緘黙関係者と吃音関係者の関わり

2016年03月27日(日曜日)

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緘黙に関心のある人の間で、吃音が話題に


青い鳥 (新潮文庫)場面緘黙症がある人が主人公の小説に、直木賞作家・重松清さんの「ハンカチ」(2007年)があります。短編集『青い鳥』に収録されている作品です。話の軸は、緘黙の女子中学生と、吃音の教師という、ともに発話に困難がある二人です。

※ 表題作「青い鳥」は、2008年に映画化されました。阿部寛主演。

この「ハンカチ」が呼び水になったのか、そうでないのかは分からないのですが、最近、緘黙に関心のある方の間で吃音が話題になることが増えています。また、その逆もあります。

最初にこの動きに私が気付いたのは2014年頃です。この頃からTwitterで、緘黙と吃音を関連付けるなどする投稿が増え始めました。

子どもの吃音 ママ応援BOOK2016年1月には、緘黙の本に何度も関わってきた、はやしみこさん(かんもくネット)がイラストを担当する『子どもの吃音 ママ応援BOOK』(学苑社)が刊行。著者の菊池良和さんが講師を務めた出版記念講演会では、はやしさんが緘黙についてお話しするコーナーがあったそうです。

◇ かんもくネット Facebook ページに、講演会について書かれてあります。 (新しいウィンドウで開く

[追記(2016年3月29日)]

◇ 『子どもの吃音 ママ応援BOOK』では、緘黙についても触れられているそうです。


最近では、レデックス株式会社のメールマガジンで、かんもくネットによる緘黙の連載があり話題になりましたが(同社ホームページで、過去のメールマガジンを読むことが出来ます)、偶然か否か、緘黙の連載が終わった後に始まったのは吃音の連載です。それも、「場面緘黙と吃音は似ているところがあります」と始まっています。

私がよく見ている英語圏の情報や、ときどきチェックしているドイツ語圏の情報では、そこまで緘黙と吃音が関係付けられてはいません。日本独特のトレンドなのかもしれません。

「緘黙」よりも広いくくり


それで思い出したのは、「発音・言語・コミュニケーションに支援を必要とする子ども」(Children with speech, language and communication needs; 以下、SLCNと略します)という英国の専門用語です。

SLCN とは何かというと、これは定義が様々なようなのですが、広義には、自分が思うことを表現するのに困難がある子どもや、相手が表現したことを理解するのに困難がある子どもなど、言語コミュニケーションに困難がある幅広い子どものことを言うようです。具体的には、特異的言語障害 (Specific Language Impairment; SLI)、吃音、自閉症スペクトラム症、脳性麻痺ほか。緘黙も、これに含まれます。

英国には、SLCN の支援団体があります。I CAN や Afasic、The Communication Trust などがそれです。英国の緘黙支援団体 SMIRA は、Afasic と The Communication Trust に参加しています。

英国では、SLCN に対して政府も支援に関わっています。例えば、2008年には Bercow Review という政府への答申が出て、その後、答申を受けた Better Communication という行動計画が策定されました。Bercow Review の諮問グループには、I CAN や Afasic、英国吃音協会の最高責任者など様々な方が名を連ねています。そして、その中には、英国の緘黙支援団体 SMIRA のアリス・スルーキン(Alice Sluckin)会長の名もあります。

緘黙という障害は英国においてもマイナーです。緘黙単独では、ここまでのことにはならなかったのではないかと思います。

このように、緘黙というくくりだけに拘るのではなく、時には似た障害を抱える人たちや支援者たちと関わると、今までにないことができるかもしれません。緘黙関係者と吃音関係者の関わりについては、この点で興味深いと考えています。

余談~Afasic 後援者は王族、会長は下院議長


ちなみに、Bercow Review の Bercow とは、ジョン・バーコウ(John Bercow)下院議長のこと。この方、実は Afasic の会長でもあります。Afasic はまた、後援者がグロスター公爵夫人バージット妃殿下です。このように、英国の要人が関わっています。

4月には、世界的歌手のサリナ・ジョーンズ(Salena Jones)さんが Afasic を支援するために歌を歌うそうです。スケールが違います。この Afasic に、緘黙支援団体 SMIRA が参加しているのです。

※ なんだか最近、海外の話ばかりしているような気がします。

リンク


◇ I CAN - The children's communication charity (新しいウィンドウで開く
◇ Afasic | Voice for Life (新しいウィンドウで開く
◇ The Communication Trust (新しいウィンドウで開く

関連書籍


↓ "Selective Mutism and Stammering - Similarities and Differences"と題し、緘黙と吃音の比較を行なう珍しい論考があります。著者は言語聴覚療法士。ただし、この論考のページ数は少なく、3ページ半しかありません。