認知行動療法と薬物療法の組み合わせ

2008年11月08日(土曜日)

子どもの不安障害の治療に、認知行動療法と薬物療法の組み合わせが効果的という研究結果が、先月30日に発表されました。医学専門雑誌New England Journal of Medicine(オンライン版。医学雑誌としては定評があるらしい)で公開されています。私は専門家ではないのですが、自分自身の勉強も兼ねて書きます。

Walkup, J.T., Albano, A.M., Piacentini, J., Birmaher, B., Compton, S.N., Sherrill, J.T., Ginsburg, G.S., Rynn, M.A., McCracken, J., Waslick, B., Iyengar, S., March, J.S., and Kendall, P,C. (2008). Cognitive Behavioral Therapy, Sertraline, or a Combination in Childhood Anxiety. New England Journal of Medicine. Retrieved from http://content.nejm.org/cgi/content/full/NEJMoa0804633

分離不安障害、全般性不安障害、社会不安障害(社会恐怖症)の診断を受けた7-17歳の子ども488人を4つのグループに分け、それぞれのグループに認知行動療法、薬物療法(抗うつ剤 Zoloft)、両者の組み合わせ、偽薬の投与を行ったところ、認知行動療法の組み合わせと薬物療法の組み合わせが最も効果的という結果が得られました。また、薬物療法を行ったグループと偽薬を投与したグループとでは、子どもに起きた有害な出来事に差がなく、自殺者(抗うつ剤の副作用として挙げられる)の数もゼロでした。

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これは場面緘黙症に関する研究ではありません。ただ、緘黙症児のほとんどが社会不安障害を併せ持っていることを考えると、緘黙の子どもへの治療に示唆するところもあるのではないかと思います。

場面緘黙児への支援』には、「場面緘黙の治療に最適な年齢は、認知行動療法が効果を発揮する年齢よりも早いのではないか」と書かれています。ですが、実際には、治療に最適な年齢を逸してしまい、ある程度の発達段階に達した緘黙の青少年もいることでしょう。そうした人には、認知行動療法も選択肢の一つとして考えられるのではないでしょうか。

なお、この研究で用いられた認知行動療法は、Kendall PC氏 と Hedtke KA氏による、Coping Cat プログラム(下の本)がもとです。アメリカで開発された、子ども向けの認知行動療法と思われます。

Cognitive-Behavioral Therapy for Anxious Children: Therapist ManualCoping Cat Workbook (Child Therapy Workbooks Series)

それから薬物療法についてですが、今回の研究で用いられた薬は Zoloft(ゾロフト)という抗うつ剤です。海外で販売されている抗うつ剤の中には日本で販売されていないものもあるのですが、Zoloft については、日本でも JZoloft(ジェイゾロフト)という名前で販売されています。ですので、薬物療法については、日本でも、この研究と同じ方法をとることができます。

今回の研究は、多数の研究機関が行った大規模なものですが、場面緘黙症で同じような規模の研究はさすがに望めません。ですが、ここまでの規模でなくても、こうした治療法に関する実証研究が場面緘黙症の分野でも今後行われ、さらに実際の治療に生かされることを期待します。行動療法の効果についてはある程度実証されてきているのに対し、認知行動療法や薬物療法の効果の実証はまだそれほど進んではいません。