海外の緘黙児?「私の中にドラゴンがいる」

2016年09月14日(水曜日)


見えないドラゴン


私の中にドラゴンがいて、声を出すのを妨げてしまう--

こういう詩が、アメリカの場面緘黙症支援団体 Selective Mutism Group のホームページで公開されています。詩の作者は不詳ですが、緘黙児が書いたものととるのが自然だろうと思います。

↓ その詩です。アメリカの緘黙支援団体 Selective Mutism Group へのリンク。英語。PDF(36.8KB)。
◇ The Invisible Dragon (新しいウィンドウで開く

※ なお、PDFを閲覧するには Acrobat Readerが必要です。Acrobat Readerはこちら (新しいウィンドウで開く)からダウンロードできます。

この詩は、今年7月6日、イギリスのウェストミンスター宮殿(国会議事堂)内で行なわれた緘黙の啓発イベントでも取り上げられたそうです。

↓ そのイベントに共催した、緘黙支援団体 SMIRA ホームページへのリンク。イベントで読み上げられた資料等が公開されています。英語。
◇ Parliament Event (新しいウィンドウで開く

↓ そのイベントの報告をする、ロンドン在住みくさんのブログ。日本語。
◇ 国会議事堂内で場面緘黙の啓発イベント (新しいウィンドウで開く


ユニーク


以下は私の感想ですが、ドラゴンのせいで話せないという感覚はユニークだと思いました。ドラゴンの正体はおそらく、作者を緘黙させる過剰な不安だろうと思います。緘黙経験を共感し合う「緘黙あるある」もいいですが、このようにユニークな感覚に注目することも捨てがたいです。それとも、西洋ではわりとある感覚なのでしょうか?

西洋のドラゴンというと、悪しき存在として描かれることが多いそうです。上の詩のドラゴンも、その描かれようからして魔物扱いです。おそらく詩の作者は、緘黙を負のものと考えているのでしょう。緘黙を必ずしも否定しない立場の方には、違和感を持つ方もいらっしゃるかもしれません。


緘黙の原因を魔物にしてしまう


面白いのは、ドラゴンという自分とは別の存在を作り、それを話せない原因にしていることです。

心理学に「外在化」という言葉があるそうですが、これもそれに入るのかなと思います。私は専門家ではないのでよく分からないのですが、問題行動を魔物にしたり、不安の場合だと具体的に不安に感じることを紙に書き出したりして自分の外に出すと、問題解決に役立つことがあると聞きます。子どもに人気の『妖怪ウォッチ』絡みで取り上げられることもあるテクニックです。


ドラゴンは退治される運命にある


私の単なる思いつきですが、緘黙もドラゴンなどのかたちで外在化すると、克服に役立つ場合もあるかもしれないと思います。

例えば、過剰な不安をドラゴンとして外在化することにより、緘黙を当事者から切り離し、当事者や支援者らが立ち向かうべき相手として対象化できそうです。また、当事者は話せないことで自分を責めてしまうこともあるようですが、話せないのはドラゴンのせいと考えると、自責の念は軽減されるかもしれません。

『ブリタニカ国際大百科事典』によると、西洋のドラゴンは「勇士、騎士などと戦って結局は退治される悪と暗黒の力の形象化と考えられている」そうです。ドラゴンは、最終的には退治される運命なのです。

ただ、ドラゴンというと非常に強そうで、打ち負かすのは簡単ではなさそうです。外在化といっても、あまり強そうな魔物にしてしまうと、克服に逆効果のような気もしないでもありません。スライムとか、もっと弱そうな魔物にすることはできないでしょうか?

ただ、緘黙の克服は簡単ではないのは確かです。ドラゴンという表現はよくできていると、改めて感心します。