緘黙の簡単なRPGを作りました

2015年07月29日(水曜日)

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ロールプレイングゲーム


場面緘黙症を題材にしたマンガ、YouTube 動画、歌、小説……緘黙の経験者や保護者らは、様々な表現で緘黙のことを伝えています。

では、緘黙を題材にしたコンピューターゲームというのはどうでしょう。少なくとも日本では私は見たことがありません。

そこで、試しに作ってみることにしました(柄でもなく……)。緘黙の小学生が主人公の簡単なRPG(ロールプレイングゲーム)です。といっても、私はゲーム作りの初心者で、出来上がったゲームもお恥ずかしいものですが、いちおうパソコンでプレイできます。

↓ ここからダウンロードできます。Yahoo!ボックス へのリンク。
◇ 緘黙RPG(仮) ZIP形式 5.7MB (新しいウィンドウで開く

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[追記(2016年8月10日)]

上はかなり古いバージョンです。新しいバージョンのダウンロードは以下のページでお願い致します。

◇ 緘黙RPG - ダウンロード (新しいウィンドウで開く

また、ダウンロードせずともブラウザ上でプレイすることもできます。詳しくは、こちらをご覧ください。

◇ 緘黙RPGが、ブラウザ上でプレイできます (新しいウィンドウで開く

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動作環境は、ゲーム制作に使用したツール「WOLF RPGエディター」の公式ホームページに書かれてあります。動作OSは Windows2000、XP、Vista、Windows7 (Windows8ではソフトウェアモードで辛うじて)で確認、必要ランタイムは DirectX 9.0以上ですが、WindowsXP SP2以上なら、確実に入っているとのことです。

◇ WOLF RPGエディターのダウンロードページ、動作環境の説明あり (新しいウィンドウで開く

もっとも、緘黙をネタにゲームだなんてという思いもあり、ゲーム作りと公開には悩みました。ですが、ゲームという表現方法の可能性を探ってみようとの思いから、思い切ってこのようにしてみることにしました。ゲームといえば子どもがするものというイメージが私が小学生の頃(大昔)はかなり強かったのですが、最近は年齢層が広がっています。

このゲームについて


舞台は剣と魔法の世界。小学4年生の主人公は家ではお喋りですが、学校では入学以来声が出ず、学校に通うことを辛く思っています。ある日、主人公は、自分が場面緘黙症であることを知ります。スモールステップの取り組みにより、経験値を重ね、少しずつ発話できる場面を増やしていきます。また、主人公は緘黙のイベントに出かけ、緘黙で悩む人は自分だけではないことを実感します。

このゲームは、緘黙の経験者や当事者など、緘黙に関心のある方を対象に、ゲームという表現方法もあることを伝える目的で作ったものです。試作ということで、ストーリーの途中までしか作っていません。プレイ時間は30分以上が目安といったところでしょうか。遊び方が分からないという方がいらっしゃれば申し訳ないです。ご質問があれば、お答えします。

今回のゲームでは、緘黙の理解促進の要素と、娯楽の要素を両方盛り込んでみました。ですが、これでよかったのか、どちらか一方に徹した方がよかったのか、自分でも分かりません。





「場面緘黙(症)」という名称は誰が作り、どう広まったのか

2015年07月23日(木曜日)

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学校など特定の場面で長期にわたって話ができない状態を「緘黙(症)」と呼んだ最古の例は、今のところ私が確認した限り、ジルベール・ロバン著、吉倉範光訳(1940)『異常児』、白水社です(378ページより)。

わたしの同僚がある日、十歳の児童を恐らく緘黙症であらうからと廻してきた。成程、訊いても答へない。幾度か尋ねても、たまに単語を答へる位である。家庭では口をきくし、両親の話によると、可成りに陽気であるらしい。学校でも友達とは口をきく、それもたつた一人の友達とだけである。

古い学術文献を見ると、この「緘黙(症)」という呼び方は、1950年代後半以降に定着しています。

ただ、50年代の文献をよく見ると、この頃は単に「緘黙(症)」とか「小児緘黙症」という名称です。今日馴染みのある「場面緘黙(症)」という名称は見つかりません。

そこで、疑問に思いました。「場面緘黙(症)」という名称は、一体いつ誰によって使われ出し、定着するに至ったのでしょうか。今のところ、緘黙に関する文献でこれについて触れたものは見た覚えがありません。「選択性緘黙」ではなく「場面緘黙」という名称を使おうという主張がある中、この名称の成り立ちを知っておくことは悪いことではないように思います。今回は、その歴史を探ってみたいと思います。

「場面緘黙」確認できた最古は1963年


「場面緘黙」の使用例で、私が確認できた最も古いものは1963年のものでした。2件見つかりましたが、どちらが先かは分かりません。

◇ 佐藤修策、繁永芳己、流王治郎(1963)「児童における行動異常の研究-場面緘黙-」『日本心理学会大会発表論文集 第27回』、382。

◇ 佐藤修策(1963)「場面緘黙の形成と治療」『臨床心理』2(2)、97-104。

どちらも、岡山県中央児童相談所に来談した緘黙児8ケースを考察したものですが、発表媒体が違います。

このうち前者については、なぜ「場面緘黙」という当時としては一般的でなかった名称を採用したかについて説明されておらず、また、採用理由の手がかりらしきものすら見つかりませんでした。

