場面緘黙症を放置していいのか

2006年03月11日(土曜日)

「もっとも、多くの緘黙児は成長とともに症状が消えていくとされており、緘黙児の将来についてはそれほど心配する必要はないのではないか、という意見が多いです」

(拙ブログ「そもそも「緘黙症」って何ぞや」より)

どうもこれは、間違いのようです。英語圏のウェブサイトで色々調べたところ、これは場面緘黙症に関する典型的な誤解の一つとのことでした。訂正しなければなりません。

場面緘黙症は成長とともに自然と治るというものではなく、放置すると成人にまで持ち越す危険性があります。今回は、そんなようなことを書いています。

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■ 放置すれば成人まで持ち越す危険も?

まずは、次のTIMEの文章をご覧ください。2月20日の記事「場面緘黙症を『TIME』が取り上げた!」でお話した、2006年1月29日掲載(電子版)の"Why Abby Won't Talk"からです。

* 以下引用 *

Many doctors either offered parents hopeless-sounding diagnoses, such as autism or mental retardation, or dismissed their concerns as neurotic, telling them that their children would simply grow out of it. That message infuriates specialists like Shipon-Blum, who agrees that children with untreated SM may eventually manage to communicate in social situations but insists that without addressing the precipitating factors behind the mutism, debilitating anxieties are likely to persist into adulthood.

[富氏訳(訳の品質は保証しません)]

多くの医師は患者に対して、自閉症や知的障害精神遅滞のような希望がない治療の見込みがないと思われるような診断をするか、神経症と診断して患者の心配をぬぐい、お子さんはただ成長すれば治りますよと告げるかの、どちらかです。Shipon-Blum氏のような緘黙症の専門家は、その話を聞いて激怒します。Shipon-Blum氏は、治療を受けないまま放置された緘黙児は、結局は社会的な状況で意思疎通を図ることが何とかできるようになるかもしれないと認めてはいます。しかし、緘黙症の背後にある増悪因子(ぞうあくいんし)に対処しないことには、子供たちを弱らせる不安は成人まで続きやすいのだと主張しています。

* 引用終わり *

自閉症や知的障害を「希望がない」(hopeless)なんて言うのは失礼なんじゃないかと思いますが、それはさておき、場面緘黙症は適切な治療がなされないと、成人まで持ち越す危険があることが指摘されています。

※ hopelessは「希望がない」ではなく、「治療の見込みがない」です。また、mental retardation は知的障害ではなく、精神遅滞です。お詫びして訂正致します。(2010年7月6日)

余談ですが、記事の中で登場するShipon-Blumさんという方は、アメリカの緘黙界では結構有名なようで、緘黙関係の著書を3冊も発表されています。できることなら、日本の緘黙界に「移籍」していただきたいです。

Ideal Classroom Setting for the Selectively Mute Child
Understanding Katie a Day in the Life of Elisa Shipon Blum Co
Easing School Jitters for the Selectively Mute Child

■ 放置すれば悪化する?

また、Wikipediaには、次のような記述があります。以下は、Selective mutism, http://en.wikipedia.org/w/index.php?title=Selective_mutism&oldid=41980622 (last visited March 9, 2006).からの引用です。

* 以下引用 *

Contrary to popular belief, people suffering from selective mutism do not necessarily improve with age, or just grow out of it. Consequently, treatment at an early age is important. If not addressed, selective mutism tends to be self-reinforcing, with the person being known as the one who doesn't speak which makes it all the harder to then speak.

[富氏訳(訳の品質は保証しません)]

世間一般の人が考えていることとは反対に、場面緘黙症を患っている人々は、年齢とともに改善したり、ただ単に成長すれば治るとは必ずしも限りません。したがって、より早い年齢での治療が重要になります。もし処置が行われなければ、場面緘黙症は自ずと増幅される傾向にあります。つまり、話をしない人として知られるようになることにより、話をすることがますます難しくなるのです。

* 引用終わり *

こちらも、放っておけば治るという、よくある通念を否定しています。そればかりか、早めに治療をしないと悪化するとまで書かれてあります。この場面緘黙症の説明はWikipedia以外のサイトでもときどき見かけます。

■ 治療を受けていないのに治ったという人も多い

しかし、緘黙サイトを回っていると、ほとんどの元緘黙児は専門家の治療を受けなかったにもかかわらず、成長途上で治ったとする人がほとんどだということに気づかされます。

私自身、年齢とともに場面緘黙症の症状はよくなっていきました。ただ、その速度はカタツムリの歩みのごとく、大変ゆっくりでした。もう緘黙症じゃないな、と思った頃には20歳を過ぎていました。

■ 多くの緘黙児が治った真の原因は別のところにある?

もしかすると、成長とともに緘黙症が治っていったというのは間違いで、緘黙症が治った真の原因は別のところにあったのかもしれません。専門家の治療は受けなかったものの教師の対応がよかったからとか、周りの生徒があまり話すように強制することがなかったからとか。転校や進学をきっかけに治ったという方もいらっしゃいますよね。

いずれにせよ、年齢とともに治るから放っておけばいいと考えるのには、慎重になった方がよさそうです。

■ 高校で治った野ウサギ。さん

拙ブログに相互リンクをしていただいた「緘黙の話」の野ウサギ。さんは、高校で緘黙症がほとんど治ったと話していらっしゃいます。「緘黙の話」は中学生編が終わりに近づき、いよいよ高校生編に入ろうとしています。今後の展開が見逃せません。
http://nonousagi.blog38.fc2.com/blog-entry-50.html

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