30年前に緘黙の本を3冊発表、新聞やテレビに出た研究者

2016年05月04日(水曜日)

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近年、緘黙の本の出版やメディア掲載が相次ぐ、緘黙に注目する研究者も


場面緘黙症への関心が、近年高まっているようです。メディアで緘黙が取り上げられることはもはや珍しくなくなりました。緘黙の本も多数出版されています。専門家の間でも緘黙への関心は以前よりも高まっているようで、緘黙を継続的に研究する学者が現れるなど、新しい動きが見られます。

こうした流れは、2000年代後半に、緘黙の理解促進などを目的とする団体「かんもくネット」が誕生したあたりから顕著になりました。それまでは緘黙がメディアで取り上げられるといった話はほとんど聞いたことがありませんでしたし、緘黙を主題とした専門的な本は10年以上にわたって出版されない時代がありました。一時は、日本には緘黙に注目した研究者は一人もいないとさえ言われていたのです。

ですが、本当に昔は何も無かったのかといえば、そうではありません。これまでにも何度かご紹介してきましたが、今から30年近く前の80年代後半に、岩手大学の故・山本実教授が、この分野で大きな足跡を残しています。

30年前に緘黙の本を3冊、新聞やテレビにも出た研究者


山本教授は、80年代後半に緘黙に注目された方で、『緘黙症・いじめ-正子の場合』(86年)、『「緘黙」への挑戦』(88年)、『「学校かん黙」事典』(89年)と、緘黙の本を3冊も世に出されました。特に『「学校かん黙」事典』は、タウンページ並みの厚さがあるそうです。

さらに、『読売新聞』やNHKの「おはようジャーナル」「ファミリージャーナル」などでも取り上げられ、山本教授がテレビ出演されたようです。他にも『小五教育技術』(小学館)、『健康教育』(東山書房)『教育心理』(日本文化科学社)『教職研修』(教育開発社)、その他『教育医事新聞』にも紹介、論評されたり、山本教授が執筆したりされたそうです。

このあたりについては、かんもくネット代表の角田圭子さんが以前、詳しく書いてくださいました(以前といっても9年前、かんもくネットができてまだ3ヵ月目の時のことです)。上の情報も、角田さんの情報に負っています。

◇ もう一人の緘黙研究者 (新しいウィンドウで開く

最近の私の調べでは、山本教授は緘黙のことで『朝日新聞』(90年2月17日掲載、朝刊か夕刊か等の詳細は不明)の取材も受けていたようです(注)。

今でいう緘黙啓発に近いことを、メディアを通じて30年前に


山本教授は、この分野に早い段階から注目した方と言えます。当時は緘黙のみをテーマとした専門書はありませんでした。また、緘黙がメディアで取り上げられたのも当時としてはおそらく異例のことで、これだけメディアで大きく取り上げられたのはもしかすると日本では初めての可能性すらあります。今でいう緘黙の啓発に近いことを、メディアを通じて30年近く前に行っていたという見方もできるかもしれません。

現在、緘黙が専門家からより多くの注目を集めるようになり、また、メディアで取り上げられるようになりましたが、そういう今だからこそ、山本教授がご存命ならと思います。また、山本教授が早い段階で取り組まれた足跡は注目されて欲しいです。

補遺1・『場面緘黙児の心理と指導』


『場面緘黙児の心理と指導』(94年)の著者、河井芳文東京学芸大学教授(89年死去)の業績も重要です。 

『場面緘黙児の心理と指導』は、おそらく日本で初めてメジャーな流通に乗った、緘黙のみをテーマとした専門書です。現在でも Amazon.co.jp などで買うことができます。この本は、河井教授が亡くなられた後、残された原稿を妻の河井英子氏(武蔵丘短期大学教授)がまとめ、5年後に出版されました。

2000年代後半に緘黙の本の出版ラッシュが始まるまでの10数年間、緘黙の専門書といえばこの1冊でした。版を重ねた同書によると、「類書がない」という声もあったようです(本当は類書として山本教授の著書もあったのですが、メジャーな流通に乗っていなかったためか、知らない方もいらっしゃるようでした)。

なお、近年出版される国内の緘黙の本は、海外の専門家が書いた本を翻訳したものであったり、家族や経験者などが書いたものに専門家が解説を加えたり監修したりといったものが多いです。国内の専門家のみの手による緘黙の本は、この『場面緘黙児の心理と指導』以来いまだに出ていません。

補遺2・日本では、緘黙の研究は1950年代から初まる


緘黙の研究そのものは、日本では1950年代に始まっています。古くは、1904年に北澤大吉による「教場唖」の児童の報告例があるのですが、1951年の高木四郎「口をきかない子供」から研究が始まったと見てよいのではないかと思います。

詳しくは、ブログカテゴリ「緘黙症研究の歴史(和)」をご覧ください。

◇ 緘黙症研究の歴史(和) (新しいウィンドウで開く


『朝日新聞』の情報は、ある個人の方のブログからのものですが、しばらく更新が止まっているブログなので、ここでご紹介してよいのかどうか迷います。