7月にまた新刊が出ます『場面緘黙支援の最前線』

2017年05月22日(月曜日)

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緘黙の本がまた出る


場面緘黙症の新しい本が、またしても出ることが明らかになりました。『場面緘黙支援の最前線-家族と支援者の連携をめざして-』という本です。Amazon.co.jp に書籍情報があります。

↓ 予約注文できます。Amazon.co.jp アソシエイトリンクです。
◇ 場面緘黙支援の最前線-家族と支援者の連携をめざして- (新しいウィンドウで開く

Amazon.co.jp によると、本の基本情報は次の通りです。

○ 著者:ベニータ・レイ・スミス、アリス・スルーキン
○ 序文:ジーン・グロス
○ 翻訳:かんもくネット
○ 出版社:学苑社
○ 発売予定日:2017年7月1日

一部情報を修正しました。(2017年5月24日)


英国の本 Tackling Selective Mutism の翻訳書か(違ったらごめん)


[追記(2017年5月23日)]

Amazon.co.jp の情報が更新されました。やはり、Tackling Selective Mutism の翻訳書だそうです。


まだ発売前で情報があまり公開されておらず、これがどういう本なのかは私にもよく分かりません。ですが、著者の顔ぶれから推測するに、これはイギリスの本 Tackling Selective Mutism: A Guide for Professionals and Parents の翻訳書かもしれないと思います(間違っていたらごめんなさい)。

Tackling Selective Mutism は、緘黙について様々な角度から総括的に書いた本です。著者が多数いて、章によって著者が異なります。イギリスの本の翻訳書といえば『場面緘黙へのアプローチ-家庭と学校での取り組み-』という DVD 付きの青い本がありますが、その点、あの本と似たところがあります。

Tackling Selective Mutism については、場面緘黙症Journal でも取り上げたことがあります。詳しくお知りになりたい方は、こちらをご覧ください。

◇ 英国から新たに出た、緘黙の本 (新しいウィンドウで開く

ちょっとイギリス色が強い章も中にはあるのですが、全体として既存の日本の本にはないことも書かれてありますし、日本でも関心の高い緘黙と吃音の異同や、大人の緘黙についても少しではありますが触れています。緘黙の若者やその親の声を集めた研究などは、なかなか興味深いです。

本がどういうかたちになるのかは分かりませんが、注目したいと思います。




緘黙児者の夢

2017年05月21日(日曜日)

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夢を持つ人、持たざる人


話せない自分の現実を見て、夢ややりたいことについて、考えることを、夢とすることを諦めてしまうかもしれません。ぼんやりと、なんとなく、考えているだけでも当時の私にとっては良かったのかなと今振り返ると思います。なんとなくでもやりたい気持ちが心のどこかにあると、話すということへの原動力になると思うからです。

大橋伸和さんという、北海道にお住まいの場面緘黙症経験者のお話です(場面緘黙シンポジウム, n.d., p. 21)。このお話は、2014年に東京で行なわれた「場面緘黙シンポジウム」の中で寄せられた、就職に関する質問に対する回答の一部です。大橋さんは緘黙をテーマとした講演をよくされており、ご存じの方もいらっしゃるだろうと思います。

私はこのお話を読んで驚きました。大橋さんは緘黙がある間にも夢を持っておられたのだろうか。そうだとしたら、すごいなと。

私は夢を持つことはできませんでした。「自分は価値の無い人間だ。こんな自分が将来ああなりたい、こうなりたいと考えるのは不遜な思い上がりだ」などと考えていたのでした。なんという卑屈な少年だったのでしょう。緘黙の診断は受けていませんが、学校で話せなかった私は、惨めな経験を重ねてきたためか、自尊心が極めて低かったのでした。

また、話せない状態があまりに長く続いたものですから、自分はこのまま一生まともに人と口を利けないまま生きていくことになるだろうと思い込み、そのことを前提とした将来設計を考えたのですが、そうした将来設計が私には描けなかったのでした。

このあたり、大橋さんとひょっとしたら正反対だったのかもしれません。上のお話からは、大橋さんはぼんやりとだったかもしれませんが夢を持っておられて、それが話すことへの原動力になったとも読み取れます。また、緘黙は死ぬまで続くものではなく、いずれは話せるようになる可能性があるとも思っておられたのでしょう(間違っていたらごめんなさい)。


