『児童心理』2011年3月号

2011年02月23日(水曜日)

児童心理 2011年 03月号 [雑誌]金子書房の月刊誌『児童心理』今月号(2011年3月号)に、緘黙を主題とした記事が掲載されています。

「学校でうまくいかない子の人間関係 学校で話せない子--場面緘黙の子が抱える困難」という記事です(56-62ページ)。著者は、かんもくネット代表の角田圭子氏。短いページ数ですが、さすがに専門家とあって密度の濃い内容だと感じました。

今回の小論の特徴の一つとして、広汎性発達障害(PDD, Pervasive Developmental Disorder)との鑑別という、最近の国内での緘黙研究で取り上げられている問題について、ある程度紙幅が割かれていることが挙げられます。こうした新しい話題提供があるため、過去に同誌で緘黙の記事を読んだという人でも、新たに得るところのある内容になっています。場面緘黙症というと、英語圏の研究が進んでいるからということで、海外の文献やその翻訳版にばかりつい手にとってしまいたくもなりますが、国内の事情に即した研究もやはり重要で、双方の研究に熟知した著者の見解は興味深いです。

今回の記事の掲載は、とても意義深いと私は考えています。それは第一に、場面緘黙症はその症状ゆえ学校での対応が重要ですが、『児童心理』は、教師の間で読まれているからです。第二に、なにより、国内の緘黙支援団体(それもインターネット発の)による論考が、このような雑誌に掲載されたからです。

金子書房の『児童心理』はやや専門的な内容を含む雑誌ですが、少し大きめの書店であれば、店頭でも置いてあることがあります。通信販売でも買えます。同誌は何十年も前より、頻度こそ高くはないものの、緘黙を取り上げています。

※ 国立情報学研究所が提供するサイト「CiNii」で確認できる、『児童心理』の緘黙の取り扱い状況
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※ 追記。誤字があったので訂正しました。2011年2月23日。


緘黙が、障害者自立支援法の対象に(18歳以上)

2011年02月15日(火曜日)

コメントをいただいて知ったのですが、場面緘黙症を持った人(18歳以上)が障害者自立支援法の対象になります。

2012年4月1日までに施行される改正障害者自立支援法では、同法の対象となる「障害者」の定義が次のように変わります。

[改正前]

第四条
この法律において「障害者」とは、身体障害者福祉法第四条に規定する身体障害者、知的障害者福祉法にいう知的障害者のうち十八歳以上である者及び精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第五条に規定する精神障害者(知的障害者福祉法にいう知的障害者を除く。以下「精神障害者」という。)のうち十八歳以上である者をいう。

[改正後]

第四条
この法律において「障害者」とは、身体障害者福祉法第四条に規定する身体障害者、知的障害者福祉法にいう知的障害者のうち十八歳以上である者及び精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第五条に規定する精神障害者(発達障害者支援法(平成十六年法律第百六十七号)第二条第二項に規定する発達障害者を含み、知的障害者福祉法にいう知的障害者を除く。以下「精神障害者」という。)のうち十八歳以上である者をいう。

※ 太字は改正箇所

改正のポイントである「発達障害者支援法(平成十六年法律第百六十七号)第二条第二項に規定する発達障害者」には、場面緘黙症の人も含まれます(「緘黙は、発達障害者支援法の対象だった」参照)。

場面緘黙症の人は、発達障害者支援法では発達障害者とされ、改正障害者自立支援法では、今度は精神障害者とされます。ただ、あくまでこの法律ではの話です。

そういうわけで、理論上は、場面緘黙症を持った18歳以上の人は、2012年4月1日までに障害者自立支援法の対象になります。


緘黙の絵本『なっちゃんの声』

2011年02月08日(火曜日)

なっちゃんの声ー学校で話せない子どもたちの理解のために緘黙の子を題材にした絵本『なっちゃんの声ー学校で話せない子どもたちの理解のために』が刊行されました。

作者は、元緘黙児の保護者はやしみこ氏です。場面緘黙症に関する団体「かんもくネット」のメンバーでもあります。同氏は、以前より絵本をホームページ上で公開し、反響を呼んでいました。

本書のメインは絵本の部分ですが、それに加えて、ある緘黙当事者の詩や、金原洋治氏の医学解説も盛り込まれています。金原氏は小児科の院長で、近年、緘黙に関する記事を専門雑誌で発表されたり、かんもくネットの講演に講師として参加されたりするなど、緘黙の啓発活動等に積極的に関わっている方です。

本書の絵本部分は、おそらく主に子どもたちに緘黙を理解してもらう目的で描かれたものだろうと思います(本書の副題も「学校で話せない子どもたちの理解のために」です)。それだけに分かりやすく、小学校低学年ぐらいの子どもが理解のために読むにはちょうどよさそうな内容です。子どもがこの本を読んだ感想を聞いてみたいです。なお、医学解説は、大人向けです。

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場面緘黙症を主題とした絵本では、過去に、私が確認したものでも『バンザイ!なかやまくん』があるほか、写真ドキュメントに『ひびきあうこどもたち(1)りかちゃんがわらった』があります。今回は、元緘黙児の保護者が描き、緘黙支援団体が監修として関わっている点が意義深いと思います。

場面緘黙症についての本では、これまで絵本のほかに、専門的な内容のものや、当事者や教師の体験記など様々なものが出てきました。多様な著作物が出て興味深いですが、これからも出版が続いて欲しいものです。そのためにも、本書は売れてほしいところです。ということもあって、今回ブログで取り上げています。