痙攣性発声障害について調べ、気付いたこと

更新日:2017年11月02日(投稿日:2016年06月16日)
アイキャッチ画像。

痙攣性発声障害とは


場面緘黙症との区別の必要性が指摘される障害の一つに、痙攣性発声障害(けいれん性発声障害; Spasmodic Dysphonia)があります。

痙攣性発声障害とは何かというと、

声を出そうとすると自分の意志と無関係に声帯が異常な動き方をしてしまう病気です。そのため声が詰まったり震えたりして、苦しく絞り出すような声になってしまいます。息漏れ声、かすれ声になるケースもあります。

と、一般社団法人SDCP発声障害患者会(後述)のホームページで説明されています。ジストニアという疾患の一種と考えられているそうです。

緘黙とは根本的に違うもののようです。とはいえ、ともに声に関わる障害です。また、あまり知られておらず、このため認知向上などを目的とした団体が存在することも共通しています。そこで、痙攣性発声障害について少し調べてみました。緘黙との比較をすることで、何か発見があるかもしれません。

耳鼻咽喉科、音声外科で扱われることが多い


痙攣性発声障害は、耳鼻咽喉科や音声外科で扱われることが多いようです。まさに「発声の障害」なのでしょう。

一方、緘黙は、声が出ないといっても、耳鼻咽喉科学や音声外科学の領域ではありません。精神医学あたりでしょう。また、緘黙は単に話せないだけの問題でもなく、強い不安により他にも何らかの問題が起こることがあります(動きが封じられてしまう「緘動」など)。緘黙は「発声の障害」というより「不安の障害」という方が近いのではないかと思います。

患者会について


2つの患者会が存在


痙攣性発声障害には、2つの「患者会」が存在します(患者会という言い方、緘黙ではあまり使いませんね)。

一つは、1999年に誕生した「SDの会」です。我が国初の痙攣性発声障害患者会で、現在でも活動が行なわれています。

もう一つは、2009年に mixi のコミュニティを母体に誕生した「一般社団法人SDCP発声障害患者会」です。痙攣性発声障害を中心に、それ以外の発声障害も視野に入れた会です。2000年代後半にネット上のコミュニティから誕生したという経緯は、「かんもくネット」とも重なるところがあります。

法人化し、政治への働きかけにも力を注ぐ患者会


このうち、SDCP発声障害患者会については、緘黙の支援団体・グループにはない特徴があり、興味深いです。その特徴としては、第一に、法人化していること、第二に、政治への働きかけに力を入れていることなどが挙げられます。

このうち法人化については、よく税制上の優遇措置を受けられるとか、社会的な信用度が増すといったことが言われます。そういえば先日、「アレルギー患者の声を届ける会」の武川篤之代表理事が、「企業側は『なぜこの会を支援するのか。妥当性を説明できるか』との観点でも支援先を選別する」とのことから、同会を認定NPO法人化したという記事を読みました(2016年5月8日(日)『日本経済新聞』朝刊15面)。緘黙の団体・グループで法人化しているものは今のところありませんが、これも考えがあってのことでしょう。

政治への働きかけについては、厚生労働大臣と面会したり、障害の認知を求めて33,108名分にものぼる署名を厚生労働省に提出したりするなど、実績が豊富です。会の規模は、母体となった mixi コミュニティと合わせてもかんもくネットと同じぐらいなのに、素晴らしい実績です。そもそも、患者会の相談役が衆議院議員ときています。思うに、この患者会の場合、「治療の保険適用を求めて働きかけること」という、政治の力無しには実現できないことを会の目的の一つに掲げていることも、政治への働きかけに力を注いでる理由だろうかと思いますが、定かではありません。

※ 緘黙の団体・グループも、これに倣って法人化するべきだとか、政治に働きかけるべきだといわんとしているのではありません。

患者会のテーマソング『みんなの声』


なお、SDCP発声障害患者会には、経験者であるシンガーソングライターが作ったテーマソングがあります。COZ さんという方の『みんなの声』という歌です。この歌はまた、「声の障害含め『見えない病気』と戦う患者さん全ての人達への応援ソング」でもあるそうです。テーマソングとあって、とても前向きな歌で、驚きました。

↓ その歌のプロモーション動画。YouTube へのリンクです。
◇ COZ みんなの声.mov (新しいウィンドウで開く

テレビで見たのに、Yahooニュース読んだのに、全く覚えていない


なお、私が痙攣性発声障害の存在を強く意識したのは2015年のことでした。確か、演歌歌手の青木美保さんが痙攣性発声障害を克服したという話を読んだのがきっかけだったと思います(私は演歌好きなので……)。

実はその前の2010年には、NHK総合のテレビ番組『ニュース7』で患者会のニュースを見ていたのですが、これは私の Twitter 投稿の記録にはあるものの、記憶には全くありません。また、2013年にも、Yahoo!Japan のトップニュースで痙攣性発声障害のニュースを読んでいたのですが、これまた記録にはあるものの、記憶には全く残っていません。

テレビ番組や新聞記事で知らない障害や病気の記事を数年置きに1回や2回見ても、私の場合、そのうち忘れてしまいます。ニュースを見た当時は関心を持ち、Twitter でニュースについて投稿をするぐらいなのですが、しばらくすると綺麗さっぱり忘れてしまうのです。お恥ずかしい話です。このため、緘黙の当事者や経験者でも何でもない人が、「テレビの『仰天ニュース』で緘黙を知った」という話を聞くと、その記憶力のよさに驚きます。

ともあれ、緘黙の認知向上を訴える以上は、他の障害や病気を知って欲しいと訴えている方の声にはもっと真剣に耳を傾けるべきです。さもなくば、自分が関心を持つ障害さえよければいいのか、という話になってしまいます。そういう反省もこめて、今回の記事を書いています。

リンク


◇ 一般社団法人SDCP発声障害患者会 (新しいウィンドウで開く