後者の論文についても「場面緘黙」という名称にした理由は書かれてありません。ですが、その理由を窺わせるものは見つかりました。論題「場面緘黙の形成と治療」には英訳があるのですが、それが Formation and Treatment of Situational Mutism というものだったのです。「場面緘黙」に対応するのが "Situational Mutism" です。

また、論文の冒頭には次のような一文を見つけました(97ページ)。

児童期における緘黙のうちもっとも多いのは voluntary silence (2), situational mutism (3)または elective mutism (4) の言葉で呼ばれている心因性の緘黙である。

上の引用文にある (2) (3) (4) という数字は参考文献を示しています。situational mutism の参考文献を示す (3) は「黒丸正四郎 児童の異常心理 異常心理学講座 1958」です。

そこで、この黒丸正四郎の本を調べたところ、「或る特定の状況におかれた時のみ、言葉を発しようとしない situational mutism を示す子がある」(23ページ)云々という記述を確認しましたが、「場面緘黙」の語は見つかりませんでした。situational mutism という用語がこれ以前に日本の文献で使われた例は、私は確認していません。この黒丸正四郎の本の緘黙に関する箇所がいったい何を参考に書かれたものかは読み取れなかったのですが、本全体は、海外文献を参考に書かれています。

以上のことから私なりに推測すると、

(1) 海外で situational mutism という名称があって、それを黒丸正四郎が日本で紹介(1958年)
(2) 岡山県中央児童相談所の佐藤修策が、それを「場面緘黙」と訳した(1963年)

といったところではないかと思います。もっとも、実は私が確認していないだけで、もっと古くから「場面緘黙」という名称が使われた例があったのかもしれません。新史料を発見できたら、また認識を改めることにします。

なお、海外には他にも voluntary silence や elective mutism といった名称もあったのに、なぜ佐藤修策は situational mutism を採用したのかは論文にははっきり書かれておらず、分かりません。





英BBCが、大人の緘黙を正面から取り上げる

2015年07月16日(木曜日)

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英国の公共放送BBC が、大人の緘黙を主題とする記事を公式サイト上に掲載しました。日本時間7月15日(水)午前のことです。

↓ BBC NEWS へのリンクです。
◇ Selective mutism: 'I have a phobia of talking' (新しいウィンドウで開く

ニュース記事は、子どもの頃から緘黙が続く35歳女性の例を軸に、大人の緘黙が見過ごされている現状について問題提起を行っています。

記事には動画がついていて、緘黙の女性がタブレット端末での文字入力を通じて自らの思うところを表現している様子が映されています。この女性の就労への見通しについては currently "off the table"(現在考えていない)と書かれていることなどから、社会適応に困難をきたしていることが読み取れます。ただ、この女性の緘黙症状ですが、祖母が脳卒中になったとき、不安のあまり祖母と話せなくなったなど(それまでは話せた)、少し変わったところもあるかもしれません。

35歳といえば、話題のコミックエッセイ『私はかんもくガール』の著者・らせんゆむさんと、年齢がそう離れてはいません。らせんゆむさんは緘黙を克服して現在はイラストレーターとしてご活躍、お子さんもいらっしゃいますが、その一方で、こうした方もいるのです。

緘黙に詳しい方への取材も行われていて、英国における緘黙児支援のバイブルとされる本 The Selective Mutism Resource Manual の共著者の一人 Alison Wintgens さんと、10代後半や大人の緘黙者のためのサポートネットワーク iSpeak の創設者 Carl Sutton さんのコメントが載っています。緘黙の女性の一例を軸とした記事ですが、Carl Sutton さんによる年長の緘黙者一般に関する解説なども盛り込まれています。

これまであまり日が当たらなかった大人の緘黙を、「BBC」が正面切って取り上げた意義は大きいです。現在のところ、この記事は英語圏で広くシェアされているのを確認しています(Twitter で確認)。

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ところでこの BBC ですが、先ほどのニュース記事を公開後、BBC2 と BBC News Channel のテレビ番組 Victoria Derbyshire の中で、緘黙を取り上げました(現地時間7月15日9時15分からの番組)。

テレビ放送分の内容は何人かの緘黙当事者や経験者、そしてその親らに焦点を当てたものだったようです。先ほどのニュース記事で取材を受けた35歳の女性当事者も登場します。

↓ テレビ放送分と思われる動画を、BBC News が公開しています。YouTube へのリンクです。
◇ 'I have a phobia of talking' - BBC News  (新しいウィンドウで開く

[追記(2015年7月27日)]

ロンドン在住の MIKU さんが番組についてブログで報告されています。私と違って、実際に番組を見て書かれているようです。

↓ MIKU さんのブログ「場面緘黙について考える-備忘録-」へのリンクです。
◇ BBCが大人の場面緘黙を紹介 (新しいウィンドウで開く