地方議会の会議録を「緘黙」で横断検索

2017年08月18日(金曜日)

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国会や地方議会で、場面緘黙症が話題になったことがあるかどうか……

というお話をこのブログでしたのは、2011年8月のことでした。あれから6年、変わらないこともあれば、変わったこともあります。そのことについて、今回お話してみたいと思います。

↓ 2011年8月23日に公開した記事です。
◇ 国会や地方議会で、緘黙が話題になったことがあるか (新しいウィンドウで開く

国会の会議録を検索


6年前の記事でご紹介した「国会会議録検索システム」は、現在も利用できます。平成27年(2015年)3月には、衆議院で緘黙に関する質問が2回行なわれており、それも閲覧することができます。

◇ 国会会議録検索システム新しいウィンドウで開く


地方議会の会議録を検索できる、新たなサイト


一方、地方議会の会議録を検索できた「会議録検索ナビ」は現在存在しません。ですが、それに代わるものがありますので、ご紹介します。

↓ 地方議会の会議録を一度に検索できます(横断検索)。検索結果が見やすいです。
◇ 議事ロックス (新しいウィンドウで開く

↓ 47都道府県の会議録検索は、こちらの方がヒット件数が多いです。
◇ yonalog 全国47都道府県議会議事録横断検索 (新しいウィンドウで開く

↓ 同様に、政令指定都市に特化した会議録検索です。
◇ serelog 政令指定都市議会議事録検索 (新しいウィンドウで開く

これらのサイトで「緘黙」などと検索することにより、全国の地方議会で緘黙がどの程度話題になっているかや、どういった取り上げられ方がされているかが分かります。

ただし、上の横断検索は、全ての会議録を網羅しているわけではないようです。例えば、岩手県議会と静岡県議会は検索対象に含まれていません。また、何十年前といった、あまり昔の会議録はネット上に公開されておらず、検索できない場合があります。何年前までの議事録が検索できるかは、自治体にもよって違います。さらに、公開されている会議の範囲も自治体によって違います。

緘黙について踏み込んだ質疑があった最近の5件


最近6年の会議録の中では、緘黙について踏み込んだ質疑はこれだけ見つかりました。

東京都  江戸川区 平成28年 第4回定例会−12月02日-03号
長野県  佐久市  平成27年 3月定例会(第1回) 03月04日−02号
埼玉県  戸田市  平成24年 9月定例会(第4回)−09月10日-05号
長野県       平成24年 6月定例会本会議−06月27日-03号
神奈川県 平塚市  平成24年 教育民生常任委員会

※ 7年以上前の地方議会の会議録については、6年前の記事でだいたいお話したので省きます。

この5件の中から、興味深く感じた点を挙げます。

  • 佐久市の小中学校では、緘黙の児童生徒は来入児1名と小学校2年生1名の、合わせて2名というのが行政側の認識。佐久市の人口はおよそ10万人。

  • 平塚市議会では、県立高校入試の際、緘黙の生徒にも課される面接試験のことが話題になった。神奈川県では配慮がなされていることが窺われる。

  • 都道府県問わず、緘黙に関する質問をしている議員のほとんどが、公明党所属。


平成16年に、岩手県議会で、緘黙の児童生徒に対する配慮についての質疑があった


あと、今回特別に取り上げたいものとして、岩手県議会の平成16年(2004年)12月定例会の会議録があります。6年前の記事ではご紹介していなかったので。

これは「いわて特別支援教育推進事業費」という、LD、ADHD、自閉症に関する予算に関する質問なのですが、質問者の野田武則県議(現・釜石市長)は併せて緘黙に関する質問も行なっています。

また、どちらかといいますと、こういうLD、あるいはADHDの方に目が向けられまして、少人数だろうと思いますが、緘黙児の、あるいは場面緘黙児も含めますが、そういった児童生徒に対する配慮がなされているのかどうか、その辺の実態についてお伺いしたいと思います。

鋭い!と、私などは考えてしまいました。緘黙は発達障害に比べるとあまり注目が当たらずにきたのは、「議員ご指摘の通り」です。

この質問に対する遠藤洋一学校教育課長の回答も、当を得たものです。当時岩手に、緘黙についてのしっかりした見識を持った方がいたことを窺わせます。

2004年といえば、今日存在する緘黙の団体・グループは一つもなかった頃です。緘黙を主題とした本も、一般流通したものでは『場面緘黙児の心理と指導』のみしかありませんでした。ですが、緘黙についてしっかりした質疑応答がなされています。



当事者や経験者向けの本が、ほとんどない

2017年08月12日(土曜日)

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私は「それ以外の方」だったのか--

『学校における場面緘黙への対応』という本を読んでいたら、はっとさせられました(高木, 2017, p. 183)。

本書は、主な読者として学校の先生を想定して書きました。もちろん保護者やそれ以外の方にも読んでいただけたら嬉しいですが、学校の先生が実践するという視点で書いてしまったことをご容赦ください。

※ マーカーは、私が施したものです。

保護者はしっかり「保護者」と書かれている一方で、場面緘黙症の当事者や経験者は「それ以外の方」という扱いです。

とはいえ、この「それ以外の方」という表現、言い得て妙だと思います。緘黙をテーマとした本はこれまで多く出版されてきましたが、緘黙についての専門的な本で(つまり経験談の本は除く)、当事者や経験者向けのものはほとんどなかったからです。当事者や経験者は、対象読者としては「それ以外の方」とされてきたのです。

