緘黙児に「君は勇敢だ!」(行動療法)

2016年03月19日(土曜日)

アイキャッチ画像。

ある米国の地方ニュース


Litchfield Independent Review という米ミネソタ州の地方紙に、緘黙を主題とした記事が掲載されました。興味深い記事だったので、取り上げてみます。

↓ その記事へのリンクです。
◇ 4-year-old with selective mutism finds his 'brave voice' (新しいウィンドウで開く

記事の内容は、ある緘黙の少年を通じて、緘黙とその改善への道のりを伝えたものです。

治療場面で、緘黙児に「君は勇敢だ」


記事の中で特に興味を引かれたのは、緘黙児に行なわれている治療(おそらく行動療法)の一部に、「君は勇敢だ(brave)」と伝え、発話を促すものがあるという話です。

※ 行動療法は、単なる発話の強要ではありません。それは逆効果です。

他にも、緘黙児が勇敢さを発揮して出す声を brave voice と言ってみたり、緘黙児に君は勇敢である必要があると説いたという話など、この勇敢な(brave)という単語は、記事の中で8回も登場します。記事の題名にもこの言葉は含まれていますし、締めの一文も勇敢さの効用を説いたものです。

勇敢な(brave)という言葉は、海外の緘黙児支援、特に行動療法では以前から目にすることがありました。例えば、ニューヨークの Child Mind Institute という民間機関で行なわれる緘黙児への集中プログラムの元祖の名前は brave buddies で、ここでは緘黙児の発話を brave talking と呼んでいます。また、オランダやフランスには緘黙児へのパソコンゲームがあって、治療場面でも活用されているのですが、このゲームのテーマは、「勇敢であれ」「話すことを恐れてはいけない」です。

行動療法といえば、日本でも『どうして声が出ないの?マンガでわかる場面緘黙』など、近年の本ではよく扱われます。ですが、日本の緘黙の読み物で、こうした勇敢さを強調したものはなかったのではないかと思います。

素朴な疑問:「楽しく」との兼ね合い


確かに、緘黙児がスモールステップの階段を上っていくには、勇敢さや勇気といったものが必要になってくる場面は多々あるでしょう。「あなたは勇敢だ」とその気にさせるのは、面白い作戦かもしれません。ただ、これが行き過ぎて、「勇敢たれ!勇気を出せ!」と精神論的な面ばかり強調されるようになると、どうだろうと思います。

『どうして声が出ないの?』では、スモールステップの取り組みのポイント?の一つに「楽しく」が挙げられています。実際、緘黙児への行動療法では遊びを取り入れたものが紹介されることがあり、緘黙児にプレッシャーを与えないよう楽しみながらステップを踏んでいくことも大切な工夫だろうと思います。

私は、このあたりの兼ね合いをどうとるかを考えます。それはおそらくバランスやTPOで、ひたすら「勇敢たれ!勇気を出せ!」と追い詰めるのもよくなくて、かといって「楽しく」だけではなく勇敢さが必要になってくる場面も出てくるということだろうかと、今のところ考えています(といっても、机上で考えているにすぎないのですが……。科学的根拠も知りません)。

蛇足


ちなみに、私が作ったゲーム「緘黙RPG」では「勇気」がキーワードの一つです。「勇者」という言葉も登場します。

それは上で書いたような海外の支援動向の、私なりの解釈を反映させたものです。単なるドラクエとかの真似ではありません(けっこう影響受けてますけど……)。