解決志向アプローチ


進路選択の話とは少し違うのですが、以前お話した2016年末出版のイギリスの緘黙治療マニュアル The Selective Mutism Resource Manual(第2版)を読み返していたところ、大橋さんのお話を連想させる箇所がありました。

緘黙児者への治療的介入に先立って、緘黙児者がどういうふうになりたいと考えているのかを質問して動機付けを図る方法や、どういうゴールを持っているのかを質問し、さらにそれを達成可能なゴールに具体化して優先順位付けを図る方法が紹介されているのです(Johnson and Wingtgens, 2016)。

例えば、「ミラクル・クエスチョン」(The miracle question)という質問方法です。もし寝ている間に魔法の妖精が現れて、あなた(緘黙児者)にとって一番いい一日を学校で過ごせるようになったとしたら、そのイメージを絵にして描いてみましょうと促すのです。

この本によると、これは「解決志向療法」(solution-focused therapy)または「解決志向技法」(solution-focused technique)を一部取り入れたものだそうです。私は専門家ではないので分からないのですが、よく「解決志向アプローチ」などと呼ばれるものと似たものでしょうか。

↓ 日本臨床心理士会ホームページによる解説です。
◇ 解決志向アプローチ (新しいウィンドウで開く

上のホームページでは、解決志向アプローチについて次のように書かれてあります。

「何がいけないのだろう?」と考える代わりに「自分が望む未来を手に入れるために、何が必要なのだろう? 何が出来るのだろう? どうやったらできるのだろう?」と考え、一緒に解決を創り上げていきます。

思うに、私は話ができない自分の現状ばかりを考えていました。一方、冒頭の大橋さんのお話からは、大橋さんは夢という将来像を描いていて、それが話すことの原動力になっていたとも解釈できます(間違っていたら、すみません)。大橋さんは解決志向アプローチを意識していたわけではなかったのでしょうが、少し連想させるものがあると感じました。







『かんもくって何なの!?』を読みました

2017年05月14日(日曜日)

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場面緘黙症のコミックエッセイ『かんもくって何なの!?-しゃべれない日々を脱け出た私-』が、2017年5月10日に発売されました。この作品は、pixiv というイラストコミュニケーションサービスで話題になった漫画を書籍化したものです。

読み終えたので、早速感想を書きたいと思います。

本の基本情報


著者はモリナガアメさん。場面緘黙症を経験された方です。別名義で同人漫画を描いてこられたそうで、漫画が大変お上手です。私は漫画は詳しくはないのですが、プロレベルではと思ったほどです。それが今回の本出版で、「マンガ家 モリナガアメ[著]」と記されるに至りました。加えて、日本緘黙研究会会長で、上越教育大学大学院教授の加藤哲文氏が解説を行なっています。

出版社は合同出版です。合同出版といえば、2015年に『私はかんもくガール-しゃべりたいのにしゃべれない 場面緘黙症のなんかおかしな日常-』という、らせんゆむさんのコミックエッセイを出版した会社です。

ページ数は200ページを超えており、コミックとしては多いです。『私はかんもくガール』の1.5倍あります。


本の概要


本の内容は、モリナガアメさんが、場面緘黙症の経験を中心に、ご自身のことを幼稚園から振り返って描いたコミックエッセイと言えるのではないかと思います。緘黙だけではなく、機能不全家族に関する描写も多いです。また、この本のお話では、同人漫画が重要な鍵となっています。

描かれているのは、幼稚園や学校で話せなかった時期のことだけではありません。それは本書の前半部分で、後半では緘黙経験が長期にわたってモリナガアメさんに与えた影響が描かれています。

可愛らしい本の表紙や背表紙だけを見ると、まるでお子さま向けの漫画や絵本かと思ってしまいそうです。ですが、おそらく想定されている対象年齢はもっと上だろうと思います。10代後半から大人の方が読むとよいかもしれません。

本書は pixiv 版とは多少違いがあります。書籍版は「幅広い層に読んでもらうことを意識」「文字校正・加筆修正済 書き下ろしもあり」とのことです(モリナガアメ, 2017年4月22日)。加藤氏の解説も、書籍版のみです。

※ なお、モリナガアメさんは「育った環境上、『家庭の問題』も多く出てきますが、場面緘黙への発症には必ずしも家庭環境が関係しているとは限らない事は、ご理解いただければと思います」と書かれています(4ページ)。この点は繰り返し強調されています。


感想