場面緘黙症の研究 2007

2007年12月26日(水曜日)

Mut zum Sprechen finden. Therapeutische Wege mit selektiv mutistischen Kindern2007年の国内外の場面緘黙症研究を振り返ります。場面緘黙症研究の最前線をお伝えします。

← 画像は、今年刊行されたドイツの場面緘黙症の本(後述)。

なお、論文・書籍の表記法については「論文・書籍の表記法」(場面緘黙症Journal論文情報)を参照。


■ 論文編

2007年に発表された場面緘黙症の論文ですが、私はせいぜい abstract(要約)程度しか読んでいません(一般人の私が新しい論文を読むのは難しい…)。しかも、私は専門家でもなんでもありません。ですので、書くことが出来る内容は限られてくるのですが、書ける範囲で書いてみます。

◇ 海外の研究

英文雑誌に掲載されたものから一部を取り上げ、コメントを加えます。

Chavira, D.A., Shipon-Blum, E., Hitchcock, C., Cohan, S., Stein, M.B. (2007). Selective mutism and social anxiety disorder: all in the family? Journal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatry, 46(11), 1464-1472.

アメリカの研究です。場面緘黙症児ではなく、その親の研究です。場面緘黙症児の親は、全般性社会恐怖症、回避性人格障害に当てはまる人の割合が一般の親に比べて有意に多いことが分かりました。また、神経症的傾向がある親が多いほか、NEO Personality Inventory という心理尺度(心理検査?12/27加筆)において Openness の点数が低いという結果も出ています。

場面緘黙症児の親が過去に何らかの精神疾患にかかっていたかどうかを調査する試みは、これまでにも行われてきました。しかし、それらは、あくまで子どもの調査をメインにしたもので、親のみに焦点を当てた研究はありませんでした。その点、本論文は珍しいです。

場面緘黙症と家族というと、日本では伝統的に親の養育態度が発症に関係があるのではないかという議論になるのですが、欧米では違います。恐怖症、不安障害との関係を問題にしている点が欧米の研究の特徴です。
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Oerbeck, B., and Kristensen, H. (2007). Attention in selective mutism-An exploratory case-control study. Journal of Anxiety Disorders.

ノルウェーの研究です。場面緘黙症児の注意に関する問題を、Trail Making Test という注意機能検査を用いて、神経心理学的に研究したものです。

場面緘黙症児の注意機能を調査した例は、少なくとも私は聞いたことがありません。

この論文の2人の著者は、2006年にも、場面緘黙症と非言語的認知(記憶範囲、視覚的記憶)、Auditory-verbal memory span(聴覚-視覚的記憶範囲?)に関する研究を発表しており、よく分からないのですが、今回の論文と合わせて場面緘黙症児の認知を研究しているようです。

この論文ですが、掲載雑誌の巻号が分かりませんでした。

Omdal, H. (2007). Including children with selective mutism in mainstream schools and kindergartens: problems and possibilities. International Journal of Inclusive Education,

ノルウェーの研究です。場面緘黙症の子どもを学校や幼稚園に含めることについての研究です。ビデオを用いて、緘黙症児の学校・幼稚園における交流のほか、家庭における交流も観察しています。

独創的な研究だと思います。緘黙症児の交流に着目した論文は、これまであまり見た覚えがありません。また、学校場面だけでなく、症状を現さない家庭場面における交流に着目している点も独創的です。

本論文は、「インクルーシブ教育」に関する学術雑誌に掲載されており、本論文も、その観点から論じられているようです。「インクルーシブ教育」とは、障害を持った子も排除せず、全ての子どもを同じ学級で必要な教育を受けられるようにしようということのようです。

この論文ですが、掲載雑誌の巻号が分かりませんでした。

○ その他

この他、場面緘黙症児の話し言葉、ワーキングメモリ、社会不安に関する研究や、トルコにおける場面緘黙症の出現率、22歳で場面緘黙症と診断されたアメリカ軍のネパール人など、多彩な研究が発表されました。

◇ 日本の研究

高嶋雄介 (2007). 選択性緘黙の子どもとの遊戯療法において身体感覚や身体の在り方に着目する意味. 心理臨床学研究, 25(3), 257-268.

私が探したところ、日本では論文らしい論文は、これしか見つかりませんでした。例年に比べても少なすぎます!私の探し方が足りなかっただけかもしれませんが。

近年、日本の場面緘黙症研究は治療論、事例研究が多く、特に遊戯療法や箱庭療法が多いです。本論文は、日本らしい緘黙症研究論文と言えます。

この他、笠原麻里氏が、『ことばとこころの発達と障害』の中で、場面緘黙症についてまとめています。

■ 書籍編

最後に、2007年に世界各国で新しく出版された場面緘黙症の本をご紹介します。翻訳書は省略(だってあの本、原書は2005年刊行だもん)。

Katz-Bernstein, N., Meili-Schneebeli, E., and Wyler-Sidler, J. (2007). Mut zum Sprechen finden. Therapeutische Wege mit selektiv mutistischen. Kindern. Munich: Reinhardt Ernst.

ドイツの本です。この記事の冒頭でご紹介した、男の子と人形?が表紙の本です。内容ですが、場面緘黙症の治療法に関して書かれているようです。

Rodriguez, O.J., Alcazar, R.A., Olivares, J.P. (2007). Tratamiento psicologico del mutismo selectivo/ Psychological Treatment of the Selective Mutism. Piramide Ediciones Sa.

スペインの本です。場面緘黙症の心理療法に関する本のようです。

Joffe, V. (2007). Sophie's story: A guide to selective mutism. Coral Springs, FL: Vera Joffe.

アメリカの本です。緘黙の子どもに介入を行うための戦略についても書かれてありますが、それは "team approach" をとっているそうです。『場面緘黙児への支援』でいう「支援チーム」(原文は "management team")と似たようなものなのでしょうか。実践的な面もある本のようですが、アメリカらしいです。


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