場面緘黙症の日本語文献30本 

海外の物珍しい研究を紹介しようと「場面緘黙症Journal」を始めたわけですが、けっこうな反響をいただきました。今では場面緘黙症の海外の研究成果は、物珍しくも何ともなくなりつつあります。

考えてみれば、この間、我が国における場面緘黙症研究をかなり軽視してきて、これでよかったのだろうかという疑問がふと沸いてきました。

そこで、先日、たまたま、国立情報学研究所が提供する学術論文情報検索サービス「CiNii」をうろちょろしていたところ、同サイトで日本語の緘黙関係文献およそ30本を無料で読むことができることを知りました(今まで利用していて気づかなかった…)。料金を払ったり会員になったりすれば、さらに多くの文献を読むことができます。

私が読むことができたのは、CiNiiでリストされた緘黙関連文献およそ160件のうちのおよそ5分の1にすぎませんでしたが、読んでみると新たな発見もあり、なかなか興味深かったです。

以下では、私が見つけたもののうち、おや、と思ったものをいくつか挙げます。

* * * * * * * * * *

■ 事例研究

◇ 大島昇、北野洋子、形埜まり江、河野健三、福嶋美津子、 山本晃、藤田裕司「養護学校における個別の教育支援(1) : 場面緘黙症の生徒に対して」、『大阪教育大学紀要』第V部門、第54巻、第1号、2005年9月、213 - 223ページ。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110004496868/

◇ 松田美智子「場面緘默児Y・H君が声を出して話せるまでの場面設定の試み : IEPの考え方を取り入れて」、『情緒障害教育研究紀要』、第16号、1997年、111 - 122ページ。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110000411351/

◇ 木場清子「5年間の選択性緘黙から回復した男児のあゆみ」、『臨床心理学の諸領域 : 金沢大学臨床心理学研究室紀要』、第6号、1987年、11 - 21ページ。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110000214870/

緘黙の治療過程について、詳しく書かれた事例研究を挙げました。内容の当否まではあまり見ていません(スミマセン)。

事例研究は、我が国においても多いです。事例研究は具体的な事例についてまとめられてあるので、一見すると分かりやすいです。しかし、治療の事例研究などは、ベースとなる理論がどういうものかを理解していないと分かりにくいです。分かりやすいような、分かりにくいような、事例研究を読んでいると不思議な感覚にとらわれます。

■ 緘黙児は何人に1人?

◇ 長谷川要子、金田利子「幼児の発達と保育 : 場面緘黙児に対する保育サポートの事例分析から」、『日本保育学会大会発表論文抄録』第49号、1996年、188 - 189ページ。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110002926381/

◇ 村本克己「学校における緘黙児の実態調査」、『情緒障害教育研究紀要』、第2号、1983年、77 - 80ページ。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110000411464/en/

緘黙児の出現数、出現率を調査しています。長谷川・金田両氏は静岡で、村本氏は北海道で調査しています。

■ その他面白かったもの

◇ 高木哲也「緘黙児の指導におけるSSTの導入とその成果」、『日本教育心理学会総会発表論文集』第42巻、2000年7月、303ページ。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110001886042/

SST(ソーシャル・スキル・トレーニング)について私はよく分からないので、ここでは深い言及は避けます。ですが、緘黙児にSSTを、という話は私はあまり聞いたことがありませんし、大きな効果もあったそうなので、面白そうだということで取り上げました。SSTを実践して学会に報告した高木氏は、小学校教諭のようです。

◇ 丹治光浩「入院治療を行った選択性緘黙児の長期予後について」、『日本教育心理学会総会発表論文集』第38巻、1996年11月、502ページ。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110001887806/

緘黙症を入院で治すなんて、びっくりです。この文献にも言及があるのですが、入院で緘黙を治すのは稀な場合だと思います。というか、一般的ではないでしょう。海外でも、少なくとも私は聞いたことがありません。

◇ 牧野博己「緘黙の事例研究 : 教育的処遇の手がかりを求めて」、『情緒障害教育研究紀要』第6号、1987年3月、21 - 30ページ。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110000411601/

海外と我が国における緘黙研究の歴史がコンパクトにまとめられている箇所があり、個人的に勉強になりました。「場面緘黙(situational mutism)」という記述を見つけ、とても気になりました。

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コメント

紹介ありがとうございます。

こんなにweb上で読めるんですね。驚きました。
にもかかわらず、コメントがどなたからもなくて、寂しいので少し感想を書きます。
富重さん紹介の上から3つめ木場さんのが、とても希望が持てる内容で興味深かったです。こんなにうまくいくものなのかと不思議なくらいでした。
きっと、この男児がもともと持っているものをうまく引き出せて、そしていろんなことが絡み合っていったんでしょう。
この事例研究を読んで、私の子どもの遊戯療法での変化もいつか知りたいと強く思うようになりました。

ははさん、コメントありがとうございます。

この記事、コメント欄は寂しいことになっていますが、アクセスは結構いただきました。

遊戯療法は言葉が出ない子どもにもできるということで、緘黙の治療によく採用されているのではないかと思います。こうした成功例を知ると、希望が沸いてきますね。

薬物療法、行動療法を使わず、箱庭療法、遊戯療法、家族面接で治療に成功したという点が興味深いです。

海外の治療法から学ぶべき点は多いですが、日本でも独自の治療ノウハウの蓄積があるのであれば、それを生かすという視点も大事にしてもいいのかもしれない、と考え始めています。翻訳チームの方には悪いですが…。

誰に調査するか

村本克己「学校における緘黙児の実態調査」読みました。
調査って誰にとるかって大切ですよね。
河井芳文「場面緘黙児の心理と指導」もそうですが、
「親の養育態度」を担任に答えてもらう形式です。

担任が親を過干渉とみてると、
「親の養育態度は過干渉である」という結果が出るので、
そう取り違えられてしまいます。

でも本当に出た結果は
「担任は、親の養育態度を過干渉と見ている」ということに。

エビデンスって、客観的な気がしてしまいますが、
尺度をつくり、調査し、それを読むのは人間なので、
まどわされないよう注意がいると思います。

けいこさん、コメントありがとうございます。

解説ありがとうございます。

日本語の文献を読んでいると、親の養育態度について触れたものを多く見つけ、これってどうなんだろうと考えていました。

「場面緘黙児の心理と指導」では「評定尺度の多次元解析」などを行っていて、さすが客観的だなあと感じていたのですが、なるほど、注意が必要ですね。

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