近年出版された、緘黙の専門的な本


具体的に見ていきましょう。近年出版された緘黙の専門的な本と、その対象読者層です。

場面緘黙支援の最前線-家族と支援者の連携をめざして-』(2017年)
⇒専門家や保護者

学校における場面緘黙への対応-合理的配慮から支援計画作成まで-』(2017年)
⇒学校の先生

先生とできる場面緘黙の子どもの支援』(2015年)
⇒学校関係者

どうして声が出ないの?-マンガでわかる場面緘黙-』(2013年)
⇒緘黙児と保護者

場面緘黙へのアプローチ―家庭と学校での取り組み-』(2009年)
⇒保護者、教育関係者、専門家

場面緘黙Q&A-幼稚園や学校でおしゃべりできない子どもたち-』(2008年)
⇒保護者や教師

場面緘黙児の心理と指導-担任と父母の協力のために-』(1994年)
⇒はっきり分からないが、当事者や経験者向けではなさそう

これだけ多くの本が出版されてきたにも関わらず、当事者や経験者を対象とした本は『どうして声が出ないの?』の1冊だけです。

当事者や経験者向けの本が少ないのは、日本に限ったことではありません。私が収集している英語圏の本でもそうです。


当事者や経験者は、緘黙についての客観的な理解まであるとは限らない


緘黙の当事者や経験者だからといって、緘黙についての客観的な理解まであるとは限りません。当事者や経験者が分かるのは、緘黙についての主観的な感覚や、当事者から見た周囲の関わりなどです。

実際、緘黙について理解を訴えるための活動をされている当事者や経験者の方でも、緘黙についての基本的なことを知らない方が案外いらっしゃったりします(私なぞが言うのもおこがましいのですが……)。皆さん、緘黙の本をあまり読んでいないのでしょうか。もっとも、そもそも当事者や経験者向けの本がほとんどないため、読みようもないのかもしれません。





ウェブ掲示板--おそらく日本初の、緘黙についての交流の場

2017年08月06日(日曜日)

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場面緘黙症についての交流の場としては、日本では初めてではないか--

2000年頃にインターネット上で生まれた、緘黙などをテーマとした掲示板のことです。

アメリカやイギリスとは違い、日本ではインターネット普及以前には、緘黙の支援団体はありませんでした(初の団体設立は2006年)。小さな親の会などの存在も、少なくとも私は聞いたことはありません。日本では、ネット上の掲示板が、緘黙の当事者・経験者、保護者らの最初の交流の場だったのではないかと私は見ています。

今回は緘黙の掲示板を、その初期である2000年代前半を中心に取り上げたいと思います。今となってはネット上にあまり残っていない幻の交流の場です。私は当時をリアルタイムで知る者として、しっかりとお伝えしたいと思います。お付き合いいただけると幸いです。

今回の記事では、緘黙の掲示板を2通りに分類してお話します。一つは、業者運営型。もう一つは、個人運営型です。整理してお話したいと思います。

業者運営型の掲示板


緘黙掲示板の代表格だった「Yahoo!掲示板」


「Yahoo!掲示板」というツリー型掲示板がかつて Yahoo!Japan にあり、数多くの書き込みが寄せられていました。緘黙についても「緘黙症」というトピックがありました。

↓ 現在アクセスできません。
◇ Yahoo!掲示板「緘黙症」 (新しいウィンドウで開く

webアーカイブスサービス「Wayback Machine」で調べたところ、トピックが立ち上がったのは2000年11月13日のことでした。確認できる最後の投稿は2003年4月26日で、この時点で1,624件の書き込みが寄せられています。

その後間もなく、後継トピック「緘黙症(再)」が立ち上がりました。この後継トピックは、確認できる最後の投稿が2004年7月15日で、この時点で251件の書き込みを記録しています。両者合わせると、1日平均1件以上の書き込みがなされた計算になります。

育児カテゴリに保護者が立てたトピックとあって、当事者・経験者よりも保護者の書き込みの方が多かったようです。

トピックは早くも2000年に立ち上げられていますし、書き込み頻度も多く、さらに緘黙を掲示板の明確なテーマとして掲げていることから、緘黙に関する初期の掲示板では最も代表的なものと言えるのではないかと思います。

なお、Yahoo!掲示板の投稿によると、これ以前にも「しゃべらない子」と題する、緘黙に関するトピックが立てられていたようです。その詳細についてまではつかめませんでした。


裏の代表格だった「2ちゃんねる」


Yahoo!掲示板が、緘黙掲示板の表の代表格とすれば、裏の代表格は2ちゃんねるでしょう。

2003年6月16日に最初のスレッドが立てられ、およそ2年後の2005年3月11日に書き込み数が1,000件に達しました。ここでも1日平均1件以上の書き込みがなされた計算になります(ただし、スレッドの趣旨とは無関係な書き込みも含みます)。緘黙のスレッドは以後も続きますが、2000年代後半以降の掲示板の状況については今回の記事の対象外ですので、触れずにおきます。

この2003年に立てられた最初の緘黙スレッドは、現在でも閲覧できます。この時期の掲示板での緘黙に関する書き込みが現在でも全て残っているのは、この2ちゃんねるスレッドぐらいです。貴重ですので、ご紹介することにします。保護者の書き込みも少なくありませんが、どちらかと言えば当事者・経験者の書き込みが多いかもしれません。

↓ 2ちゃんねる「場面緘黙症」最初のスレッド。
◇ ◆場面緘黙症◆ (新しいウィンドウで開く