続・場面緘黙症は自力で治せる?-自己統制の理論

2007年02月24日(土曜日)

Handbook of Cognitive-Behavioral Therapies心理学まだまだ初学者の富条です。場面緘黙症を自力で治す方法がないか模索中です。

前回ご好評をいただいた「場面緘黙症は自力で治せる?-自己強化」ですが、書き足したい内容があるので、続編というかたちでまとめます。

今回はちょっと応用編で、前回よりも内容が高度になっています(たぶん)。前回と内容がかぶるので、あまりコメントをいただけないのではないかと心配ですが、構わず続けます。

[前回の復習]

○ 目標となる行動を設定する。目標は段階的に。

○ 自分で自分の行動を観察する。

○ 目標を達成したり、達成に前進するような行動を起こしたら、その直後に自分で自分にごほうびを与える。

これで、もしかしたら、場面緘黙症を自力で治せる?…いや、でも治ったという研究報告がないし…というお話でした。

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■ 自己統制(self-control)の理論

前回は、自己強化で場面緘黙症を治すというお話でしたが、もう少し広く言えば、自己強化というよりはむしろ、自己統制で治すということになります。自己統制は、セルフコントロールとも呼ばれます。

自己統制と言っても、必ずしも自分一人の力で行うものではありません。専門家や教師の指導のもとで行われることも少なくありません。

自己統制には、自己監視、自己評価、自己強化の3つの過程があります。

◇ 自己監視(self-monitoring)

セルフモニタリングとも言います。まずは自分で自分の行動を客観的に観察することから始まります。

心理学関係の本ではよく、記録をつけるという方法が紹介されます。例えば減量を目標とする人なら、今日の食事は何カロリーだったとか、何キロ痩せたとか、そうしたことを逐一記録するわけです。

認知行動療法では、不安が強い人にこの方法が用いられることがあるそうですが、詳しいことはまだ私には分かりません。今後の課題にしておきます。

◇ 自己評価(self-evaluation)

自己監視の結果、自分の行動の結果が分かりました。次に、それが目標となる基準と合うかどうかを評価します(つまり、予め基準を設定しておく必要があります、それも客観的な)。減量なら、例えば目標とする1日のカロリー摂取量を予め基準に置いておいて、それが達成されたかどうかを評価します。

場面緘黙症の人の場合、自分のことはどうしても過小評価してしまいがちになり、客観的な自己評価ができないかもしれません。

ただ、自分の行動の結果を客観的に評価できる確かな方法がある場合、それがかえっていいのかもしれません。客観的評価により、自分の評価に偏りがあるということに自分自身が気づくということです。なんだか認知心理学っぽい話ですが。

◇ 自己強化(self-reinforcement)

自己評価の結果、基準に達していれば、自分で自分にごほうびをあげます。減量なら、目標となるカロリー摂取量や体重を達成できたら、ごほうびとしてケーキを腹いっぱい食べるとかそういったところです(あっ、そんなことしたら、また太るか…)。

ごほうびには、有形のものと無形のものがあり得ます。Mace と Shea は、前者の具体例として、「モノ、特典、何かと交換可能なポイント」(material goods, privileges, or points exchangeable for back-up reinforcers)を挙げ、後者の具体例として、「ポジティブな認知や感覚」(positive cognitions or feelings)を挙げています(Mace and Shea, 1990)。前者はいかにも行動分析!という例ですが、後者は認知心理学的な例ではないでしょうか。

後者の「ポジティブな認知や感覚」についてお話ししますと、具体的には「自己効力感」が得られるということではないかと思います(間違っていたらごめんなさい)。目標を達成したことにより、「自分は、やればできる」という感覚が得られるわけで、これも一つのごほうびということです。場面緘黙症の人には、こうした感覚を持たせることは大事ですね。ただ、成功すれば自己効力感が増えていいでしょうが、失敗続きだと、その人の自己効力感はいったいどうなってしまうのだろうかと心配になります。無力感にでも陥ってしまうのでしょうか(学習性無力感)。

このあたりは、認知心理学の「帰属理論」も関係していそうです。達成した結果の原因を内的なもの(自分の努力など)に帰属させるか、外的なもの(環境、他人など)に帰属させるかといった問題です。自分の努力の結果、目標が達成できたと考えることができたら、やる気が高まります。帰属理論についてのこれ以上の詳しい説明は、ここでは省略。

なお、ごほうびとは逆に、目標に達することができなければ自分で自分を罰するというのも自己強化です。

■ 自己統制を使った例

自己統制は、減量のほかにも、ジョギングや禁煙など、幅広い場面で用いられています。

英語圏の自己統制に関する文献を調べていると、学習障害など、何らかの問題を抱えた生徒に関する本が見つかります。教師が子どもに自己統制の方法を指導するということが実際に行われているようです。

子どもと一口に言っても年齢層が様々ですが、場面緘黙児に最も多いと思われる幼稚園児~小学校低学年の子どもが教師にも親にも専門家にも頼らず、自己統制で場面緘黙症を治すというのは、やっぱり簡単ではないような気もします。指導を受けながら、ということになるのでしょう。一方、一人でネットで情報収集できるような年齢の方の場合は、自分だけの力でも多少はなんとかなるのかもしれません。


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[関連記事]

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◇ ごほうびで行動を変える~正の強化
◇ シェイピング(行動形成)-場面緘黙症の段階的な克服
◇ ごほうびのあげ方-部分強化、トークンエコノミー

[参考にしたもの]

◇ Hayes, N. (2003). Teach yourself psychology. (3rd ed.). Chicago: McGraw-Hill. 92-94.
◇ Linda, A., LeBlanc, L.L. and Carpenter, M. (2000). Behavioral treatment. In Hersen, M., and Ammerman, T.R. (Eds.). Advanced abnormal child psychology. (3rd ed.). (pp. 197-218). MahWah: Lawrence Erlbaum Associates.
◇ Mace and Shea (1990). Behavior-self-management with at-risk children. In Kruger, J.L.(Eds.). Promoting success with at-risk students(pp. 43-64). Haworth Press.
◇ Reid, R. and Lienemann, O.T. (2006). Strategy Instruction for Students with Learning Disabilities. NewYork: The Guilford Press. 71-85.
◇ Rokke, D.P. and Rebm, P.L. (2001). Self-management therapies. In Dobson, S.K.(Eds.). Handbook of cognitive-behavioral therapies (2nd ed.). (pp. 173-210). NewYork: The Guilford Press.