場面緘黙症は自力で治せる?-自己強化

2007年02月17日(土曜日)

場面緘黙症を自力で治す方法はないものか-場面緘黙症を経験した人なら、こう考えたことのある人は少なくないでしょう。私もその例外ではありません。

私は自力で治す方法を探そうと、英語圏やドイツ語圏のサイトまで見て回りました。しかし、その方法は見つかりませんでした。見つかった情報はといえば、専門家による治療法、教師はどのような指導をするべきか、そして保護者の適切な対応、そうしたものばかりでした。

どうして、自力で治す方法が見つからないのでしょうか。場面緘黙児は年齢層が低く、自力で治す情報を提供するのは意義を見出しにくいからでしょうか。それとも、そもそも不安障害を専門家に頼らず自力で治そうという考え自体が間違いなのでしょうか。

そうした疑問を感じていたところ、場面緘黙症の自力治療に役立つかもしれない心理学の理論を発見しました。

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■ 自己強化

それは、行動療法の「自己強化」です。なんてことはありません、要するに行動療法を自分自身の手で実践しましょうということのようです。

ポイントは、次の3つです。

○ 目標となる行動を設定する。目標は段階的に。

○ 自分で自分の行動を観察する。

○ 目標を達成したり、達成に前進するような行動を起こしたら、その直後に自分で自分にごほうびを与える。

小さい子どもには、難しそうですね…。

もしかすると、「自己強化」なんて専門用語は知らなくても、もう既に実践しているよ!という方もいらっしゃるかもしれません。そうした方は、現在ご自身がなさっていることには理論的な根拠があるのだ、と納得していただければよいと思います。

■ 注意点

◇ 発語を目標にすると…

目標の設定には、注意が必要です。行動療法を用いた場面緘黙症の治療には、発語を目標にするべきではなく、むしろ学校などの特定場面で不安を感じないようにすることに目標を置くべきだと考えられています。なぜならば、発語を目標にすると、子どもはかえって不安が強くなってしまうからです。自己強化の目標の設定でも、そのことを考慮した方がよいでしょう。

◇ 自己強化が効果があるという根拠が乏しい

場面緘黙症と自己強化に関する研究は、ほとんどといっていいほど、なされていません。自己強化が場面緘黙症の克服に効果があるかどうかは、私には分かりません。方法を間違えると、治そうということに対するプレッシャーでかえって不安が強くなり、緘黙症状が悪化するような事態も考えられます。現時点では、やはり専門家に診てもらう方が無難なのでしょうか。

■ 終わりに

今回の記事は、場面緘黙症やその後遺症に悩む人でも、自分で克服したいと強く願っている人を対象にまとめました。

なにやら、「場面緘黙症は自力でも克服できるかもしれないんだ!だからみんな、治せ!」とプレッシャーをかけているとも誤解されかねない内容ですので、その点お断りしておきます。余計なプレッシャーがあると、緘黙症状がかえって悪化しそうな気もします。この手の記事のまとめ方は難しいです。何かのヒントになればと思います。

自己強化は、ダイエットにも使えそうな方法です。もっとも、ごほうびに甘いものを食べたりなんかしたらリバウンドしてしまいそうです。私などは食べても太らない体質なので、人から羨ましがられます。

若侍心理学勉強中の富条でした。人気blogランキングに参加しています。応援クリックよろしくお願いします。
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■ おまけ

場面緘黙症に関する論文で、自己強化に関するものに以下のものがあります。

Kehle, T.J., Madaus, M.R., Baratta, V.S., and Bray, M.A. (1998). Augmented self-modeling as a treatment for children with selective mutism, Journal of School Psychology, 36(3), 247-260.

といっても、Abstract(要約)だけしか読んでいないのでよく分からないのですが。Abstract には self-reinforcement(自己強化)の文字がありますが、自己強化の他にもセルフモデリングや抗うつ剤などを複合的に用いた治療を報告しているようです。

[続編]

◇ 続・場面緘黙症は自力で治せる?-自己統制の理論

[関連記事]

◇ ごほうびで行動を変える~正の強化
◇ シェイピング(行動形成)-場面緘黙症の段階的な克服
◇ ごほうびのあげ方-部分強化、トークンエコノミー

[参考にしたもの]

◇ Coon, D. (2005). Psychology: A modular approach to mind and behavior. (3rd ed.). Belmont: Wadsworth Publishing. 429.
◇ Mcholm, E. A., Cunningham, E. C., & Vanier, K. M. (2005). Helping Your Child With Selective Mutism. Oakland: New Harbinger Publications, Inc.
◇ Linda, A., LeBlanc, L.L. and Carpenter, M. (2000). Behavioral treatment. In Hersen, M., and Ammerman, T.R. (Eds.). Advanced abnormal child psychology. (3rd ed.). (pp. 197-218). MahWah: Lawrence Erlbaum Associates.
◇ Polsglove, L. and Smith, W.S. (2004). Informed practice in teaching self-control to children with emotional and behavioral disorders. In Rutherford, B, R, Jr., Quinn, M, M., and Mathur, R, S. (Eds.). Handbook of research in emotional and behavioral disorders. (pp. 399-425). NewYork: The Guilford Press.