言語化の階層

2016年01月28日(木曜日)

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言語化の階層


米国の場面緘黙症の専門家 Steven Kurtz 博士は、言語化の階層(hierarchy of verbalizations)という考え方を示しています(SelectiveMutismLearning KPCPC, 2015)。これは興味深いと思いましたので、ご紹介してみます。

言語化の階層(hierarchy of verbalizations)

○ 音や声(Sounds and Voices)
○ 反応的な言語化(Responsive)
○ 自発的な言語化(Spontaneous)
○ 社会的に期待される言語化(Socially Expected)

このうち「反応的な言語化」は、質問や命令など、相手からの促しの結果として起こるものと説明されています。(Following a prompt (question or command))

また、「自発的な言語化」は、自分から始める言語化のことと説明されています。(Self-initiated)

そして、「社会的に期待される言語化」としては、Hellow, Good-bye, excuse me, please, thank you といった挨拶が例として挙げられています。

同博士の緘黙支援プログラムではまず「反応的な言語化」を目標とし、次いで「自発的な言語化」「社会的に期待される言語化」へと進むそうです。下に行くほど、緘黙の人にとって難しいということでしょう。

私なりの解釈


これについて、私なりの解釈を書いてみたいと思います(念のためお断りしておきますが、私は専門家でも何でもありません)。

緘黙の人の不安や発話に影響する要素として、よく

○ 人
○ 場所
○ 活動

の三要素が挙げられます(Mcholmら、2007; かんもくネット、2008)。誰に対して話すか(人)、どこで話すか(場所)、どんな活動か(活動)によって、緘黙の人の安心感レベルや発話行動は変わります。

先ほどご紹介した言語化の階層は、このうち「活動」の、特に言語化を伴うものに焦点を当てたものと解釈することもできるのではないかと思います。

「人」「場所」「活動」の三要素に分ける考え方は、緘黙の人へのスモールステップの取り組み(行動療法)で取り入れられています。「言語化の階層」の考え方も、「活動」の言語化に焦点を当てたものと見ると、スモールステップの取り組みの中で生かすことができるかもしれません。

参考にしたもの


↓ Steven Kurtz 博士の動画。ここで言語化の階層について解説されています。56分21秒より。同博士の治療プログラム PCIT-SM を構成する Verbal Directed Interaction (VDI) の中での考え方のようです。
◇ SelectiveMutismLearning KPCPC. (2015). SM 101 Primer for Parents, Therapists & Educators (新しいウィンドウで開く
なお、この動画は本来 Selective Mutism Learning University というサイトで公開されているものです。
◇ SELECTIVE MUTISM 101 - Welcome to Selective Mutism Learning University (新しいウィンドウで開く

◇ Mcholm, A.E., Cunningham, C.E., and Vanier, M.K. (2007). 『場面緘黙児への支援』(河井英子・吉原桂子・訳)田研出版。 (Original work published 2004)

◇ かんもくネット著、角田圭子編(2008)『場面緘黙Q&A-幼稚園や学校でおしゃべりできない子どもたち』学苑社。

障害者差別解消法と「合理的配慮」

2016年01月21日(木曜日)

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金子書房の雑誌『児童心理』2016年2月号に、金原洋治「場面緘黙がある子」が掲載されました(50~54ページ)。緘黙について概説したものでしたが、新しい話題として、障害者差別解消法や「合理的配慮」について書かれてありました。

そういえば、この法律については、まだ場面緘黙症Journal では取り上げていませんでした。今更という感もありますが、今回記事にしてみます。

障害者差別解消法とは


障害者差別解消法は2016年4月1日から施行される法律で、正式名称を「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」といいます。障害者基本法の基本理念にのっとり、障害を理由とする差別の解消を推進し、共生社会の実現を図ることを目的とした法律です(第一条)。

↓ この法律を分かりやすく解説したリーフレットが公開されています(PDF)。内閣府ホームページへのリンクです。
◇ 障害者差別解消法リーフレット  (新しいウィンドウで開く

↓ 条文や政府の基本方針の解説があります。内閣府ホームページへのリンクです。
◇ 障害を理由とする差別の解消の推進  (新しいウィンドウで開く

この法律が制定された背景には、障害に基づく差別(後述する「合理的配慮」の否定を含む)を禁止した「障害者の権利に関する条約」に日本が署名したことがあります。

合理的配慮とは


この合理的配慮という概念は、条約や今回の法律のキーワードの一つです。条約では次のように定義されています。

↓ 障害者の権利に関する条約が定義する「合理的配慮」(第二条)
障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの

