緘黙児は何回答える機会を逸している?

2016年12月01日(木曜日)


答えないことが得意になってしまう


13万120回。

場面緘黙症の9歳児が、1年間で学校で質問に答える機会を逸している回数だそうです。アメリカの有力な緘黙専門家 Steven Kurtz 博士による、大雑把な推計です。

博士が実際に観察したところ、1分間に2回とのことでした。それをもとに単純な掛け算で推計したら、そうなるのだそうです。

1分で2回
10分で20回
1日で720回
1年で13万120回

↓ YouTube へのリンクです。
◇ Steven Kurtz 博士の話 (新しいウィンドウで開く

※ なお、この動画は Selective Mutism Learning University (新しいウィンドウで開く)というサイト内の動画として一般公開されているものです。著者は Kurtz Psychology Consulting PC (新しいウィンドウで開く)です。

10万回も繰り返すと、質問に答えないことがいわば得意になってしまうと博士は話しています。これを専門用語で overlearning(過剰学習)と呼ぶそうです。博士はこうした緘黙児のための集中的な行動療法プログラムを開発しました。このプログラムはアメリカで広まりを見せています。

アメリカの小学校のことはよく知りませんが、日本の小学校の場合、さすがに13万120回はないように思います。小学校で過ごす時間の多くは授業で占められています。授業は座学のものが多く、静かに座って先生の話をとりながらノートをとるというスタイルが基本ではないかと思います。

授業で先生に当てられたり、班活動で同級生とコミュニケーションを迫られたり、休み時間に同級生から何かを聞かれたりといった場面で、答える機会を逸するということはあります。ですが、それは1日の中で700回もあったりはしないでしょう。日本では、アメリカほどoverlearning(過剰学習)がひどくはならないのでしょうか。

もっとも、私のこの認識は古いかもしれません。近年の小学校は、コミュニケーションが重視されるようになってきているとも聞き、このあたりもう一つ分からない部分もあります。

付録・小学校の時間割を分析~緘黙児は学校でどう過ごしているか


それにしても、こうして緘黙児が質問に答える機会をどれだけ逸しているかを、具体的な数字で示すアイディアは興味深いです。

そこで、私はそれをヒントに、近年の小学校の標準的な時間割をざっと分析してみることにしました。これによって、緘黙児が小学校でどのような時間の過ごし方をして、その中で発話を逸する機会がどれだけあるのかを把握するための手掛かりが得られるかもしれないと考えたからです。

かなり大雑把なやり方ですが、Google で「"小学校" "時間割"」と検索し、上位表示された小学校のホームページの中から、時間帯を見ていくことにします。

明石市立A小学校平成28年度時間割 (新しいウィンドウで開く


[6時間目まである日の場合]
授業時間:270分(45分×6; 4時間30分)
休み時間:65分(10分休み×3+20分業間休み+15分昼休み; 1時間5分)
給食:40分
朝の会・終わりの会:15分(朝の会5分+終わりの会10分)
読書タイム:10分
掃除:15分
合計:415分(6時間55分)

神栖市立B小学校H27年度時間割 (新しいウィンドウで開く


[5時間目まである日の場合]
授業時間:225分(45分×5; 3時間45分)
休み時間:65分(5分休み×3+20分業間休み+30分昼休み; 1時間5分)
給食:50分
朝の会・帰りの会:30分(朝の会15分+終わりの会15分)
朝のランニングやドリル等:25分
掃除:20分
合計:415分(6時間55分)

[6時間目まである日の場合]
授業時間:270分(45分×6; 4時間30分)
休み時間:70分(5分休み×4+20分業間休み+30分昼休み; 1時間10分)
給食:50分
朝の会・帰りの会:25分(朝の会15分+終わりの会10分)
朝のランニングやドリル等:25分
掃除:20分
合計:460分(7時間40分)

千代田区立C小学校時間割 (新しいウィンドウで開く


↑ PC用ホームページ「学年便り」をご覧ください。

[5時間目まである日の場合]
授業時間:225分(45分×5; 3時間45分)
休み時間:25分(5分休み×2+15分中休み)
給食:45分
下校指導:15分
朝の会:5分
合計:315分(5時間15分)

[6時間目まである日の場合]
授業時間:270分(45分×6; 4時間30分)
休み時間:60分(5分休み×3+25分中休み+20分昼休み; 1時間)
給食:45分
掃除:20分
登校時の集会:20分
朝の会・帰りのふれあいタイム:20分(朝の会5分+ふれあいタイム15分)
合計:435分(7時間15分)

仙台市立D小学校平成28年度時間割 (新しいウィンドウで開く


↑ PDFファイル。55.4KB。

[6時間目まである日の場合]
授業時間:270分(45分×6; 4時間30分)
休み時間:60分(5分休み×3+25分業間休み+20分昼休み; 1時間)
給食:45分
掃除:20分
朝の会・帰りの会:15分(朝の会10分+終わりの会5分)
朝の読書など:10分
合計:420分(7時間0分)

6時間目まで授業がある日だと、学校にいる時間は7時間ほど


これだけ見れば、公立小学校だと、大まかなところを知るには十分だろうと思います。ざっと見たところでは、授業が6時間目まである日だと、学校にいる時間は7時間(420分)ぐらいでしょうか。これに登下校を考慮した時間が、大雑把に言うと、一日のうちに学校関係で緘黙する時間でしょう。

そのうち、授業の時間が4時間30分(270分)を占めます。学校にいる時間が7時間(420分)だとすると、授業時間の割合は64.2%(小数点第2位以下四捨五入)です。

特に緘黙児にとって特に困難となりそうな授業は、どれだけの時間が設けられているのでしょうか。学校教育法施行規則によると、音楽の授業時数は年50~70コマ、外国語活動の時間は35コマ(5~6年生のみ)、音読課題が特に多そうな国語の時間は年175~315コマとあります。

↓ 文部科学省ホームページへのリンク。
◇ 小学校学習指導要領 (新しいウィンドウで開く

1コマは45分ですから、上の数字に45分をかけると、1年間で音楽は2250~3150分、外国語活動は1575分(5~6年生のみ)、国語は7875~14175分という計算になります。年間授業日数をざっと200日とすると、1日平均で音楽は11.25~15.75分、外国語活動は7.875分(5~6年生のみ)、国語は39.375~70.875分という計算になります。

授業以外の時間だと、1日で休み時間が60分程度、給食の時間が約45分程度、掃除の時間が20分程度、朝の会・帰りの会の時間が15~20分程度等々です。

※ もちろん、緘黙は小学生だけの問題ではありませんし、学校以外の場面でも緘黙する場面はあります。