緘黙児者の夢

2017年05月21日(日曜日)

アイキャッチ画像。

夢を持つ人、持たざる人


話せない自分の現実を見て、夢ややりたいことについて、考えることを、夢とすることを諦めてしまうかもしれません。ぼんやりと、なんとなく、考えているだけでも当時の私にとっては良かったのかなと今振り返ると思います。なんとなくでもやりたい気持ちが心のどこかにあると、話すということへの原動力になると思うからです。

大橋伸和さんという、北海道にお住まいの場面緘黙症経験者のお話です(場面緘黙シンポジウム, n.d., p. 21)。このお話は、2014年に東京で行なわれた「場面緘黙シンポジウム」の中で寄せられた、就職に関する質問に対する回答の一部です。大橋さんは緘黙をテーマとした講演をよくされており、ご存じの方もいらっしゃるだろうと思います。

私はこのお話を読んで驚きました。大橋さんは緘黙がある間にも夢を持っておられたのだろうか。そうだとしたら、すごいなと。

私は夢を持つことはできませんでした。「自分は価値の無い人間だ。こんな自分が将来ああなりたい、こうなりたいと考えるのは不遜な思い上がりだ」などと考えていたのでした。なんという卑屈な少年だったのでしょう。緘黙の診断は受けていませんが、学校で話せなかった私は、惨めな経験を重ねてきたためか、自尊心が極めて低かったのでした。

また、話せない状態があまりに長く続いたものですから、自分はこのまま一生まともに人と口を利けないまま生きていくことになるだろうと思い込み、そのことを前提とした将来設計を考えたのですが、そうした将来設計が私には描けなかったのでした。

このあたり、大橋さんとひょっとしたら正反対だったのかもしれません。上のお話からは、大橋さんはぼんやりとだったかもしれませんが夢を持っておられて、それが話すことへの原動力になったとも読み取れます。また、緘黙は死ぬまで続くものではなく、いずれは話せるようになる可能性があるとも思っておられたのでしょう(間違っていたらごめんなさい)。


解決志向アプローチ


進路選択の話とは少し違うのですが、以前お話した2016年末出版のイギリスの緘黙治療マニュアル The Selective Mutism Resource Manual(第2版)を読み返していたところ、大橋さんのお話を連想させる箇所がありました。

緘黙児者への治療的介入に先立って、緘黙児者がどういうふうになりたいと考えているのかを質問して動機付けを図る方法や、どういうゴールを持っているのかを質問し、さらにそれを達成可能なゴールに具体化して優先順位付けを図る方法が紹介されているのです(Johnson and Wingtgens, 2016)。

例えば、「ミラクル・クエスチョン」(The miracle question)という質問方法です。もし寝ている間に魔法の妖精が現れて、あなた(緘黙児者)にとって一番いい一日を学校で過ごせるようになったとしたら、そのイメージを絵にして描いてみましょうと促すのです。

この本によると、これは「解決志向療法」(solution-focused therapy)または「解決志向技法」(solution-focused technique)を一部取り入れたものだそうです。私は専門家ではないので分からないのですが、よく「解決志向アプローチ」などと呼ばれるものと似たものでしょうか。

↓ 日本臨床心理士会ホームページによる解説です。
◇ 解決志向アプローチ (新しいウィンドウで開く

上のホームページでは、解決志向アプローチについて次のように書かれてあります。

「何がいけないのだろう?」と考える代わりに「自分が望む未来を手に入れるために、何が必要なのだろう? 何が出来るのだろう? どうやったらできるのだろう?」と考え、一緒に解決を創り上げていきます。

思うに、私は話ができない自分の現状ばかりを考えていました。一方、冒頭の大橋さんのお話からは、大橋さんは夢という将来像を描いていて、それが話すことの原動力になっていたとも解釈できます(間違っていたら、すみません)。大橋さんは解決志向アプローチを意識していたわけではなかったのでしょうが、少し連想させるものがあると感じました。



5月は場面緘黙症啓発月間として、今月、様々な動きがあります。その中の一つに、緘黙の非公式マスコットキャラ「かんもくん」の誕生が挙げられます。これは、オリハラさんが発案し、みこさんがデザインしたものです。何人もの方がかんもくんを描いてネット上に公開しました。Twitter を中心とした動きです。

↓ みこさんが作られた、かんもくんギャラリー。instagram へのリンク。
◇ かんもくん (@kanmokun) • Instagram photos and videos (新しいウィンドウで開く

そこで、私もかんもくんを描いてみました。といっても、私は絵が下手な上に、絵を描くための専用の道具も持っていないので、RPG風の演出をして絵をごまかしています。なお、このゲームは実在しません。


[利用素材]

○ WOLF RPGエディターとその同梱素材 http://www.silversecond.com/WolfRPGEditor/
○ takai さん(音楽の卵) http://ontama-m.com/
○ ぴぽさん(ぴぽや) http://piposozai.blog76.fc2.com/
○ ユーフルカさん(Wingless Seraph) http://wingless-seraph.net/
○ グルさん(敵が仲間を呼ぶコモン)

※ かんもくんは敵ではありません。