これは、障害者の社会的障壁は社会が作るという「社会モデル」の考え方に基づいたものです。

障害者差別解消法の施行により、国公立学校を含む公的機関には、障害者に合理的配慮(条文では「合理的な配慮」)を行なうことが法的に義務化されます(第七条第二項)。民間事業者は努力義務です(第八条第二項)。

第七条 
2 行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。

合理的配慮が行なわれず、障害者の権利利益が侵害される場合、障害者差別解消法が禁止する差別に当たります。





『放課後カルテ』の新情報(緘黙関係)

2016年01月14日(木曜日)

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10巻が発売


1月13日(水)に『放課後カルテ』第10巻が、発売されました(地域によっては14日以降に発売)。

『放課後カルテ』といえば、第8巻第9巻で、場面緘黙症をテーマとした話を5回にわたって展開していた学校医療マンガです。

第10巻では緘黙に関わることはほとんど描かれていないのですが、読んでみてやはり面白かったです。私は、直君と晴也君の話が好きです。

緘黙講演会の簡単な報告があります


ですが、緘黙のことが全く描かれていないわけではありません。巻末のあとがきマンガの中で、2015年7月に白梅学園大学で行なわれた講演会「マンガ『放課後カルテ』から知る子どもの場面かん黙症」の簡単な報告が1ページほどあります。この講演会では、作者の日生マユ先生らが講師でした。

なお、この講演会については、緘黙を経験した Yukko さんという方がブログの中で詳しいリポートをされています。ただし、第10巻のあとがきにはここにない話もあります。

↓ Yukko さんのブログへのリンクです。
※ 放課後カルテ講演会レポート (新しいウィンドウで開く

真愛ちゃんが2年生に進級


『放課後カルテ』第10巻本編では子どもたちの卒業、入学、進級が描かれています。1年生だった緘黙の真愛(まい)ちゃんの進級も、簡単にではありますが描かれています。

10巻記念の絵に、真愛ちゃんの姿も


今回は第10巻を記念して、

(1)初版限定 描きおろしカラーメッセージペーパー全冊封入!!
(2)サイン入り複製原画プレゼント!!(10名)

の企画があります。このうち描きおろしカラーメッセージペーパーには、真愛ちゃんも少し描かれています。

日生先生インタビュー:特に反響の大きかった話は、緘黙


第10巻発売にあたって、日生先生へのインタビュー記事が「講談社コミックプラス」で公開されました(1月14日)。特に反響の大きかったお話として、緘黙の回が挙げられています。

↓ 「講談社コミックプラス」へのリンク。
※ 小学生のリアル、悩みと病気。母親や教師が絶賛共鳴!の裏で (新しいウィンドウで開く

[追記(2016年1月15日)]

「現代ビジネス」でも、このインタビュー記事が掲載されています。本来の掲載誌とは読者層が異なると思われる「現代ビジネス」に、緘黙の情報が掲載されたのは大きいです。

↓ 「現代ビジネス」へのリンク。
※ 過眠症、過食症、そして虐待・・・話題コミック『放課後カルテ』が教えてくれる、親にも分からない「子どもたちのSOS」 (新しいウィンドウで開く


[再追記(2016年1月15日)]

「Yahoo!Japanニュース」「livedoor NEWS」でも、このインタビュー記事が掲載されています。その他、今後も、もし他のニュースサイトでも掲載を確認すれば、「緘黙関連ニュース」に追記します。

※ http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20160115-00047352-biz_gendai-nb (新しいウィンドウで開く

※ http://news.livedoor.com/article/detail/11068491/ (新しいウィンドウで開く

おまけ


↓ 「緘黙RPG」完成版に、架空の漫画家「日主ユユ先生」が少しだけ登場予定。少女漫画雑誌『べー・らぶ』で「授業中カルテ」を連載しているという設定。下の画像の、赤い帽子のキャラクターがそうです。日生先生、すみません。

※ 画像をクリックすると新しいウィンドウが開き、拡大画像を見られます(43.8KB)。

放課後カルテ(10) (BE LOVE KC)
日生 マユ
講談社 (2016-01-13)