緘黙・2015年の十大ニュース

2015年12月25日(金曜日)

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年末恒例、私の独断と偏見で選ぶ緘黙関係の十大ニュースです。少し遅くなりましたが、今年一年をニュースで振り返りたいと思います。

1月 緘黙の署名に賛同者100人超、文科省に提出


教育現場など子どもたちと関わる仕事に従事する人たちに、緘黙への正しい知識の習得を促すことを趣旨とする署名を募る呼びかけが、2014年12月30日に始まりました。署名は Change.org で行なわれ、1月31日には署名の数が目標とする100人に到達しました。翌2月1日には、発起人により文部科学省へ提出されています。

2月 『私はかんもくガール』刊行


緘黙を克服した、らせんゆむさんによるコミックエッセイ『私はかんもくガール』が2月に刊行されました。

この本は、広告、書評などメディアで大きく扱われました。私が確認したものでは、以下の通りです。『毎日新聞』朝刊1面に広告が掲載(2月16日)、『月刊学校教育相談』に書評掲載(4月号)、ブログ「ロテ職人の臨床心理学的Blog」に書評掲載(3月9日)、BOOKSTAND に紹介記事(3月28日)、『毎日新聞』朝刊?に広告が掲載(5月17日)、『小学保健ニュース』に記事掲載(9月号)、『読売新聞』に書評が掲載(11月8日)。

3月 衆議院で、緘黙が2度も単独の議題に上がる


衆議院予算委員会第四分科会(3月10日)と衆議院厚生労働委員会(3月25日)で、緘黙が単独の議題に上がりました。国会で緘黙が単独の議題に上がったのは初めてのことです。質問を行なった議員は、いずれも角田秀穂(つのだひでお)衆議院議員です。それに対し、答弁を行なったのはそれぞれ小松親次郎初等中等教育局長(文部科学省)と藤井康弘障害保健福祉部長(厚生労働省)でした。

これに対する国側の答弁の一つに、来年度から国立障害者リハビリテーションセンターで緘黙を研修のテーマに取り入れるというものがありました。それまで同センターで緘黙をテーマとした研修が実施されたことはなかったそうです。その後、11月4日(火)、同センター緘黙の研修が行なわれました。国会で議論されたことが実現したのでしょうか。

4月 『先生とできる場面緘黙の子どもの支援』刊行


スクールカウンセラーや教師、学校の管理職、スクールソーシャルワーカーなどの学校関係者が、行動療法で緘黙児を支援するための具体的な方法を示した本『先生とできる場面緘黙の子どもの支援』が刊行されました。『親子でできる引っ込み思案な子どもの支援』の姉妹書のような位置づけです。近年緘黙の本の出版が相次いでいますが、学校関係者向けの緘黙の和書は出ていませんでした。

5月 NHK「ハートネットTV」が緘黙をテーマに


NHK Eテレ(NHK教育)の番組「ハートネットTV」が、緘黙を主要テーマに据えた番組を放送したそうです(5月28日)。また、同日、「ハートネットTV」に出演した荻上チキさんが、TBS ラジオ「荻上チキ・Session-22」の中で緘黙について触れたそうです。





「緘黙が児童期のみというのは、神話」

2015年12月18日(金曜日)

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大人や10代の緘黙者のための支援グループがあります。 英国の iSpeak というサポートネットワークです。英国の緘黙支援団体といえば SMIRA が日本でも馴染みがありますが、この iSpeak も、英国では近年注目を集めています。

◇ iSpeak (新しいウィンドウで開く

大人などの緘黙支援グループの運営者が、本を出す


この iSpeak の運営者が、この度本を出します。Selective Mutism in Our Own Words: Experiences in Childhood and Adulthood という題名の本です。今月21日に出版予定で、日本の Amazon.co.jp もこれを取り扱っています。

この本に、私は注目しています。その理由のひとつは、iSpeak の本だからということ。もうひとつは、これまで緘黙の本ではあまり話題にされることがなかった、比較的年齢層が高い緘黙者(大人の緘黙者含む)を取り上げるものとみられるからです。

この本に推薦文を寄せている方のお一人に、英国における緘黙支援の第一人者マギー・ジョンソン(Maggie Johnson)さんがいらっしゃるのですが、この方の推薦文の一節は衝撃的です。

ついに、場面緘黙症は児童期のみに見られる状態という神話を一掃する本が出ました。

Finally, a book to dispel the myth that Selective Mutism is an exclusively childhood condition.

