日本の緘黙論文、英語圏に比べて、少なくはない?

2008年06月08日(日曜日)

学術雑誌に掲載されている場面緘黙症の論文に関して言うと、日本語圏の論文の数は、英語圏のものと比べて、それほど少ないわけではないのではないかと、最近考えるようになりました。

■ 日本語圏の学術論文の数

まず、日本語圏の学術論文の数を調べてみましょう。

◇ CiNii に載っているもの、載っていないもの

国立情報学研究所が提供するサービス CiNii で「緘黙」「かん黙」と検索すると、それぞれ 163件、8件の文献がヒットします。

しかし、これら171件が全てアカデミックな論文というわけではありません。学会発表の抄録や、『児童心理』のような、やや学術色が薄い読み物も含まれています。これらを除くと、CiNii で見つけることのできる学術論文は、大ざっぱな数字ですが、85件ぐらいです。

このほか、CiNii に載っていない論文もあります。それについては、私が独自に調査し、場面緘黙症Journal の「論文情報」の中で公開してきました。調査はまだ完全ではありませんが、これ以上調べても新たな論文はなかなか見つからないので、かなりの部分は揃えてあるのではないかと思います。この中で公開した111件のうち、学術論文は、およそ100件です。

◇ 185件程度

このように、私が確認した日本語圏の場面緘黙症の学術論文は、ざっと 85 + 100 で、185件程度です。

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■ 英語圏の学術論文の数

◇ PubMed に載っているもの、載っていないもの

英語圏の学術論文は、PubMed というサイトで検索することができます。このサイトで "selective mutism" "elective mutism" "selectively mute" "electively mute" と検索すると、それぞれ 89件、93件、0件、5件ヒットします。およそ200件の学術論文がヒットします。

このほか、PubMed に載っていないものについては、場面緘黙症Journal の「論文情報」で公開しています。ここで公開しているものもまだ完全ではありませんが、やはりかなりの部分は揃えてあるのではないかと思います。ここでは、およそ80件公開しています。

◇ 280件程度

このように、私が確認した場面緘黙症の学術論文は、ざっと 200 + 80 で、280件程度です。

■ 日本は、決して少なくはないのでは

このように、日本語圏の学術論文は約185件、英語圏は約280件です。

やはり英語圏の方が多いです。しかし、考えてみてください。英語で論文を発表する学者は、アメリカ、カナダ、イギリスなど複数の国に及んでいます。また、こうした英語圏の学者はもちろん、非英語圏の国の学者も、英語で論文を発表することがあります。一方、日本語は、学術界ではほとんど日本の学者しか使わないローカル言語です。このことを考慮すると、日本語圏の学術論文は、数の上では英語圏に比べて必ずしも少ないとは言えないのではないでしょうか。あくまで、大雑把な計算と比較ですが。

なお、ここでお話したのは、あくまで「学術雑誌に掲載された」学術論文です。論文は、このほか書籍に掲載されることもあります。書籍掲載分についてはまだ十分調べていないのでよく分からないのですが、少なくとも英語圏の論文が日本語圏のものよりも数倍以上多いとか、そういうことはないのではないかというのが私の実感です。

また、ここでお話したのは、あくまで学術論文のいわば「量」に限った話です。「質」についてはまた違った議論になるのですが、それはまた別の機会にお話したいと思います。