「文系」に分類される心理学の悲劇

2006年03月12日(日曜日)

「その他、どうも心理学というのは私から見て理解しかねることが多いです。実験をしたり統計学の手法を使ったりするというのに『文系』に分類されたり」

先日、ある方からいただいたコメントに、このような返信をしたのですが、誤解を招く表現でしたので、説明をしておきます。

心理学が文系に分類されるのは、心理学そのものに問題があるのではなく、文系、理系という分けかたにこそ問題があるのではないかと考えています。

心理学が文系に分類されるばかりに、数学や理科(生物含む)を全く勉強しなくても入学できる心理学系統の学部がゴロゴロあります。こんなところでまともな教育がなされているとは考えられません。

※ 最初に断っておきますが、私は心理学を体系的に学んだことはありません。
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■ 文系に分類される心理学とその実態

心理学の教育が行われるのは、大学では教育学系や人文科学系のいわゆる「文系」の学部です。

しかし、実際は、心理学では実験がありますし、統計学が非常に重要になります。心理職の就職先も病院の臨床心理士など、医薬系と親和性が高いのです。

このあたりの事情を知らずに、心理学を「文系」だとおかしなふうに誤解して、大学に入る学生がいるのではないかと不安になります。

私の高校時代、クラスの文学美少女が「心理学に興味がある」と言って、私と同じ大学の人文科学系学部に入ったことを思い出します(つまり、彼女はY美人臨床心理士の後輩にあたります)。もしかすると、彼女は心理学を誤解していたのではないかと、今頃になって少し心配になります。

特に不安なのは、私立大学です。一般に、文系私大では、数学や理科は入試に必須ではありません。Yahoo!学習情報で心理学を教えている私大の学部を見てみますと、国語は必須で配点は高いが、数学は選択、理科の試験はないというようなところがゴロゴロ見つかります。

小説や古文を読むのは好きだけれど、統計学が苦手、実験ができないという学生が、心理学を修めることができるのでしょうか。

憶測ですが、これは教育レベルにも影響してくるものと思われます。統計学が必須だというのに数学が分からない学生が多ければ、当然、やさしくやさしく手ほどきするような授業がなされるはずです。高度な授業は期待できません。

■ 文系に分類される経済学とその実態

こういった事情は、私の出身の経済学部と似ています。

経済学は通常「文系」に分類されますが、その実態は、数学を避けて通ることができません(マルクス経済学は別)。なにせ、理学部を卒業した教官が経済学部に在籍していることがあるほどですから。精神保健福祉にお詳しい方なら、ビューティフル・マインドという映画をご存知でしょう。統合失調症という障害(障碍)を持ちながらもノーベル経済学賞を受賞したジョン・ナッシュの半生を描いた映画です。このナッシュという人も、実は数学者です。

このあたりの事情を知らずに、経済学を「文系」だとおかしなふうに誤解して、大学に入る学生が多いのが実情です。入学したら、偏微分やらラグランジュの未定乗数法やら、ミクロ経済学、マクロ経済学の入り口でいきなり数学が頻出し、学生を悩ませます(といっても、理系からすればそれほど難しい数学ではないのですが)。

それでも、うちの大学などはまだいい方で、私大の中には、数学が苦手な学生が多すぎて、まともな授業が成り立っていないところもあるという話も聞きます。

■ 文系、理系なんてナンセンス

そもそも、学際的研究の重要性が強調されるこの世の中に、文系、理系なんて分けかたに拘るのはナンセンスです。数学的思考力は、どの分野でも重要です。欧米では、日本のように文系、理系なんて分け方はメジャーではありません(ソフトサイエンス、ハードサイエンスという言い方はあるようですが)。

それにしても、心理学って、いったい何学部で研究されるべきなんでしょうかね。私の大学では、人文科学系、教育学系、医学系と、心理学関係の教官が3つの学部に散在しているという状況です。

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