場面緘黙症は「ちょっとした内気」「ニセ人格障害」

2008年02月21日(木曜日)

場面緘黙症の理解について、これはちょっとどうかという新聞記事を見つけました。UWeekly というアメリカのある大学の学生新聞の記事です。

アメリカの学生新聞は大変充実していると聞いたことがあるのですが、この新聞もウェブサイトを見る限り例外ではないようです。ちょっと見た感じ、一般の新聞社のサイトと遜色ありません。学生がこれだけ本格的なものを作るのは大したものだと思います。ただ、残念ながら、一部の記事の内容が悪いです。場面緘黙症のことをよく理解せずに書いています。

この記事は場面緘黙症の無理解について考えるためのとても良い材料だと思うので、取り上げてみることにします。大学生が運営する新聞ということで少し気がひけますが、ネット上で全世界に公開されていますし、Google News はこのサイトをニュースサイトとして扱っています。これも一つの立派な新聞として批評の対象にします。

場面緘黙症は、若者や小学生の子供に影響を及ぼす障害で、一つの衰弱状態と考えられている。SelectiveMutism.org によると、その障害は、「子供または青年が、他の環境(例。家で家族と一緒のとき)では快適に話すことができるにもかかわらず、一つ以上の社会的環境(例。学校、公共の場、大人と一緒のとき)では話せないと特徴付けられる」 その通り--内気であることは、いまやどえらい人格障害なのだ。

Selective Mutism is a disorder that effects young, grade-school children, and is considered to be a debilitating condition. According to SelectiveMutism.org, the disorder is “characterized by a child or adolescent's inability to speak in one or more social settings (e.g., at school, in public places, with adults) despite being able to speak comfortably in other settings (e.g., at home with family).” That’s right ― BEING SHY IS NOW A F*CKING PERSONLITY DISORDER.

最後の最後で、致命的な誤りがあります。場面緘黙症は、ただの内気ではありません。ですから、ただの内気に「場面緘黙症」という大仰な名前をつけて、人格障害として扱おうとしているとか、そういうことではありません。

この著者は、アメリカの場面緘黙症支援団体 SelectiveMutism.org から説明を引いていますが、このウェブサイトのトップページには、場面緘黙症は正常の範囲内の内気ではないときちんと記されています。

この大きな間違いを前提に、記事は続きます。

しかし、いまや親はとても過保護かつ過敏なので、彼らは、子どもが自分たちを困らせるいかなる兆候にもすくみあがっている--たとえそれが、ちょっと内気であるというような単純なものであったとしても。そしてその結果、彼らは巨大なネコちゃん世代を育てている。ジェネレーションPである。

But now parents are so overprotective and oversensitive that they cower at any indication that their kids might embarrass them ― even if it’s something as simple as being a little shy. And as a result they are raising a generation of giant pussies. Generation P.

場面緘黙症なんてちょっと内気なだけだろう、しかし、最近の親は過保護で過敏だから、その程度のことでぎゃあぎゃあ騒いでいる、と言わんとしているのでしょう。先で場面緘黙症支援団体 SelectiveMutism.org から説明が引かれていましたが、おそらくはこの団体に関わっている保護者や、団体の支援サービスを受けている保護者も念頭にこういうことが書かれたのでしょう。

なお、 "giant pussies" を「巨大なネコちゃん」と訳しましたが、自信がありません。ジェネレーションとは、世代のことです。「ジェネレーション・ギャップ」というと、世代間ギャップのことです。
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ジェネレーションPは、実際の子育てにあまりに怠惰であり、そのため、自分たちの親としての欠陥を外の世界のせいにする母親や父親と特徴付けられる。

子どもがけんかに夢中になっている?暴力的なテレビゲームのせいにしろ。ジョニー坊やが「ファック」と言うのが好き?ラップミュージックのせいにしろ。ちょっと内気であるという理由であなたを困らせる女の子がいる?ニセ人格障害をでっち上げろ。なぜならば、ほら--あなたの子どもがおかしい責任は、あなたには確かにないからだ。そうだろう?

Generation P is characterized by mothers and fathers who are too lazy to do actual parenting, so they blame the rest of the world for their shortcomings as parents.

Does your kid get into fights? Blame violent video games. Does little Johnny like to say “f*ck?” Blame rap music. Got a kid that embarrasses you because she’s a little shy? Make up a fake personality disorder. Because, hey ― it certainly couldn’t be your fault that your kid is f*cked up, right?

場面緘黙症なんてニセ人格障害、子育てを怠ける親によるでっちあげだ、ともとれる内容です。

私が説明するまでもないかもしれませんが、場面緘黙症はニセ人格障害でもなければ、でっちあげでもありません。WHO の「疾病及び関連保健問題の国際統計分類」にもちゃんと記載がありますし、アメリカ精神医学会による「精神疾患の分類と診断の手引」にも1980年以来きちんと取り上げられています。日本でも古くから情緒障害として認められ、平成14年5月27日付の文部科学省初等中等教育局長通知「障害のある児童生徒の就学について」では、通級指導教室の対象として、選択性かん黙が挙げられています。専門家の間でも半世紀にわたって研究が続けられています。

■ 理解のない人は、こんなもの

場面緘黙症のことを始めて耳にする人は、このように、ただの内気ではないかと誤解するかもしれません。私が以前、場面緘黙症の動画を作った時に、わざわざ「ただの内気な子、シャイな子ではありません」という一文を入れたのも、このあたりを考慮してのことです。

場面緘黙症はニセ人格障害、でっちあげともとれる記事の内容には驚きを禁じえませんが、ただの内気との区別がつかない人であれば、そう考えるのもある程度は納得がいきます。実際に私は、日本人で、ネット上で似たような発言をした人を見かけたことがあります。

緘黙の子を持つ保護者の間で、学校に子どもの支援を求める動きが広まっているようです。ですが、理解のない学校関係者だと、「これが噂のモンスターペアレントか。緘黙なんて言うけど、ただの内気だろ」などと誤解することもあるかもしれません。


※ 長い文章を、最後まで読んでくださりありがとうございました。日本語訳が読みにくくてすみませんでした。m(_ _)m 人気blogランキング、励みになっています。応援クリックよろしくお願いいたします。⇒ 人気blogランキングへ

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[出典]

UWeekly.COM Generation P and other personality complexes. Retrieved February 21, 2008 from
http://uweekly.com/newsmag/02-20-2008/7627