場面緘黙症の新三分類

2010年09月28日(火曜日)

このブログでは、ときどき場面緘黙症の論文を取り上げています。私は専門家ではないのですが、自分自身の勉強も兼ねて。

今回の論文はこれです。

Cohan, S.L., Chavira, D.A., Shipon-Blum, E., Hitchcock, C., Roesch, S.C., Stein, M.B. (2008). Refining the classification of children with selective mutism: a latent profile analysis. Journal of clinical child and adolescent psychology, 37(4), 770-784. doi: 10.1080/15374410802359759.

■ 概要

アメリカの研究です。場面緘黙症児130人を様々な側面から評価し、その上で、緘黙症児を分類しています。 anxious-mildly oppositional group(不安-軽度反抗群)、anxious-communication delayed group(不安-コミュニケーション遅滞群)、exclusively anxious group(排他的不安群;問題行動やコミュニケーション遅滞はなく、社会不安のみの群) の三分類です。また、評価結果から、緘黙について考察を行っています。

■ 所感・所見

分類については、その方法が技術的で私には難解でした。潜在プロフィール分析というものにより計量的な方法で分類を行ったことはなんとか分かったのですが。

研究のために集めた場面緘黙症児130人という人数は、不十分なものの、この種の研究としては最大規模であり、特筆すべきです。これは、アメリカに場面緘黙症の支援団体があることが大きいです。この団体が、緘黙の子を持つ多くの保護者に研究への協力を呼びかけたのです。研究の対象となる緘黙症児を集めるのに支援団体の協力を得たという例は、海外ではほかにもあります(日本ではこうした例があるのかどうか知りません)。支援団体が緘黙の研究の一助になり得ることを示しています。

また、場面緘黙症児の反抗的とされる行動についても、新たな科学的根拠を提供し、よく考察しています。

今回の研究で示された三分類自体はまだ一般的でなく、引用されることも少ないのですが、場面緘黙症児130人の評価結果は引用されます。その結果の中には、これまでの調査結果とは相容れないものも含まれています。場面緘黙症にはまだ研究者の間でも見解の一致が見られない論点があり、研究は続きます。


緘黙女子が登場する小説『二人静』

2010年09月21日(火曜日)

二人静Twitter では、以前より場面緘黙症の女子が登場する小説が出版されると話題になっていました。その小説が先日発売されたので、Amazon.co.jp を通じて買って、読んでみました。

盛田隆二氏による『二人静』という461ページからなる作品です。主要登場人物の一人に、緘黙の女子小学生が登場します。作品の中ではっきりと「場面緘黙症」の文字が、さらには本の帯にも「場面かん黙症」の文字が出てきます。書店でこの帯の本が置かれ、多くの人に買われる様を想像すると、これは緘黙の認知度向上につながるだろうと思えます。

※ この小説について、場面緘黙症Journal では、「場面緘黙症の女子の小説だそうです」とご紹介していましたが、誤解を招く表現でした。失礼致しました。

読んだ感想ですが、著者は場面緘黙症のことをよく勉強していると感じました。例えば、作中に登場する緘黙の子の母親も、おとなしくて控えめな性格だと指導主事が指摘する場面がありますが、確かに緘黙の子にはそうした親が多いという研究結果があります。フィクションに緘黙の子が出るときは、果たして緘黙の子がこのような言動をするだろうかと素人から見てもいささか首をかしげざるをえない描写を見かけることが残念ながらあるのですが、この本では、(素人の)私の目から見てそのようなことはありませんでした。ただ、携帯電話によるコミュニケーションの話は、あり得るようなあり得ないような、勉強不足の私には分からない箇所でした。

私は文芸作品はあまり読まず、一つの文芸作品としてのまともな論評はできないのですが、この本にはぐいぐい引きこまれ、時間を忘れて一気に読むことができました。面白かったという素朴な感想です。この前ご紹介した重松清氏の「ハンカチ」(『青い鳥』収録)とは違い、大人向けの作品。


19年前、緘黙女子がいじめで集団暴行を受け…

2010年09月14日(火曜日)

1991年(平成3年)11月、大阪府豊中市の中学校で、女子生徒がいじめにより集団暴行を受け、死亡するという痛ましい事件が起こりました。

もう19年も前の事件ですが、かすかに覚えているような気がします。当時の私の地元の新聞は、大阪とは遠く離れた地方にもかかわらず、事件を大きく取り上げていました(19年前の新聞縮刷版で確認しました)。また、国会(第122回国会参議院厚生委員会)でも話題になっていることから、全国的に報道されたのではないかと思います。Wikipedia にも記載があります。

Wikipedia の事件についての項目
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この亡くなった女子生徒ですが、実は場面緘黙症と知的障害があったそうです。豊中市議会平成4年3月定例会会議録によると、堀田文一市議は市議会の中で次のように発言しています。

「昨年12月の市議会全員協議会でも、私どもの岡議員から指摘しましたが、いじめで亡くなられた※さんが、知恵おくれと場面緘黙という障害があったにもかかわらず、ちゃんとした教育がなされていなかったという、深刻な問題点がありました」

※は亡くなった生徒の名前ですが、ここでは伏せます。

亡くなった生徒は、私と世代が比較的近いです。しかも、場面緘黙症だった人です。そのような人がこうした事件に巻き込まれ、残念でなりません。このようなことはもう二度と起きないことを願います。

[参考にしたもの]

◇ 武田さち子(2005). あなたは子どもの心と命を守れますか!―いじめ白書「自殺・殺人・傷害121人の心の叫び!―, WAVE出版.