続・トラウマで話せなくなった子は、場面緘黙児ではない!?

2006年07月24日(月曜日)

前回の「トラウマで話せなくなった子は、場面緘黙児ではない!?」ですが、記事の内容についてある方からいろいろご指摘を受けました。私が書いた記事で誤解を広めるようなことはできるだけしたくないので、補論のようなかたちでお話しておきます。

■ PTSD?

トラウマの直後に話さなくなったという、reactive mutism や traumatic mutism は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)ではないかというご指摘をいただきました。

PTSDの症状で話せなくなることがあるかどうかについては、私は確認はとれていませんが、私よりも心理学にずっとお詳しい方のご指摘です。

■ 場面緘黙症の原因はトラウマではないが…

拙サイトで配布している資料にもあるように、場面緘黙症の「原因」がトラウマであるという証拠はなく、学界では否定的に見られています。ただし、これもご指摘をいただいたのですが、ここで言う「原因」というのは、トラウマという「原因」があると、必ず場面緘黙症という「結果」が起るという、そういう因果関係のことだそうです。

一方、「原因」とは別に、「リスク要因」として、トラウマが場面緘黙症の発症に影響することがある、と考えることはできるそうです。ただ、トラウマを経験した場面緘黙児は、場面緘黙ではない子どもに比べて特別多いわけではないことが研究の結果明らかになっています。このあたりのことは、後ほど、また書きたいと思っています。

■ passive-aggressive mutism

前回の記事で、私は、トリイ・ヘイデンによる場面緘黙児の4分類を紹介し、その中の一つ「消極的-積極的緘黙」(passive-aggressive mutism)という、敵意を示すために緘黙になるタイプについて触れました。

この passive-aggressive の訳ですが、「受動的攻撃性」が正しいというご指摘を受けました。となると、訳は「消極的-積極的緘黙」ではなく「受動的攻撃性緘黙」でしょうか。

ヘイデンによって受動的攻撃性緘黙と名づけられた子どもたちは、「しばしば反社会的な行動、ときに驚くほど暴力的な行動をとる」と、論文にあります。こうした子どもは、一見単なる反抗的な子どものように思えます。私もヘイデンの論文を読んだ当初はそう思っていました。

しかし、これもご指摘を受けたのですが、拙サイトで配布している資料には次のような記述があります。

「SMartセンターの研究から、性質的に『反抗的』に見える子どもは、何ヶ月もおそらく何年も、親/教師/治療専門家から話すように『プレッシャーをかけられた』場合であることがわかってきました。これらの子ども達は、緘黙が長引くだけでなく、逆に強化されてしまったのです。これらの子ども達は、欲求不満と、自分の緘黙を『理解』できないこと、そして話をさせようとする他者からのプレッシャーが組み合わさって、反抗的行動をとるようになっていったのではないかと考えられます」

反抗的に見える場面緘黙児には、こういう事情があったのですね。緘黙症でストレスがたまっているところにプレッシャーをかけられたりすると、暴力をふるうような子どもがいても、不思議ではありません。場面緘黙児が反抗的のように見える行動をとっていた場合、それはその子どもが発するシグナルなのかもしれません。