女性コミック誌に「場面緘黙症」

2012年04月23日(月曜日)

講談社の女性コミック誌『Kiss』で連載されている「ガキのためいき」という漫画で、「場面緘黙症」が取り上げられました。2012年04月10日(火)に発売された、4/25号(No.8)です。271-278ページに収録されています。

「ガキのためいき」は、作者である沖田×華(おきたばっか)氏の自伝的ショートコミックです。主人公はアスペルガー障害を持っており、4/25号の段階では小学生です。漫画では、アスペルガー症候群の二次障害として場面緘黙症が扱われています。

今回の話で場面緘黙症を発症し、以後症状が続くのですが、「ガキのためいき」の連載も次号以降も続きます。次回の話以降も学校では無口な様子が描かれるのか、このあたりのところはまだ私には分かりません。

『Kiss』は毎月10日と25日に発売されます。次号は間もなく発売です(なのにご紹介が遅れ、すみません)。バックナンバーは、e-hon や Fujisan.co.jp などの通販サイトでも購入できるようです。注意するべきは、4/10に発売されたのが4/25号で、4/25に発売されるのが5/10号ということです。私はこれを勘違いし、間違った号を買ってしまいました。

なお、私はこの雑誌を通信販売で買いました。私のようなオッサンが、女性コミック誌を店頭で買うのは、さすがに度胸が必要とされたからです(いや、男性が女性漫画を読むのが、悪いというつもりはないのですが……)。私は Fujisan.co.jp という雑誌のオンライン書店で購入したのですが、買った商品が分からないように包装されていて、ほっとしました。

「ガキのためいき」は、4/25号で第31話を迎えました。単行本が既に2巻発売されています。


イスラエルの緘黙専門家が書いた本

2012年04月17日(火曜日)

The Selective Mutism Treatment Guide: Manuals for Parents, Teachers, and Therapists今回は、The Selective Mutism Treatment Guide: Manuals for Parents, Teachers, and Therapists という、場面緘黙症の本を読んだ感想を書きます。

■ 基本情報

本書のタイトルを和訳すると、『場面緘黙症治療ガイド:親、教師、治療専門家へのマニュアル』といったところでしょうか。表紙に書かれてある 'still waters run deep' とはことわざで、「深い川は静かに流れる」などと訳されます。

本書は2011年に出た新しい本です(Amazon には2012年1月との表記あり)。洋書はよく発行地の記載があるのですが、それによると、この本はエルサレム(イスラエル)で発行されたそうです。

著者の Ruth Perednik 氏はイスラエル在住の心理学者で、これまで20年にわたって緘黙の治療を専門にしてきました。現在も Selective Mutism Treatment Center という緘黙治療専門の診療所を運営するなどしています。イスラエルに出生時から在住している方ではないらしく、University College London で学位を取得したことがあり、Wikipedia にはロンドン生まれという記述も見えます。

■ 内容

本書の内容は、緘黙児に介入する方法をまとめたマニュアルです。英米などで主流の行動療法が中心です。幼稚園から小学校までの年少の子どもを主に念頭に置いた本ですが、10代の子に対する支援にも言及があります。

実は、同様の本は他にも刊行されています。英語圏のもので代表的なものは以下の3つでしょう。これらのマニュアルはいずれも本書と同様、行動療法による支援が主軸ですが、それぞれ多少の違いがあります。

○ The Selective Mutism Resource Manual
⇒ イギリス。2001年。専門家向け。

○ Helping Your Child with Selective Mutism
⇒ カナダ。2005年。邦訳書『場面緘黙児への支援』が出ています。保護者向け。

○ Helping Children With Selective Mutism and Their Parents
⇒ イギリスの名門・オックスフォード大学出版局から出ていますが、アメリカの本と言えます。2010年。教師やスクールカウンセラーなど、学校関係者向け。

今回の本の最大の特徴は、行動療法による支援の体系を、親、教師、治療専門家のそれぞれ三者の視点でまとめていることです。構成も(1)親向けマニュアル、(2)教師向けマニュアル、(3)専門家向けマニュアルの三章立てです。類書はこの三者の協調の必要性を意識しながらも、こうした書き方はしていませんでした。例えばカナダの Helping Your Child with ...(邦訳書『場面緘黙児への支援』)だと、'management team'(邦訳書では「支援チーム」)による三者の協調の重要性を指摘しながらも、本としては親の視点からまとめられたものです。よく差別化が行われていると感じます。

反面、本書は類書と比べると、親向けのマニュアルとしては分量が少なく、また、教師向け、専門家マニュアルとしてもページ数が少ないとは言えます。また、各章の内容に一部重複があります。

著者の経験に裏打ちされた手法は具体的かつ実践的で、有用そうなのですが、果たしてこれと同じことをどこまで日本で実行できるだろうかと思います。ですが、カナダの指導書の邦訳書『支援』も、その方法を日本でそのまま実践するのは必ずしも簡単ではないものの、これを参考にするなどというかたちで支援に役立てている方がいらっしゃいます。本書も同様の付き合い方をするのがよいだろうと思います。

本書は類書と同様、手に取りやすいところが一つの魅力です(Resource Manual はそうでもありませんが……)。価格は2,000円台前半で、軽くて手軽に持ち歩くこともできます。英文は洋書としては平易で、日本で言えば高校卒業レベルぐらいではないかと思います。英語に自信がある方は読んでみると面白いかもしれません。


人気大衆紙Daily Mailに緘黙の記事

2012年04月10日(火曜日)

英国の大衆紙 Daily Mail に、場面緘黙症を主題とした記事が掲載されました。4月3日に公開された The children who choose to stay silent: The sad and surprisingly common plight of youngsters with selective mutism という記事です(電子版で確認)。

今回は Daily Mail に載ったという事実にインパクトを感じます。Daily Mail の発行部数は200万部近くあり、英国では2番目の多さです(First official, 2012)。また、ウェブサイトの訪問者も多く、dailymail.co.uk へのトラフィックは英国では全ウェブサイト中第14位、ニュースサイトに限ると BBC Online に次ぐ第2位です(Alexa)。

なお、先月も、やはり英国の大衆紙である Daily Mirror という新聞に、緘黙を主題とした記事が出ました。これについては先日このブログで記事にしたところです。同紙の発行部数は100万部超、mirror.co.uk へのトラフィックは英国では全ウェブサイト中第256位です(情報ソースは上記と同じ)。

■ 記事の内容

問題の記事の内容ですが、実例を交えながら緘黙について解説するという、この種の記事としてはオーソドックスなものです。実名と写真入りで登場する当事者は、先日の Daily Mirror とはまた違う人物です。行動療法でスライディング・インという手法を用いる話や、薬物療法に対する専門家の見解などは英国らしいです。

今回の記事も、緘黙のことを知らない人を対象にした啓発目的のものらしく、基礎事項を知るにはよいですが、反面、緘黙についてかなり積極的に情報収集を行っている人(特に、英国の人)には、さして新しい情報はありません。ですが、最後の方の、緘黙を啓発するテレビ番組に出演した緘黙児の後日談は、あまり聞いたことがない話で興味深いです。緘黙の改善には、やはり環境も大事と考えさせられます。

[文献]

◇ First official figures give The Sun Sunday 3.2m circ. (2012, April 3). Press Gazette. Retrieved from http://www.pressgazette.co.uk/story.asp?sectioncode=1&storycode=48913
◇ Alexa - Top Sites in United Kindom. Retrieved 2012, April 10 from http://www.alexa.com/topsites/countries/GB