緘黙は児童期のみに見られるという見方を、「神話」(myth)と言い切っています。

発売前の本ゆえ、まだ中身を読んでおらず評価はできないのですが、注目しています。Amazon の「なか見!検索」を見た限りでは、緘黙の経験者ほか、それに関わる様々な人たちの声が含まれているようです。本の前文を、『自閉症だったわたしへ』などで日本でも知られるドナ・ウィリアムズ(Donna Williams)さんが書いています。

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本を買っていただきありがとうございます


さて、今年一年も、場面緘黙症Journal を通じてたくさんの本を買っていただき、ありがとうございました。私は Amazon.jp のアソシエイトプログラムを通じ、紹介料を得ています。

受け取った紹介料は緘黙の本の購入費等にあて、本を読んだうえ、その内容をここで詳しく取り上げたり、記事を書く際に本の内容を引用したりしています。先日の記事「『助けて』と言えない緘黙児」「人の名前が呼べない緘黙者?海外でも似た例が多数存在か」には、緘黙の本を参照した箇所がありますが、こうした記事が書けるのも、紹介料で緘黙の本を買うことができるためです。

今回の本も購入して読み、後ほどブログで改めて詳しく取り上げたいと思います。

関連リンク:大人の緘黙


今年7月、BBCが大人の緘黙を主題とする記事を公式サイト上に掲載しました。また、英国心理学会のブログにも、同月、大人の緘黙の研究を主題とした記事を公開しています。

↓ BBC News へのリンクです。
◇ Selective mutism: 'I have a phobia of talking' (新しいウィンドウで開く

↓ 英国心理学会ブログへのリンクです。
◇ The experiences of adults with "selective mutism", in their own words (新しいウィンドウで開く

関連記事


◇ 英BBCが、大人の緘黙を正面から取り上げる (新しいウィンドウで開く


Selective Mutism in Our Own Words: Experiences in Childhood and Adulthood
Carl Sutton Cheryl Forrester
Jessica Kingsley Publishers (2015-12-21)

「助けて」と言えない緘黙児

2015年12月11日(金曜日)

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米国オマハで今年8月、スクールバスの運転者が、場面緘黙症の女児をバスの車庫に置き去りにする事件がありました。女児が置き去りにされた車庫は、女児の家から9マイル(約14.5キロ)も離れていたそうです。裁判の結果、この運転者は管理者としての義務を怠った罪で有罪、250ドルの罰金刑という判決が出ました。

↓ 事件と判決について伝える現地メディア。動画あり。
◇ Exclusive: OPS bus driver given fine after leaving special needs child alone (新しいウィンドウで開く

動画を見ても分かる通り、この女児は補給チューブをしています。緘黙以外にも何か障害や病気があったのでしょう。

上の報道だけでは、女児が置き去りにされ、助け出されるまでの詳しい過程は分かりません。そこで私などは色々と推測してしまうわけですが、もしこの女児が助けの声をあげることができたら、今回の事態は起こっただろうかと思います。

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そういえば、似た話をいくつか聞いたことがあります。

○ ある緘黙児がプールで遊んで溺れてしまった。この緘黙児は誰にも助けの声をあげることがなかった。
⇒ YouTube | Selective Mutism: Giving Kids a Voice with Dr.Annie Simpsone | 2分25秒から (新しいウィンドウで開く

○ ある緘黙児が下校中に溝に落ち、脚とくるぶしを負傷。溝は高すぎて上ることができなかった。緘黙児は助けの声をあげることができず、捜索チームがこの子を見つけるまで何時間もそこで横たわっていた。
⇒ Kotrba, A. (2015). Selective Mutism: An Assessment and Intervention Guide for Therapists, Educators & Parents. Eau Claire, WI: PESI Publishing & Media. [Kindle version]. Retrieved from Amazon.com

○ ある緘黙児が水泳の授業中に大腿骨(だいたいこつ)を骨折。だが、教師にもクラスメイトにも何も話さなかった。
⇒ 大腿骨を骨折しても緘黙を続けた少年 (新しいウィンドウで開く

○ ある緘黙児は腕の骨を折ってしまったが、助けの声をあげられなかった。
⇒ 骨折しても助けの声を出せなかった子、Twitter (新しいウィンドウで開く

○ ある緘黙児は、学校の消火扉に指を挟んだにもかかわらず、全く声を出さなかった。
⇒  Sage, R., Sluckin, A. 編著、杉山信作監訳、かんもくネット訳(2009)『場面緘黙へのアプローチ』田研出版。

私は緘黙児・者には適切な支援が必要と考えていますが、その根拠の一つは、緘黙のままだと、このような危機的状況に陥っても助けの声をあげられないからです。特に、今回のような低年齢の緘黙児が、助けの声をあげられないのは危険です。

※ 『明鏡国語辞典』初版によると、電車・タクシーは「運転士」、バスは「運転者」というのが正式だそうです。