緘黙の本、店頭販売に向かない

2008年01月24日(木曜日)

■ 書店の店頭で見かけない緘黙の本

昨年夏ごろ、私の地元に新しくできた大型書店に行ってきました。もしかしたら場面緘黙症の本も置いてあるかもしれないと思い探してみたら、『場面緘黙児の心理と指導』を1冊発見。しかし、当時最新の『場面緘黙児への支援』はありませんでした。今春には『場面緘黙Q&A』という新しい本が出る予定ですが、この本が店頭に並べられることはあるのでしょうか。

このように、緘黙に関する本を店頭で見かけることはほとんどありません。これはなぜなのでしょうか。緘黙の本を出す人が少ないからでしょうか。社会が緘黙を不当に軽視しているからでしょうか。

私は、これは単に緘黙の本はあまり売れないから、需要が少ないからだろうと見ています。

■ 緘黙本の売上は限定的

緘黙の本の売上を知る手がかりの一つに、「Amazon.co.jp ランキング」があります。Amazon.co.jp のそれぞれの本のページに行くと、「Amazon.co.jp ランキング: 本で○△□位」という箇所があります。

それを見ると、緘黙の本はどれもあまり売れていないことが分かります。自閉症の本に比べても明らかです。[注] しかし、これでも緘黙の本は、Amazon.co.jp ランキングでは高めに出ているだろうと私は見ています。なぜならば、緘黙の本は店頭ではなかなか置いておらず、ネット通販で買う人が多いものと考えられるからです。

書店に行くと、自閉症の本はある程度置いてあるのに緘黙の本を見かけることがほとんどないのは、単なる売上の違いによるものではないかと私は思います。本を店頭に置くにも、色々コストがかかります。そうした中、限られた経営資源を有効に活用するには、できるだけ売れ筋商品を置いた方が良いに決まっています。

「パレートの法則」というと、聞いたことがあるという方も多いでしょう。本で言えば、売上の上位20%が、全体の書籍売上の80%を占めているということです。そうなると、売れ筋商品以外は切り捨ててよいと書店経営者なら考えそうです。

■ 緘黙の本は、店頭販売よりもネット通販に向いている

ところで、最近、マーケティングの世界で「ロングテール」という言葉が話題になったのですが、みなさまご存知でしょうか。

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ロングテール―「売れない商品」を宝の山に変える新戦略Amazon.co.jp のようなインターネット上の仮想商店の世界では、あまり売れない商品であっても、そうした商品の売上を大量に集計すれば、その売上高は全体の中では相当な割合を占めているというお話です。「パレートの法則」と対極をなす理論と言えます。

しかし、それならば、一般の書店でも、もっと店頭販売する書籍の種類を増やせばいいのでは、と考える人もいるかもしれません。もっと店舗を拡張して、マイナーな本も含めてたくさんの種類の本を置くのです。マイナーな本でも、ロングテール、つまり塵も積もれば山となるで、売上高を全て集計すると、相当な量になるのではないかということです。

しかし、これには、コストの視点が欠けています。店舗を拡張してさらに多くの種類の本を置けば売上は確かに増えるかもしれませんが、そのために必要な追加的なコストもばかにならず、採算が合わなくなるかもしれません。

これに対し、インターネット上の仮想書店では、店舗拡張のコストは小さく抑えることができ、気にする必要はあまりありません(例えば、ページを増やすだけで販売スペースになります)。売れない本でも、いくらでも置くことができるのです。

緘黙の本は、まさにロングテールです。あまり売れないので店頭販売には向きませんが、ネット通販には向いているのです。

■ もっと緘黙の本が店頭に並んで欲しいと思うのが人情だが…

緘黙に関わる身として、緘黙の本はもっと店頭にたくさん並んで欲しいという願いはあります。

しかし、残念ながら、緘黙の本はあまり売れないのです。営利を追求する書店が、売れない本を並べるのもどうかと思います。

書店の店員さんに「あんた、緘黙の本、もっとたくさん店頭に並べなさい!」と要求するのは、緘黙に関わりのある人の心情としてはもっともですが、書店にとっては迷惑な話です。一般のお客さんにしても、そのようなマイナーな分野の本を優先的に置いてもらいたくはないでしょう。そして、あまり顧客満足をないがしろにする書店は、消費者の選択の結果、淘汰されてしまいます。

ただ、実は緘黙の本に対する潜在的な需要はたくさんいるのに、PR不足のために売れていないというのであれば、話は少し変わってくるかもしれません。

これだけインターネットが普及した世の中なら、店頭になくてもネットで取り扱われていれば、喜んでいいのかな、とも私は思います。ネットの仮想書店のおかげで、緘黙のようなマイナーな本が以前よりもきちんと扱われるようになったのは、我々消費者にとってはありがたいことです。


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[注]

追記です。Amazon.co.jp で「緘黙」「自閉症」等のキーワードを「和書」として検索し、「売れている順番」に並べ替えて比較してみてください。