アクセスの多い記事「インクルーシブ教育」

2010年08月30日(月曜日)

この場面緘黙症Journal ブログには、検索エンジンからアクセスされる方も多いです。

そこで問題です。このブログ(PC版)の検索エンジン経由のアクセスのうち、何のキーワードでのアクセスが最も多いでしょうか?場面緘黙症のブログですから、「場面緘黙症」「緘黙」でしょうか。それとも別のキーワードでしょうか?







正解は、「インクルーシブ教育」です。

アクセス解析「忍者ツール」によると、過去4ヶ月のこのブログ来訪者の検索キーワードのうち、最も多い7.8%が「インクルーシブ教育」です。特に Google で検索して来られる方が目立ちます。ちなみに、2番目に多いキーワードは「インクルーシブ教育とは」で、7.3%。3位が「場面緘黙症」ですが、3.1%にすぎません(悲しい……)。

私は2008年5月29日に「インクルーシブ教育」と題する記事を書いたのですが、この記事にアクセスが集中しています。

上記インクルーシブ教育に関する記事には、ここのところブログ拍手もたくさんいただいています。2010年8月29日現在では、過去30日にいただいた拍手のうち、最も拍手数が多い記事の一つが「インクルーシブ教育」でした(7拍手)。2年以上の前の記事がこれだけ拍手をいただくのは、極めて異例のことです。他にも、「[緘黙] 大学に行って4年間緘黙が治るまで待つ [ストーリー]」にも同数の拍手をいただいているのですが、これは最近になって公開した記事です。

どうしてこのようなことが起きているのでしょうか。おそらく、インクルーシブ教育に関心を持った方がたくさんいらして、インターネットで検索されるのですが、ネット上にはインクルーシブ教育について触れたウェブサイトが他に少ないからでしょう。


録音した自分の声を聞く

2010年08月24日(火曜日)

このブログでは、ときどき場面緘黙症の論文を取り上げています。私は専門家ではないのですが、自分自身の勉強も兼ねて。

今回はこれです。学術雑誌の "Letter to the editor" 欄に投稿されたものです。

C.H.Y. Kee, D.S.S. Fung, and L.K. Ang (2001). An electronic communication device for selective mutism. Journal of American Academy of Child and Adolescent Psychiatry, 40(4), 389.

■ 概要

6歳の場面緘黙症の少年に3年間様々なアプローチによる介入を試み、さらに、9歳時にボイスコミュニケーターと呼ばれる電子通信機器を用いることによって、発話できる範囲を広げることに成功した事例です。シンガポールの研究。

■ 所感・所見

◇ 録音・再生機器ボイスコミュニケーター

ボイスコミュニケーターという機器を使って発話を促した点が、今回の研究のポイントです。今日では比較的知られた方法ですが、この研究が載るまでは、こうした緘黙症児介入の事例は学術雑誌の類には報告されていなかったようです。

このボイスコミュニケーターは、"Yes" "No" "Thank you" "Goodbye" といった短いメッセージを録音できるとともに、録音した音声を再生できるものです。再生した自分の声を、徐々に慣れない場所で再生して聞くようにします。

私はこれを読んで、イギリスで緘黙の子の支援に用いられている「トーキング・レイ」「トーキング・トイ(talking toys)」を思い出しました。これはオウムのぬいぐるみのような形をした録音・再生機器これは録音・再生機能のあるぬいぐるみで、『場面緘黙へのアプローチ』『場面緘黙Q&A』でも紹介されています。こうした機器を活用する狙いは、家庭など子どもが安心できる場所で録音した話し声を、学校など不安を感じる場所で再生することにより、自分が自分の声を聞くのみならず、多くの人に声を聞いてもらうことです。ただ、今回の研究では、ほとんど自分の声を聞くことのみ重点が当てられています。このあたり、どういうことなのか、私にはまだよく分かりません。

ただ、もし私が緘黙だったときに(自己診断ですが)、自分の録音した声をいきなり教室で再生などされようものなら、とても耐えられなかったことだろうと思います。再生するなら、今回の研究のように短い言葉を少しずつしてもらえると安心できたでしょうが、治療効果としてはどちらが高いのかは私には分かりません。

◇ 3年かかった

今回の研究では、特にボイスコミュニケーターを使ってから緘黙状態が大きく改善されたようですが、ここまで到達するのに3年かかっています。緘黙の子の支援には根気強さが要求される場合もあると、改めて感じました。

◇ シンガポールの研究

今回はシンガポールの研究でしたが、少なくとも英語圏の学術雑誌で、シンガポールの緘黙研究を見かけるのは珍しいです。今回の研究を読む限りでは、シンガポールだからといって何か緘黙の対応で特別なことがあるといった印象はありません。

シンガポールについては、オンライン上でも以前より場面緘黙症のコミュニティがあり、今回の研究の著者のお一人 Daniel Fung 氏が、緘黙サイトを運営されたりもしています。

[追記]

トーキング・トイについて、訂正しました。失礼致しました。ご指摘ありがとうございました。(2010年8月26日)


場面緘黙症は発達障害か

2010年08月17日(火曜日)

場面緘黙症が発達障害かどうかについて、どうも理解に違いがあるようです。

とりあえず私の理解を書くと、場面緘黙症は医療分野では発達障害とはみなされていません。ですが、2005年に施行された発達障害者支援法では、場面緘黙症も発達障害という扱いになっています。ここが理解の違いの原因になっているのではないかと思います。

* * * * * * * * * *

このあたりについては、鳥取大学の小枝達也教授がまとめた小論「発達障害と乳幼児健診」に、興味深いことが書かれてあります(小枝, 2008)。

小枝教授は、発達障害者支援法で規定している発達障害は、「医療分野で一般的に発達障害と称している疾患とは範囲が異なっている」として注意を喚起しています。

さらに小枝氏は、「医療分野で対象とする発達障害と発達障害者支援法の対象範囲の主な相違点」と題する以下の表を示しています。表中、「選択的緘黙症」は場面緘黙症のことです。

表 医療分野で対象とする発達障害と発達障害者支援法の対象範囲の主な相違点
医療分野で対象とする発達障害と発達障害者支援法の対象範囲の主な相違点
資料:小枝達也(2008). 発達障害と乳幼児健診. 母子保健情報, 58, 83. Retrieved from http://www.aiiku.or.jp/aiiku/jigyo/contents/kaisetsu/ks0903/ks0903_3.pdf

このように、場面緘黙症は、医療の世界では一般に発達障害とはみなされないのですが、発達障害者支援法は、これも発達障害として扱っています。

以前、「緘黙は、発達障害者支援法の対象だった」の中で書きましたが、同法は、どうやら制度の谷間を生まないよう発達障害の定義をかなり広めにとったものとみられます。従来の定義からすると少し変わった定義のようにも思えますが、現実に発達障害者支援法に基づく支援が行われている中、この定義は軽視できません。

なお、英語圏の文献等では、場面緘黙症を発達障害とする見解はほとんど(全く?)見た覚えがありません。国際的に見ると、発達障害者支援法は日本のローカルな法律で、発達障害の定義に場面緘黙症を含める定義は、少し特殊なのかもしれません。

最後に一つ付け加えると、場面緘黙症の子どもの中には、発達障害を併せ持った子が少なくないのではという指摘が、近年日本の専門家の間からなされています。

とりあえず、以上が私の理解です。

[文献]

◇ 小枝達也(2008)発達障害と乳幼児健診. 母子保健情報, 58, 82-85. Retrieved from http://www.aiiku.or.jp/aiiku/jigyo/contents/kaisetsu/ks0903/ks0903_3.pdf