場面緘黙症の本、種類の少なさ

2008年01月29日(火曜日)

先日、場面緘黙症の本は種類が少なすぎる、等々のコメントをいただきました。

本の種類の多さ少なさについて考えるのは得意ではないのですが、[1] 私なりにいろいろと考えてまとめてみました。

※ ここでは、主に一般向けの本のお話をしています。学術書となると、また話が変わってきます。学術的性格の強い『場面緘黙児の心理と指導』は、ここでは一般向けの本として扱います。研究者以外の一般の人の間でもよく売れているようなので、

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■ 緘黙の本の種類が少ないのも、売れないから?

◇ 需要が少ないから本が出ない?

私は、緘黙の本の種類が少ないのも、本の需要が少ないことが多かれ少なかれ関係しているのではないかと考えています(当たり前と言えば、当たり前ですが)。「緘黙本市場」とでもいいましょうか、その市場の規模が小さく、本があまり売れないのです。このため、採算性の問題から、本を出そうという動きがあまり出てこないのではないかと思うのです。緘黙を取り上げた本を出すとしても、何かの本の章の1つとして緘黙を扱う、というかたちになりやすいものと思います。

◇ 緘黙本への需要は多いのに、供給者側に問題がある場合

しかし、なにしろ富条の言うことですから、予想は外れている可能性もあります。実は緘黙の本に対する需要はとても多いのに、供給者側に何らかの問題があるため(例。研究者がボーッとしている)、本が出版されないのかもしれません。

しかし、もしそうだとしたら、数少ない緘黙の解説書である『場面緘黙児への支援』や『場面緘黙児の心理と指導』などは、とてもたくさん売れているはずです。需要はたくさんあるのに他に買う本がないので、売上がその2冊あたりに集中するのではないかということです。 [2]

◇ 実際に緘黙の本はあまり売れていない?

実際に緘黙の本がどの程度売れているのかを正確に確かめるのは、我々一般人には難しいです。一つの指標として Amazon.co.jp ランキングが挙げられるぐらいです。これは、Amazon.co.jp のページにアクセスできる人なら、誰でも確認することができます。

この Amazon.co.jp ランキングだけで全てを判断するのは無理がありますが、少なくともこれを見る限り、緘黙の本は特に売れているとは思えません。発達障害の本などと比べても明らかです。『場面緘黙児への支援』などは順位の変動が激しいので分かりにくいですが。

もしかすると、緘黙の本も、潜在的な需要はあるのかもしれません。本当は必要としている人は多いのに、緘黙の認知度の低さから売れていないのかもしれません。ですが、少なくとも現時点ではあまり売れていなさそうです。

■ 諸外国との単純比較は No!

以前、諸外国と単純比較して、日本の緘黙の専門書は少なすぎる云々と書いたことがありますが、反省しています(「場面緘黙症の日本の専門書、やはり少なすぎる! 」参照)。日本と諸外国では市場が違い、一概に比較できません。

■ 需要が少ない本は採算が合わない

もし緘黙の本の需要が本当に少ないのなら、本の種類が少ないのも、ある程度は仕方がないことのように思えてきます。需要の少ない分野に山ほど本が出版されるのは、考えものです。本は需要の多い分野にこそ、たくさん出版され、そうでない分野にはそれなりに出版されるのが望ましいでしょう。

ただ、需要の少ない本といっても、ある程度需要はあるわけです。特に、緘黙のような、医療、福祉、教育が関わってくる分野となると、需要がかなり少なくてもそれなりに本が出版されてしかるべきです。しかし、こうした本を出版するのは採算上大変です。一般の売れ筋書籍と同じぐらいの価格設定をしたら赤字は必至ですし、かといって法外な値段をつけるわけにはいきません。

■ 採算が合わない本の費用負担 [3]

それでも採算が合わない本を出版した場合、当然赤字が出ますが、その分は誰かが負担しなければなりません。いったい誰が負担するのでしょうか。

◇ 著者が負担

「自費出版」という分かりやすい言葉がありますが、著者自身が費用(の一部)を負担して出版するケースがあります。

そういえば、岩手大学の山本実氏(故人)は、自費出版で緘黙の本を出版されたのでした(「もう一人の緘黙研究者」参照)。これも、採算が合わないので自費出版というかたちがとられたのかもしれませんが、定かではありません。ほかにも、著者本人が自腹を切って出版した緘黙の本は、探せばあるかもしれません。

◇ 出版助成制度

あまり売上は見込めないながらも社会的価値が認められる本を出版するために、出版助成制度があります。

文部科学省、日本学術振興会による、科研費(科学研究費補助金)や大学、民間の財団による出版助成制度があります。ただ、これはだいたい学術書を対象にしているようです。

■ むすび

緘黙の本の種類が少ないのは、需要が少ないこと、売れないことが多かれ少なかれ関係しているのではないかと思います。売れない本は、採算性が悪く、出版が大変です。しかし、こうした本でも、著者自身が費用を負担するなどして、出版にこぎつけることがあるのでしょう。

私は本を出版したことがないので出版事情は詳しくありません。間違いがあったらごめんなさいね。m(_ _)m


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[1] 私が学んだ範囲の経済学では、財は同質であることを前提に議論されることが多いです。このため、本の種類が多い少ないといったお話はどうも苦手です。もちろん、財が同質でない市場(不完全市場)も経済学ではちゃんと扱います。

[2] 少し前までは、体験記などを別にすると、緘黙を専門的に取り扱った解説書は、事実上『場面緘黙児の心理と指導』1冊しかありませんでした。もし、緘黙本に対する需要が十分にあるのに、研究者がボーッとしているなど供給側の問題によって本が出ていなかったのだとしたら、どうでしょうか。需要は『場面緘黙児の心理と指導』に集中し、この本は相当な売上を記録していたはずです。

[3] そもそも日本の書籍市場では、需要が少ない本でも、採算性の問題から出版できないということがないように、再販制という保護制度があります。