「私たちのことを、私たち抜きに決めないで」

2016年09月07日(水曜日)


※ 写真は、記事の内容と関係ありません。佐賀県伊万里市のどっちゃん祭りです。

当事者や経験者の声を反映させようという動き


当事者や経験者の声を反映させようという動きが、場面緘黙症関係で小さな広がりを見せています。

この動きが特に活発なのがイギリスです。例えば、イギリスで2014年に出版された Tackling Selective Mutism という本には、10代の緘黙経験者らに行ったアンケート調査が掲載された章があります(Roe, 2014)。経験者らの声から緘黙に迫る研究は緘黙研究史上珍しいのですが、最近では少ないながらも見られるようになってきています。

それから、イギリスでは2016年に、緘黙の経験者ほか様々な人の声を集めた本 Selective Mutism in Our Own Words が出版されています(Forrester ら, 2016)。本の題名を訳すと、「私たち自身の言葉で語る場面緘黙症」といったところでしょうか。

日本にも同じような動きや主張が、若干ですがあります。例えば、緘黙支援と関わりがある群馬大学の久田信行教授と、「かんもくの会」という団体の浜田貴照代表による論考では、当事者の意見を聴くことが重要になってきていると指摘されています(久田ら、2015)。


何がこうした動きの背景か


こうした動きは、一体どういった思想なり何なりを背景としたものでなのでしょうか。

子どもの権利条約第12条と第13条


Tackling Selective Mutism に掲載された10代の緘黙経験者らに行ったアンケート調査では、この研究の根拠として、子どもの権利条約第12条と第13条が挙げられています。

↓ 日本ユニセフ協会ホームページへのリンクです。
※ 子どもの権利条約第9条~第16条 (新しいウィンドウで開く


「私たちのことを、私たち抜きに決めないで」


一方、Selective Mutism in Our Own Words には、そうした根拠についてはっきりとは書かれてありません。ですが、この本の著者が創設、運営する iSpeak という緘黙支援団体のホームページには、「私たちのことを私たち抜きで決めないで」(Nothing about us without us)というスローガンが掲げられています。

iSpeak のホームページによると、自閉症がある成人たちがこのスローガンを使っていて、同様にこれは、緘黙がある人や、他の障害がある人のスローガンにされるべきとあります。なお、「私たちのことを私たち抜きで決めないで」はもともと、アメリカの自立生活運動のスローガンとして世界的に知られるものです。

※ アメリカの自立生活運動について。大正大学を卒業された方の卒業論文。 (新しいウィンドウで開く

日本の久田、浜田両氏の論考でも、当事者の意見を重視する方向への変化はアメリカの自立生活運動から生じたとあり、そのスローガンについても触れられています。



◇ Roe, V. (2014). Silent voices: listening to some young people with selective mutism and their parents. In Smith, R.B. and Sluckin, A. (Ed.), Tackling Selective Mutism: A Guide for Professionals and Parents. [Kindle version]. Retrieved from Amazon.com
◇  Forrester, C, and Sutton, C. (2016). Selective Mutism in Our Own Words: Experiences in Childhood and Adulthood. [Kindle version]. Retrieved from Amazon.com
◇ 久田信行、浜田貴照(2015)「かんもくの会(場面緘黙)」『精神科』26(3)、210-213。