ごほうびで行動を変える~正の強化

2006年09月16日(土曜日)

拙サイトで配布中の資料のNo.1で紹介されている場面緘黙症の治療法の一つに「正の強化」があります。資料3(1)の「ごほうびを用いて会話を促す方法」も同じことです。

要するに、褒めたり、ごほうびをあげたりして、行動を変える行動療法の技法です。

例えば、ブログを書いたときに褒められたり「人気blogランキング」のクリック数が増えたりすると、作者は快感を感じて、ブログを書く頻度が上がるとか、そういったことです(※ このブログの更新頻度は、作者の時間制限や優先順位など、さまざまな要因によって左右されます)。

心理学初学者の私が、自身の復習も兼ねてまとめてみます。

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■ オペラント条件づけ

スキナーの心理学―応用行動分析学(ABA)の誕生先日、「系統的脱感作法」のお話の中で「古典的条件付け」(例。パブロフの犬)について触れました。

今回の正の強化の原理は、アメリカの心理学者 B. F. Skinner(1904-1990)が考え出した 「オペラント条件づけ」(Operant Conditioning)と呼ばれるものです。

オペラント条件づけは、「オペラント箱」(Operant Chamber)または「スキナー箱」(Skinner Box)と呼ばれる箱を使ったねずみの実験でよく説明されます。

箱の中に、おなかがすいたねずみを入れます。箱の中にはレバーをつけて、そのレバーを押すとえさが出てくる仕組みにします。すると、ねずみは学習し、同じ実験を繰り返すうちに、レバーを押す回数が増えるということです。

ポイントは、こうした学習は、「レバーを押す」というねずみの自発的な行動の頻度が増加したということです。以前にお話した「古典的条件づけ」は、自発的な行動ではなく、条件反射の学習だったわけです。

■ 正の強化

このように、えさやごほうび、報酬によって行動が強化されることを、「正の強化」(Positive Reinforcement)といいます。

正の強化にはタイミングが重要になります。えさやごほうび、報酬は、行動が起きたすぐ後に与えられなければなりません。行動が起きたずっと後に与えると、違う種類の学習になります。

これとは逆に、行動の回避が強化される「負の強化」(Negative Reinforcement)というものもあります。これについては、別の機会にお話したいと思います。

■ 正の強化は人間の教育にも

正の強化はねずみだけでなく、犬の訓練や人間の教育にも広く用いられています。

例えば、子どもが家のお手伝いをしたときに親が褒めると、お手伝いの回数が増えるといったところです。

そういえば、私が子どもの頃、私がいいことをしても、親がごほうびとして、おもちゃを買ってくれたり、お小遣いを値上げしたりしてくれなかったことを思い出しました。母にその理由を聞いたところ、「そんなことしたら、おもちゃやお金目当てで何かをするようになる」という答えが返ってきました。これって、行動分析学で考えると、どうなんでしょう?

■ 正の強化と場面緘黙症

英語圏の文献を読んでいると、場面緘黙症の治療法の1つに正の強化を挙げているものをわりと見かけます。

拙サイトで配布中の資料No.3(1)「場面緘黙症について(学校提出用)」には、「(12) ごほうびを用いて会話を促す方法」が触れられています。詳しいことをお知りになりたい方は、ぜひご一読をおすすめします。

■ 問題行動を強化しないように

私は子どもの頃、ひどく大人しい性格だったものですが(悪く言えば極度の引っ込み思案)、騒がない私はよく褒められたものです。しかし、今にして思えば、これは私の引っ込み思案な行動を強化するものだったような気もしないまでもありません。

いずれにしても、問題行動を強化しないように注意することも大事です。


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[補論 Thorndike の効果の法則]

オペラント条件づけの先駆けとなった研究に、アメリカの心理学者 E. L. Thorndlike(1874-1949)が行った、猫の試行錯誤に関する研究があります(Thorndlike, 1911)。

猫を箱の中に閉じ込め、箱の外にえさを用意します。留め金やひも、ボタンをいじれば箱の中から出ることができるのですが、猫は最初それに気づかず、えさにさえ気づかずに箱の中で暴れます。

しかし、そのうちに、箱の中から出る方法に気づき、箱から出てえさを食べるようになります。その方法に最初に気づくまではある程度の時間が必要になりますが、その猫に再び同じ実験をすると、2度目以降はだんだんと箱の外に出る時間が短くなります。

このように、ある反応(箱の中から出ること)が、満足(えさ)を伴って起る場合、再び同じような反応が起りやすくなります。Thorndike はこれを「効果の法則」(The Law of Effect)と呼びました。

[関連記事]

◆  負の強化、罰

[注]

◆ Thorndlike, L. E. (1911). Animal Intelligence. In Classics in the History of Psychology Retrieved September 16 , 2006, from
http://psychclassics.yorku.ca/Thorndike/Animal/

[その他参考にしたもの]

◆ Edward Thorndike. (2006, September 10). In Wikipedia, The Free Encyclopedia. Retrieved September 16, 2006, from http://en.wikipedia.org/w/
index.php?title=Edward_Thorndike&oldid=74821678
◆ Hayes, N. (2003). Teach yourself psychology. (3rd ed.). Chicago: McGraw-Hill. 154-155.
◆ Pierce, W. D. & Cheney, D. C. (2003). (3rd ed.). Behavior Analysis and Learning. Mahwah: Lawrence Erlbaum Associates, Inc. 4.