場面緘黙症の発症率は?(1)

2006年02月18日(土曜日)

「緘黙症を発症する確立については諸説がありますが、少なくとも1%未満だろうと考えられています。」

(拙ブログ「そもそも『緘黙症』って何ぞや」より)

私は、場面緘黙症はきわめて稀な情緒障害なのだと信じていました。1994年に発表された、アメリカ精神医学会による『精神障害の診断と統計の手引き』Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders の第4版も、発症率は1%より少ないとしています。

しかし、それを覆す研究結果も出ています。先日お話しました Helping Your Child With Selective Mutism: Practical Steps to Overcome a Fear of Speaking には、場面緘黙症は、子供の2%が発症するという研究結果が紹介されているのです。

いったい場面緘黙症の発症率は何%なのでしょうか?

■ 0.18%説
■ 0.2%説
■ 0.5%説
■ 0.7%説
■ 2%以上説
■ その他の説

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■ 0.18%説

出典は、Kopp S, Gillberg C. Selective mutism: A population-based study: A research note. Journal of Child Psychology and Psychiatry. 1997 です。

スウェーデンの大学の研究グループによるものです。10,000万人に18人と、物凄い低発症率ですが、それでも「場面緘黙症は、以前の研究で示されたものよりも、より一般的なものであった」(Selective mutism was more common than suggested by earlier studies.) と要約で結論づけられています。以前の研究では、もっと低確率と考えられていたのでしょうか?

なお、この論文に対する被引用回数を Google Scholar で調べたところ、16件でした。

■ 0.2%説

出典は、Brown J, Lloyd H. A controlled study of children not speaking in school. Journal of the Association of Workers for Maladjusted Children. 1975 です。

30年以上前の研究なので、ちょっと古いかもしれません。Google Scholar が示す論文の被引用回数は0件です。

■ 0.5%説

出典は、Steinhausen H, Juzi C. Elective mutism: An analysis of 100 cases. Journal of the American Academy of Child & Adolescent Psychiatry. 1996 です。

スイスとドイツの研究です。論文そのものは、100人の場面緘黙児を臨床的に分析したものです。Google Scholar が示す論文の被引用回数は25件です。

■ 0.7%説(厳密には0.71%)

出典は、Bergman RL, Piacentini J, McCracken JT. Prevalence and description of selective mutism in a school-based sample. Journal of the American Academy of Child & Adolescent Psychiatry. 2002.です。

アメリカの大学の研究グループによるもので、比較的新しい説です。幼稚園~小学1、2年生を対象にした調査です。Google Scholar が示す論文の被引用回数は10件ですが、この0.7%という説は結構人気があります。2006年1月29日に TIME に掲載された記事 "Why Abby Won't Talk" のほか、2005年4月12日の The New York Times に掲載された記事 "The Child Who Would Not Speak a Word"、さらにWikipediaの "Selective mutism" の記事も、0.7%説を取り上げています。

話がずれますが、あの TIME に場面緘黙症の記事が掲載されたとは、驚きです。私のPCが壊れている間に、こんなことが起こるとは。油断がなりません。日本のマスコミも、もっと緘黙症を取り上げてほしいです。

■ 2%以上説

出典は、Kumpulainen K, Rasanen E, Raaska H, Somppi V. Selective mutism among second-graders in elementary school. European Journal of Child and Adolescent Psychiatry, . 1998.です。

こちらは、フィンランドの研究グループによるものです。小学2年生を対象にした調査です。Google Scholar が示す論文の被引用回数は9件です。

「1%より少ない」とする記述が多い中、目を引く研究結果です。もし場面緘黙児の発症率が2%以上であれば、40人学級にほぼ1人の計算になり、場面緘黙症はそれほど稀な情緒障害ではないことになります。しかも、小学2年生を対象にした調査ですから、例えば幼稚園の時に緘黙児だったけれども小学校に入って治ったという例は、この数字の中には含まれていません。

■ その他の説

このほか、詳細は分かりませんが、0.06%、0.08%、さらに0.89%とかいう説も聞いたことがあります。

(つづく)

[続きの記事]

★ 場面緘黙症の発症率は?(2)

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FC2ブログの「心と身体」カテゴリに、「緘黙症」ができたんですね。嬉しいです。早速使わせてもらいました。なお、FC2ブログには「育児」カテゴリにも「緘黙児」があります。


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