場面緘黙症は不安障害か

2008年07月10日(木曜日)

このブログでは、場面緘黙症の論文を取り上げています。私は専門家ではなく、自信もないのですが、自分自身の勉強も兼ねて。

今回の論文はこれです。やはり被引用回数が多い論文なので、取り上げます。

Anstendig, K.D. (1999). Is selective mutism an anxiety disorder? Rethinking its DSM-IV classification. Journal of anxiety disorders, 13(4), 417-34.

アメリカ精神医学会が定めた精神疾患の診断基準(DSM)というものがあって、これが大きな影響力を持っています。この診断基準では、場面緘黙症は「幼児期、小児期、青年期の他の障害」(Other Disorders of Infancy, Childhood, or Adolescence)に分類されています。

今回の論文は、それまでの先行研究をもとに、第一に、場面緘黙症は不安障害のカテゴリーに入れるべきである、第二に、場面緘黙症は障害(disorder)というよりは一つの症状(symptom)であると結論づけ、分類の再考を主張しています。

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場面緘黙症の分類、病因は重要な論点の一つで、特に最近では、場面緘黙症が不安障害の一つかどうかの研究が多くなってきています(Sharp, Sherman, and Gross, 2007)。今回の論文はそうした議論に大きな一石を投じたものと言えます。

マスコミレベルでは、英語圏では場面緘黙症は「一つの不安障害」"an anxiety disorder" (Portrait, 2007)、「一つの極度の不安障害」"a severe anxiety disorder" (Boodman, 2007)、 「社会不安障害の一つのタイプ」"a type of social anxiety disorder" (James, 2007) などと、不安障害の一つと説明されることも多いです。

法律の学説の世界では、よく通説、多数説、有力説、少数説という言い方をします。場面緘黙症は不安障害の一つという学説を法律の学説に例えて言うと、多数説あたりにはなるのではないかと思います。ただし、このあたり、ちょっと自信がありません。

昨今の学界での議論を受けて、今後のDSMの改定で場面緘黙症はどう分類されるのか注目されるところです。ですが、DSMのホームページによると、次の改訂版DSM-Vの発表は2012年5月の予定で、まだ少し先になりそうです。

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[文献]

◇ American Psychiatric Association DSM-V: The Future Manual. Retrieved July 10, 2008 from
http://www.psych.org/dsmv.asp
◇ Boodman, S.G. (2007, September 4). Explaining Away Mental Illness. The Washington Post. Retrieved July 10, 2008 from
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/
article/2007/08/31/AR2007083101792_pf.html.
◇ James, S.D. (2007, August 29).
Selective Mutism Is Paralyzing Shyness, Not Psychosis. Retrieved July 10, 2008 from ABC News:
http://abcnews.go.com/Health/story?id=3534240&page=1
◇ Portrait of a killer. (2007, August 30). The Guardian, Retrieved July 10, 2008 from
http://www.guardian.co.uk/world/2007/aug/30/
internationaleducationnews.highereducation
◇ Sharp, W.G,, Sherman, C., and Gross, A.M. (2007). Selective mutism and anxiety: A review of the current conceptualization of the disorder. Journal of Anxiety Disorders, 21(4), 568-579.