「あなただけじゃない」

2008年09月07日(日曜日)

何かに苦しんでいたり辛い思いをしたりしている人に対し、「苦しいのはあなただけじゃない」という言い方をすることがあります。中には、「悲劇のヒロイン(ヒーロー)を気取るな、甘えるな」とまで言う人もいます。

こうした言葉に対して、私などは、「そうか、苦しんでいるのは自分だけじゃないんだな。頑張らなきゃ」と励まされることもありますが、TPOによっては、「なんだ、人の困難を矮小化しようとして!」と頭にきてしまいます。

■ 「私だって話が苦手」

場面緘黙症に伴う発話の困難、コミュニケーションの困難を、当事者でもない人が、このような言葉で矮小化するのは適切とは思えません。

私は場面緘黙症だった頃、家族に「学校で話せなくて困っている」と打ち明けたところ、「私だって人と話すのは苦手」と言われてしまいました。

その打ち明けた相手は場面緘黙症ではなく、吃音のような別の発話の問題を抱えているわけでもなく、私の場面緘黙症も知りませんでした。一般の人は場面緘黙症を知らないので、十分な理解を得られないまま打ち明けると、残念ながらこのような反応が返ってきても不思議ではありません。特に私の家族は、学校場面での私をよく知らなかったので、なおさらです。

■ 「みんな辛いのを我慢して生きている」

場面緘黙症やその後遺症で生きるのが辛い、と人生の問題にまで広げるとどうでしょうか。

「場面緘黙症やその後遺症が辛いというけれど、誰もが人に見せない辛い問題を抱えて、我慢しつつ乗り越えて生きているんだよ」

後段のようなことは、私はネット上で言われたことがあります。もっとも、私にこう話した相手が、私が場面緘黙症の経験者であることを知っていたかどうかは定かではありません。

このように言われると、どうでしょうか。なお、本当に誰もが場面緘黙症やその後遺症に匹敵するような困難を抱えて、歯を食いしばって生きているかどうかは私には分かりません。

■ 「もっと苦しんでいる人がいる」

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「あなただけじゃない」と似た言い回しに、「もっと苦しんでいる人がいる」があります。本当に辛い人生を送ってきた人だと、中には他人が小さなことで悩んでいるように見えて、いらだちを感じる場合もあるかもしれません。

「お子さんが場面緘黙症で辛い思いをしているというけれども、世の中には、もっと重い障害(障碍)で生きづらさを感じている子どもたちがたくさんいるよ。それから、飢餓にあえいでいる最貧国の子どもたちの現状、知ってる?」

このように言われると、どうでしょうか。私は、相手の気持ちを考えるとこうは言えませんし、そもそも、こうした考えが頭をよぎることすらありません。

なお、この世のあらゆる障害(情緒障害を含む)の中で、いったい何が一番生きづらさを感じさせるものなのか、場面緘黙症や全緘黙症は生きづらい障害ランキングで何位に入るのかは、私には分かりません(興味もありません)。

■ 「そうだよね、辛いよね」

なお、私だと、上のような言い方はあまりしません。相手が何か辛い思いをしていると訴えると、「そうだよね、辛いよね」と共感の姿勢を示します。カウンセリングの考え方か何かの影響を受けているのだろうと、自分で思います。