反省記事。緘黙のメディア掲載はゴールではない

2011年04月26日(火曜日)

場面緘黙症がメディアに取り上げられただけで、舞い上がって満足してしまう--

私の悪い癖です。

■ 緘黙のメディア掲載は手段であり、それ自身が目的ではない

目的と手段を取り違えてはいけません。緘黙をメディアに取り上げてもらうのは、あくまで手段にすぎません。緘黙の認知度を上げること、さらにそのことによって、より多くの緘黙の子を救うこと、これこそが目的のはずです。

多少舞い上がるのもよいかもしれません。ですが、満足しきってはいけません。新聞で緘黙のことを知った、緘黙の子への接し方を改めた、支援を始めた、緘黙の子が救われた、こうした事実を確認して、初めて本当に満足するべきです。

※ といっても、別に私がメディアに緘黙を扱ってもらうよう、働きかけているわけではないのですが……。

緘黙が新聞に載るなどしただけで満足してしまうのは、それが分かりやすいからでしょう。特に、国内外の緘黙支援団体が掲載に関わると、ウェブサイトでそのことを紹介したり、場合によっては該当記事へのリンクを張ったり、記事そのものをサイトに転載したりもします。これは分かりやすいので、私などはそれだけで喜んでしまいます。ですが、その記事をきっかけに、緘黙の認知度がどの程度上がったかや、特に、どのぐらいの数の緘黙の子が救われたかは、私にははっきり分からないので忘れてしまいます。

(反省記事、ここまで読んでくださり、ありがとうございました)

■ 目的達成(認知度向上など)の程度を評価する

ところで、メディア掲載という手段により、緘黙の認知度向上などといった目的がどの程度達成できたかを確認する方法は、実はないことはありません。

たとえば、新聞に緘黙が掲載されたのをきっかけに、掲載に関わった支援団体に問い合わせが来ることがあるらしいです。それによって、どの程度の反響があったかを確認できます(私はどの団体のメンバーでもないので、確認しようがないのですが)。

私などは、緘黙が国内の新聞に載ったら、場面緘黙症Journal(SMJ)のアクセス解析を見ます。SMJへの訪問者数(特に、検索エンジン経由での訪問者数)がいつもより明らかに増えていると、きっと新聞を読んで緘黙のことを検索し、このサイトに来てくださる方が増えたんだろう、つまり反響があったのだろうと推測できます。

場面緘黙症の長期的な認知度の推移を知る手がかりの一つとして、私は Google Insights for Search というサイトを利用することがあります。これは「世の中の検索トレンドを徹底分析」する無料サービスです。もし「緘黙」「かんもく」などと検索する人が年々増えていると、それは認知度が上がったことを意味するのかもしれません。それで、実際はどうかと言うと……これを見ると、緘黙が一度や二度新聞に載っても、簡単には舞い上がる気分になれなくなります。

[関連サイト]

◇ Google Insights for Search新しいウィンドウで開く


iPhoneアプリを開発した緘黙少年(米)

2011年04月19日(火曜日)

今月8日、あるアメリカの地方ニュースサイトに、場面緘黙症を主題とした記事が掲載されました。

アメリカでもいまだ認知度が低い場面緘黙症について、読者に分かりやすく解説した記事です。一人の緘黙の子どもを実例として交えながら、専門家による説明や取り組みを紹介している、この種の記事としてはオーソドックスな構成です。今回は、SMART Center の Elisa Shipon-Blum 博士(米緘黙支援団体代表としてもおなじみ)が専門家として登場します。

オーソドックスな構成ながらこの記事がユニークだと感じたのは、記事で紹介された緘黙の少年(14)です。彼は数々の賞を受賞するなどした優秀で多才な中学生です。iPhone アプリまで開発していて、 iPhone ストアで発売中なのだそうです。

たしかに緘黙だと対人コミュニケーションを伴う作業には難がありますが、プログラミングや折り紙(これも彼の得意分野)など、一人でこつこつ作業をするものについては、緘動があるなど症状がひどい場合を別とすれば、まだ才能を発揮しやすいかもしれません。

彼の緘黙症状は少しずつ改善していることに加えて、まだ緘黙を完全に克服できていない今の段階でも、彼は才能を発揮し、周囲から認められています。といっても実際はなかなかこの少年のようにはうまくいかないかもしれませんが、こうした緘黙の人もいるという報道は、異国の話とはいえ、希望を感じさせてくれます。

ただ、彼の緘黙症状の改善には母親や Shipon-Blum 博士がかかわっていますし、iPhone アプリの開発販売は、彼のお兄さんと共同で行っています。周囲の力添えも大事なのかなと思えるのですが、このあたりのところは記事を読むだけでは正確なことはよく分かりません。

できれば、彼が開発した iPhone アプリがどういうものか、名前なども知りたかったと思います。緘黙の人が作ったものなら、買ってみたいです。もっとも、その前に、そもそも私は iPhone を持っていないという大きな問題があるのですが……。

[文献]

◇ Bundy, T. (2011, Apr 08). Finding his voice: Local teen continues to work toward overcoming selective mutism. Intelligencer Journal. Retrieved from http://articles.lancasteronline.com/local/4/373077


『いっしょに遊ぼ、バーモス ブリンカル!』という本に、緘黙少年

2011年04月12日(火曜日)

いっしょに遊ぼ、バーモス ブリンカル! (あかね・新読み物シリーズ)場面緘黙症の小学生が主要人物として登場する本を見つけました。

いっしょに遊ぼ、バーモス ブリンカル!』という本です。作者は山本悦子氏で、あかね書房から2003年(平成15年)に出ています。フィクションのようです。「バーモス ブリンカル」はブラジルの言葉で、「いっしょに遊ぼ」の意味です。対象読者層は、本の内容からして、小学校中学年ぐらいではないかと思います。

下記サイト「『夏の課題図書』読書感想文を書こう!」さんによると、この本は「神奈川県夏のすいせん図書読書感想文コンクール」(神奈川新聞社主催)の平成19年推薦図書に選ばれたそうです。

平成19年 神奈川県 夏のすいせん図書
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物語は、ブラジルからやってきた小学3年生の転校生ジュリアナちゃんと、同級生で「場面性緘黙」の晴也(せいや)君の2人を軸に展開します。

単に海外からの転校で悩んでいる子どもを主題にするのではなく、緘黙の子どもを主題にするのでもなく、2人を絡めて一つのストーリーにした点が独特です。ともに、言葉の問題で困っているという共通点があります。

そういえば、重松清氏の短編「ハンカチ」(『青い鳥』収録)は、吃音の教師と、緘黙の生徒の2人を軸とした話でした。これも、言葉で不自由する、いわばマイノリティの人同士が心を通わせるという展開です。こうした筋立てにはそれぞれ作者の狙いがあり、それは分かるのですが、私としては、言語の壁や吃音と、緘黙とは別の問題なのに、とつい考えてしまいます。

転校先でカルチャーギャップに悩んでいる子や、言葉の問題で困っている子に、手にとってもらいたい本の一つです。タイトルだけでは本の内容は分かりにくいかもしれませんが。