このブログでは、時々緘黙症の論文を取り上げています。私は専門家ではないのですが、自分自身の勉強も兼ねて。

今回は、これです。比較的よく引用されているので取り上げます。

畠瀬直子 (1978). 心因性緘黙症児のための心理治療仮説. 児童精神医学とその近接領域, 19(4), 227-245.

■ 概要

遊戯療法により完治をみた場面緘黙症児の事例を示し、場面緘黙症の心理治療仮説を導いた論文です。

■ 所感・所見

場面緘黙症の事例研究は日本でも数多いのですが、今回の研究は、その中でもよく引用されています。調べたところ、場面緘黙症の治療仮説がある、として引用されていることがままあり、そのことが被引用回数の多さにつながっています。

心理治療仮説は、心理治療、特に遊戯療法を行う上での仮説で、私には分からない技術的な問題がいくつか含まれています。このため、この仮説についてコメントするのは控えます。

しかし、今回の論文には、ほかにも気になった点がいくつかあるので、それについてコメントします。

○ 緘黙症が「完治」

まず、この論文では、緘黙症児が遊戯療法により「完治」したという表現が用いられています。たしかに治療室内では緘黙症状が完全に消えましたが、治療室外ではどうだったのか、セラピストがいない場面ではどうだったのか、この論文を読むだけでは十分に読み取れませんでした。改善したらしいことは読み取れるのですが、どの程度の改善だったかが、もう一つよく分かりません。4年後の追跡調査では、学校では緘黙症状は消えていたものの、内気な子どもに一般的にみられる程度の問題はあったことが少し気にかかります。

たとえ治療室内で声が出るようになっても、それが治療室を出た後も続くかどうかは、一つの問題です。行動療法では、学校を舞台に少しずつ発話を促そうという試みがなされることがありますが、これにはそうした問題がないというメリットがあると、どこかで読んだ覚えがあります。学校内が言ってみれば治療室なわけで、学校で声が出ればそのまま問題解決ということになるからです。