緘黙の子が主人公の短編小説(重松清)

2010年07月27日(火曜日)

青い鳥 (新潮文庫)以前このブログでも取り上げた、重松清の『青い鳥』が文庫になりました。安価で手に入るようになったので、私もようやく買って読んでみました。

同書収録の「ハンカチ」と題する短編小説は、緘黙の女子中学生を主人公とした内容です(11-56ページ)。「場面緘黙症」という言葉も、はっきりと出てきます。

読んだ感想ですが、緘黙の子の心理がよく描写されていると感じました。緘黙の子がどういったことを考えているのか、それはその子によって違うでしょうが、この本で書かれていることとだいたい同じようなことは、みな多かれ少なかれ感じたことがあるのではないかと思います。

卒業式を題材にしている点も、著者はよく勉強していると感心させられます。確かに、卒業式で声を出せるかどうか不安に感じる緘黙の子の話は聞くことがあります。

主人公が学校を冷めた目で見ているのは悲しいですが、とても共感できます。また、緘黙の生徒と吃音の教師という組み合わせは面白いです。

ただ、不満もありました。まず、主人公の緘黙の発症ですが、このようなことで緘黙になる子はあまりいないのではないかと思います。また、主人公が声を出す場面も、果たして緘黙の子がこのように声を出せるだろうかという疑問が残らないまでもありません。物語としてはこれで面白いかもしれませんが……。

このように、場面緘黙症の理解という点で不満もあるのですが、主人公の心理がよく描写されていて面白かったです。この本はよく売れているらしく、そうした本の冒頭で緘黙の話が出ているのも嬉しいところです。

「ハンカチ」を含め、『青い鳥』収録の短編はどれも重い話が多いですが、いずれも思春期に孤独な思いをしている思春期の子どもに焦点を当てた作品で、私は気に入っています。

表題作の『青い鳥』は、2008年に映画化されました(阿部寛主演)。著者の重松清は直木賞作家。


昔の緘黙サイト

2010年07月20日(火曜日)

場面緘黙症を初めて取り上げた日本のウェブサイトはどこか、私には分かりません。ただ、「ココロのひろば」さんは、緘黙関係サイトの中でも草分けだろうと思います。

私が初めて緘黙関係のサイトを見て回ったのは、2002年頃です(1~2年、ずれがあるかも……)。当時はまだ、場面緘黙症専用さんも、かんもくの会さんも、かんもくネットさんも、なかった時代です。ですが、この頃には、ココロのひろばさんを含め、緘黙に関係する個人サイトが既にいくつか存在していました。当事者が運営するサイトもあれば、緘黙の子を持つ母親が運営するサイトもありました。ただ、当時はブログがなく、個人がウェブサイトを運営するのには今より敷居がやや高かったはずです。

だいたい多くのウェブサイトには掲示板が設置されていて、同じような悩みを抱えた人たちが交流をしていたと思います。私も、緘黙関係サイトの掲示板に何度か書き込みをしたことがあります(ただし、現在のハンドルネームとは違う名前でです)。この頃のネットの交流は、掲示板やメールが主流でした。

これらのサイトの多くは、ココロのひろば管理人さんによる、「緘黙の輪」というウェブリングに登録していました。

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あれからおよそ10年、緘黙関係のサイトも大きく変わりました。

比較的簡単に運営できるブログの登場により、個人ブログが増え、中にはブログ形態に移行する緘黙関係ウェブサイトも現れました。また、ブログのコメント欄や SNS、Twitter といった新技術?により、ネットでの交流が多用化しました。

また、緘黙に関心のある一部の人たちが支援団体を結成し、これが緘黙関係サイトの中で大きな位置を占めるようになりました。

最後に一つ思うのが、今の場面緘黙症Journal は、私より先に緘黙をインターネットで取り上げたサイトの数々がなければ、存在しなかっただろうことです。先輩たちには感謝です。


5歳児健診と緘黙の早期発見

2010年07月13日(火曜日)

私は知らなかったのですが、「5歳児健診」が全国のいくつかの自治体で行われているそうです。特に鳥取県は、5歳児健診を全国に先駆けて行ったことで知られています。

5歳児健診は、1歳6か月児健診や3歳児健診とは異なり、母子保健法にもとづいて市町村に義務付けられているものではありません。

[母子健康法(抜粋)]

第十二条  市町村は、次に掲げる者に対し、厚生労働省令の定めるところにより、健康診査を行わなければならない。
一  満一歳六か月を超え満二歳に達しない幼児
二  満三歳を超え満四歳に達しない幼児

5歳児健診は、特に発達障害の早期発見という問題意識からその必要性が論じられることが多いです。小枝達也氏らによると、

「学習障害(LD)、注意欠陥/多動性障害(ADHD)、高機能自閉症やアスペルガー症候群を包含する高機能広汎性発達障害(HFPDD)、軽度精神遅滞といったいわゆる軽度発達障害は、集団生活を経験する幼児期以降になってはじめて、その臨床的特徴が顕在化してくる。そのため、3歳児健診を最終とする現行の乳幼児健診システムの中では充分に対応できていない可能性がある。これは現行の乳幼児健診の質が不充分というよりも、年齢的に見えていないのだと思われる」

とあります。実際のところ、5歳児健診で発見された軽度発達障害児のうち半数以上は、3歳児健診では発達上の問題を指摘されていなかったそうです(小枝ら, 2007)。



ところで、場面緘黙症は、保育園や幼稚園、小学校といった新しい集団生活に入ったときに問題化することが多いです。この点では、「集団生活を経験する幼児期以降になってはじめて、その臨床的特徴が顕在化してくる」という軽度発達障害と共通するところがあります。