「社会恐怖症の一種としての場面緘黙症」
このブログでは、場面緘黙症の論文を取り上げています。私は専門家ではなく、自信もないのですが、自分自身の勉強も兼ねて。
今回の論文はこれです。やはり被引用回数が多いので、取り上げます。
Black, B., and Uhde, T.W. (1992). Elective mutism as a variant of social phobia. Journal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatry, 31(6), 1090-1094.
■ 概要
Rebecca ちゃんという、12歳の場面緘黙症の女児の事例研究です。先行研究を概観し、場面緘黙症は社会恐怖症の一種である可能性があると論じています。
■ 考察
場面緘黙症は社会恐怖症ないし社会不安障害の一つという説は、今日、英語圏ではかなり広まっています。一般人のブログにも、場面緘黙症をそう捉えているものが見受けられます。この説の元はどこだろうと調べたところ、今回の論文にたどり着きました。
今回の論文のうち、Rebecca ちゃんの症例を示した部分は、よくある内容だろうと思います。注目すべきは、場面緘黙症は社会恐怖症の一つという見方を示した考察の部分です。
しかし、この論文の内容だけでは、場面緘黙症が社会恐怖症の一つと結論付けるには、根拠が不十分ではないかと思います。著者が "Elective mutism may be a manifestation of social phobia..." と断定を避けているのも、そのためでしょう。今回の論文は問題提起と受け止めるのが妥当だろうと思います。
そして、この論文の3年後に、同じ著者の Black、Uhde 両氏による Psychiatric characteristics of children with selective mutism が発表されました。場面緘黙症児のほとんどが(この論文では97%)社会不安や回避性障害をあわせもっていることなど七つの根拠を挙げ、今回の論文よりも丁寧に「場面緘黙症は、社会不安の一つの症状である」と結論付けています。
しかし、Black、Uhde 両氏の論文が発表された後にも、この説にはまだ議論の余地が残っており、いまだ定説にまでは至っていないのが現状ではないかと思います。みなさんご存知の『場面緘黙児への支援』も、この説には慎重です。さらなる議論が必要でしょう。
いずれにせよ、今回の論文は、場面緘黙症の概念化に一石を投じたものとして、評価できます。
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[関連ページ]
◇ 今回の論文の詳細ページ(場面緘黙症Journal 論文情報)
◇ 場面緘黙症児の特徴を調べた論文
2008.09.28 | Comments(0) | Trackback(0) | 緘黙症の論文を読む(洋)

