「不安を和らげるだけでは、発話には不十分」

2016年03月04日(金曜日)

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※ 緘黙者の不安を和らげる必要性を否定する記事ではありません!

「緘黙のステージ」


「緘黙のステージ」をご存じでしょうか。緘黙児のコミュニケーションの3つのステージです。

ステージ0 - コミュニケーションの欠如
ステージ1 - 非言語的応答(1a)と非言語的働きかけ(1b)
ステージ2 - 言語的応答(2a)と言語的働きかけ(2b)

これは、緘黙児支援で豊富な実績がある米国の「場面緘黙症不安研究治療センター」(スマート・センター; Selective Mutism Anxiety Research & Treatment Center; SMart Center)によるものです。

この「緘黙のステージ」は、かつて私も公開に関わったかんもくネットの翻訳資料「場面緘黙を不安障害として理解するために」で詳しく紹介されています(上の翻訳は、この資料から拝借しました)。

↓ かんもくネットホームページへのリンクです。PDF(48.4KB)。なお、PDFを閲覧するには Acrobat Readerが必要です。Acrobat Readerはこちら (新しいウィンドウで開く)からダウンロードできます。
◇ 「場面緘黙を不安障害として理解するために」 (新しいウィンドウで開く

また、かんもくネットが著した『場面緘黙Q&A』15ページにも記載されています(初版で確認)。「緘黙のステージ」という訳もかんもくネットによるもので、元は SM Stages of Communication Comfort Scale (SM-SCCS) という難しい言い方をします。

非言語コミュニケーションから言語コミュニケーションへの移行期


ところが、この「緘黙のステージ」は、別のスマート・センターの資料では書き方が違います(例えば、後述の資料)。後に改訂されたのでしょうか?かんもくネットに倣って訳すと……。

ステージ0 - コミュニケーションの欠如
ステージ1 - 非言語的応答(1a)と非言語的働きかけ(1b)
ステージ2 - 移行期の応答(2a)と移行期の言語的働きかけ(2b)
ステージ3 - 言語的応答(3a)と言語的働きかけ(3b)

つまり、非言語的コミュニケーションと言語的コミュニケーションの間の、移行期のステージがこちらでは追加されています(太字で強調しました)。

この移行期については、緘黙児への支援プランでは見過ごされがちだとして、スマート・センターは重視しています。この移行期に関する資料を、先日、同センターが Twitter で紹介しました。

↓ スマート・センターによる、Twitter 投稿へのリンクです。Twitter に登録していない方でもご覧になれます。
◇ What is the missing link to most Selective Mutism treatment plans?  (新しいウィンドウで開く

Twitter 投稿には https://www.hightail.com/download/…というリンクが貼られていますが、それが移行期に関する資料です(PDFファイル449KB)。著者は、エリザ・シポンブラム博士。

緘黙児の不安を和らげただけでは、言語コミュニケーションに移行しない


この資料には、緘黙児の不安を和らげても、それだけでは大抵の場合、非言語コミュニケーションのステージに留まってしまい、言語コミュニケーションのステージに至るには不十分という趣旨のことが強調されています。特に年齢が上になるほどそうで、それは緘黙行動が学習されているためだといいます。

それでは、この移行期にどうすればよいかというと、資料では Verbal Intermediary の活用など、3つの方法が挙げられています(残り2つについては、資料をご覧ください)。Verbal Intermediary とは何かというと、先程のかんもくネット資料「場面緘黙を不安障害として理解するために」の中で「言葉の橋渡し役」として詳細な説明があります。『場面緘黙Q&A』129ページにも記載があります(初版で確認)。

このシポンブラム博士の見解には行動理論の影響が窺われ、米国らしいです。ただ、シポンブラム博士は緘黙については豊富な臨床経験があることから、そうした経験に裏打ちされた理論かもしれません。

緘黙児への支援としては、温かく見守ればいずれ話すようになるという意見を見ることがあります。シポンブラム博士の見解はそれとは真っ向から対立するもので、私は注目しています。