ごほうびのあげ方-部分強化、トークンエコノミー

2006年10月07日(土曜日)

Behavior Management at Home: A Token Economy Program for Children and Teensごほうび、正の強化といろいろ書いてきましたが、配布資料3(1)「場面緘黙症について(学校提出用)」にも記述があるように、場面緘黙児にごほうびをあげるときには注意が必要です。

「ごほうび」と「ものでつる」は違うこと、話すことそのものにごほうびをあげないこと、等々です。

こうした方法を実践するには、専門家の助言を得ることが望ましいです。

さて今回は、ごほうびのあげ方のヒントとして、部分強化やトークンエコノミーのお話をしています。

ごほうびは欠かさずあげる必要は必ずしもないことと、ごほうびになる代用貨幣についてです。特にトークンエコノミーは、場面緘黙症のセラピーに実際に使われています。

私は心理学初学者なので、私が発信する情報は鵜呑みにしないで、Wikipedia や2ちゃんねるでも見るような感覚でお読みください。

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■ 毎回ごほうびをあげなくてもいい

◇ 連続強化と部分強化

実はごほうびは、必ずしも毎回あげる必要はありません。

行動が起きた直後に必ずごほうびをあげるような強化のことを「連続強化」(continuous reinforcement)といいます。

これに対して、ときどきしかごほうびをあげないような強化のことを「部分強化」(partial reinforcement)または「間欠強化」(intermittent reinforcement)といいます。

例えば、ギャンブルがその具体例としてよく挙げられます。ギャンブルで毎回もうかる(連続強化)人はそういません。大抵の人は、たまにもうかるだけです(部分強化)。しかし、そのたまの報酬のために、多くの人は長時間にわたってギャンブルを続けるわけです。

面白いことに、部分強化の方が、一般に効果が持続しやすいと考えられています。

◇ 場面緘黙症の強化スケジュールは?

場面緘黙児には連続強化がいいのか、部分強化がいいのか。部分強化を採用するなら、いつごほうびが与えられるのがよいのか。

こういう、場面緘黙症のセラピーのための「強化スケジュール」(Schedule of reinforcement)の組み方については、私もよく分かりません。場面緘黙症と強化に関する研究は昔から海外で割とあるのですが、私のような身分では、なかなか文献を入手できません。

お馴染み、Helping Your Child With Selective Mutism では、「ほとんどの場合、小さくて、シンプルで、頻度の多いごほうびの方が、大きくて頻度の少ないそれよりもよく効く傾向がある」としています(Mcholm et al., 2005)(In most cases, small simple, and frequent rewards tend to work better than bigger, less frequent ones)。書物を読んでいるだけの私としては、ときどきごほうびをあげない部分強化の方が効果的ではないかと思うのですが、行動療法を実践されている方は、上のような考えです。

■ トークンエコノミー

◇ トークンエコノミーって何なの

トークン(token)は、代用貨幣とも言われます。具体的にはポイントやスタンプなど、さまざまです。アメリカの本を読んでいますと、ポーカーのチップを具体例に挙げているものもありますが、あまり日本向けではないような気がします。

トークンエコノミー(token economy)では、目的とする行動が起れば、トークンが与えられます。例えば、子どものお手伝いの時間を増やしたいのであれば、子どもがお手伝いをすると、用意したシートにポイントとしてシールを貼るなどします。

こうしたトークンがたまるだけでも、貰う方にとっては嬉しいものです。これに加えて、一定量のトークンがたまると物と交換できるとか、いつもはテレビゲーム週1時間という制限があるけれどもトークンがたまればもう1時間していいとか、こういった特典が与えられることもあります。

これにより、行動が強化されます。その効果は大きいそうです。

そういえば、私たちも、お店で買い物をするとポイントカードにスタンプを押してもらえることがありますが、これもトークンエコノミーで購買行動を強化されているのでしょうか。

◇ トークンエコノミーと場面緘黙症

トークンエコノミーは、場面緘黙症のセラピーで用いられる方法の1つです。

お馴染み、Helping Your Child With Selective Mutism には、「子どもが目的の行動を起こすたびに星やステッカーをグラフに置くといった、視覚的または目に見えるやる気システム」(a visual or tangible incentive system, placing a star or sticker on the chart every time the child engages in the target behavior)として紹介されています(Mcholm et al., 2005)。また、Elisa Shipon-Blum 氏も執筆に参加した、アメリカの小児科学の雑誌にも、場面緘黙児の治療法の1つとして紹介されています(Schwartz & Shipon-Blum, 2005)。拙サイトで配布中の資料3(1)「場面緘黙症について(学校提出用)」にも「ごほうびの与え方」の中で説明があります。

特に、 Selective Mutism Help というサイトでは、トークンエコノミーを使った場面緘黙児のセラピーについて、実践的な方法が平易な英語で解説されており、英語が得意な方にはおすすめです。

http://www.geocities.com/selectivemutismhelp/therapy.html

とはいえ、こうした方法は幼稚園児や小学生あたりには面白いかもしれませんが、高校生やいい年した大人には使いにくいんじゃないかなどと、素朴に思います。もっとも、緘黙症の治療方法は他にも様々ですし、トークンエコノミーに限らず、その人にあった治療法の組み合わせを考えればよいのでしょう。


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[関連記事]

◇ ごほうびで行動を変える~正の強化
◇ シェイピング(行動形成)-場面緘黙症の段階的な克服

[注]

◇ Mcholm, E. A., Cunningham, E. C., & Vanier, K. M. (2005). Helping Your Child With Selective Mutism. Oakland: New Harbinger Publications, Inc. 146-149.
◇ Schwartz, H. R., & Shipon-Blum, E. (2005). "Shy" child? Don't overlook selective mutism. Contemporary Pediatrics. Retrieved , October 6, 2006, from
http://www.contemporarypediatrics.com/
contpeds/article/articleDetail.jsp?id=170282&pageID=4

[その他参考にしたもの]

◇ Collins, M. M., Fontenelle, H. D., & Murdock, Y. J. (2000). Changing student behaviors: A positive approach. Gretna: Wellness Institute. 71-73.
◇ Flora, R. S. (2004). The power of reinforcement. State University of New York Press. 255-258.
◇ Hayes, N. (2003). Teach yourself psychology. (3rd ed.). Chicago: McGraw-Hill. 154-156.
◇ Lavay, W. D., French, R., & Henderson, L. H. (2005). Positive behavior management in physical activity settings. (2nd ed.). Human Kinetics Publishers. 82-83.
◇ National Research Council (1999). Pathological Gambling: A Critical Review. National Academies Press. 39.
◇ O'Donohue, T. W., & Ferguson, E. K. (2001). The psychology of B.F. Skinner. Thousand Oaks: Sage Pubns. 98-99.
◇ Parker, J. S., Zuckerman, S. B., & Augustyn, C. M. (2005). Developmental and behavioral pediatrics: A handbook for primary care. (2nd ed.). Philadelphia: Lippincott Williams & Wilkins. 56-57.
◇ Pear, S. (2001). The science of learning. Philadelphia: Psychology Press. 63-66.
◇ 杉山尚子『行動分析学入門』集英社新書、2005年、129-135ページ。
◇ SMJ翻訳チーム「場面緘黙症について~学校提出用~」2006年9月8日。最終アクセス2006年10月7日。
http://nhjournal.kurushiunai.jp/2006_09_08_n03_01.htm