「緘黙」を知っている成人は15%(米国世論調査)

2017年04月27日(木曜日)

アイキャッチ画像。

緘黙がどの程度認知されているか


場面緘黙症がどの程度認知されているかを調べる世論調査がアメリカで行なわれ、その結果が26日公表されました。私が知る限りこうした調査は過去に例が無く、もしかすると、世界初かもしれません。

↓ その世論調査。ハリス世論調査ホームページへのリンクです。
◇ Less Than 1 In 5 Adults Have Ever Heard Of Selective Mutism (新しいウィンドウで開く


調査の概要


この世論調査は、ギャラップ社と並んで有名なアメリカの世論調査会社ハリスと、アメリカを代表する緘黙支援団体 Selective Mutism Association(Selective Mutism Group から改称)が共同で行なったものです。

調査期間は2017年1月24日から26日、英語でのオンライン調査というかたちをとっています。調査対象は18歳以上のアメリカの成人で、ハリス世論調査への参加に同意した者の中からランダムで選ばれています。回答者数は2,204名。データには、成人人口の構成を反映するよう重み付けがなされています。

この結果、様々なことが明らかになっています。その主なものを挙げると、次の通りです。

○ 場面緘黙症(選択性緘黙;英語では selective mutism)を知っていると回答した成人は15%
○ 緘黙児者を個人的に知っていると回答した成人は17%
○ その緘黙児者を個人的に知る成人のうち、場面緘黙症を知っていると回答した人は32%

なお、ここで言う緘黙児者とは、「他の社会環境(例えば家庭で家族と一緒の場面)で楽に話せるにもかかわらず、一つ以上の社会環境(例えば学校、公共の場、大人と一緒の場面)で話すことができない子どもや若者」のことです。(a child or adolescent who is unable to speak in one or more social settings (e.g., at school,in public places, with adults) despite being able to speak comfortably in other settings (e.g., at home with family)DSM-5などの診断基準とは、厳密には異なります。

上のハリス社のホームページは今回の調査結果について、「緘黙の認知度は、特定の社会環境で話せない子どもや10代の若者を個人的に知る人の間でさえ低い」(Awareness of selective mutism is low even among those who personally know a child or teen unable to speak in certain social settings)などといった書き方で、緘黙の認知度は低いと評価しています。


思うところ


私は専門家ではないので難しいことは分からないのですが、今回の調査について思うところを書こうと思います。

緘黙の認知度を定量的に把握


緘黙というと「認知が進んでいない」という声がよく聞かれます。そのほとんどが実感に基づく話で、統計的な裏づけがあるわけではありません。そもそも認知度の調査がほぼ行なわれておらず、限られた地域の教員を対象としたものなどが少数あった程度ではないかと思います。

今回の調査は、全国的にどの程度緘黙が知られているのか(あるいは、知られていないのか)を定量的に把握する、私が知る限り初の試みです。年齢層や性別など、社会的属性別の認知度も明らかにされています。調査にあたっては、偏りを抑えるよう意識されています。

私がアメリカの緘黙情報に日々接した実感では、アメリカでは、日本の一部で言われるほど緘黙の認知が進んでいる印象はありません。日本の状況とさほど大きな差はないのではないかと感じています。大手メディアが緘黙を取り上げたとしても、散発的です。今回の調査については、意外に緘黙が知られているというのが率直な感想です。ですが、ハリス社のホームページにもある通り、これでもなお緘黙は十分に認知されていないと考えるべきでしょう。

なお、検索エンジンで「認知度 15%」と検索したところ、「ご縁の国しまね」プロモーションの首都圏における認知度が15.3%という検索結果が出ました(2016年9月の調査時点;日本の話ですけれども)。アメリカで場面緘黙症を知る成人の割合はこれと同程度と考えると分かりやすいでしょう。

↓ 島根県ホームページへのリンクです。PDF。154KB。
◇ 「観光認知度調査」(平成28年度第1回)について (新しいウィンドウで開く


都市部に、緘黙児者を個人的に知る人が多い?


調査結果について、1つ気になった箇所があります。緘黙児者を個人的に知っていると回答した成人が住む地域の都会度(urbanicity)を尋ねたところ、都会と答えた人が138名で23%(n=588)、都市近郊と答えた人が175名で15%(n=1,155)、地方と答えた者が64名で14%(n=461)だったそうです(9ページ)。

都会と答えた人の割合が妙に多いです。都市部には、緘黙児者が多いのでしょうか。それとも、都市部では、緘黙児者がより多くの人と関わることが多いのでしょうか。ただ、これが統計的に意味のある差かどうかは私には判断できません。


日本は何%?「仰天ニュース」で瞬間的に10%はあった?


高望みかもしれませんが、日本でもこうした調査が行なわれるとよいです。緘黙が知られていないとか、最近知られるようになったといった私たちの話はほとんど実感にのみ基づいたもので、限界があります。

それにしても、日本における認知度はどの程度なのでしょう。先月緘黙を扱ったテレビ番組「ザ!世界仰天ニュース」は、視聴率を手がかりにすると、大雑把ですが10%ほどの国民が見ていたかもしれません。とすると、あの放送があった瞬間には、緘黙の認知度は少なくとも10%はあったと思われます。もっとも、その後視聴者が番組内容を忘れてしまい、認知度は下がっているかもしれません。アメリカが15%だとしたら、どうなのでしょう。

※ よく公表されるビデオリサーチ社の視聴率は関東地区の平均世帯視聴率で、全国民の何%が見ていたかまでは分かりません。10%は大雑把な数字です。

[追記(2017年4月28日)]

細かいところを若干修正しています。急いで書いたので粗が……。