坂野雄二『無気力・引っ込み思案・緘黙』

2008年11月18日(火曜日)

本今回は、坂野雄二『無気力・引っ込み思案・緘黙』、黎明書房、1989年についてお話します。私は専門家でも何でもないのですが、私自身の勉強も兼ねて。

この本は、このブログをご覧の皆様の中にも、名前ぐらいは聞いたことがある、読んだことがある、という方がわりと多いのではないかと思います。

というのも、つい最近まで、緘黙症を大きく扱った書籍で入手が容易なものといえば、『場面緘黙児の心理と指導』と、今回の『無気力・引っ込み思案・緘黙』ぐらいしかなかったからです(体験記を除く)。また、自治体の図書館が時々所蔵していることがあり、緘黙症に関心のある方の間では、ある程度手に取られているものと思います。

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この本は182ページからなりますが、そのうち 72-118ページ(第2章)が、緘黙症に関する内容です。

その内容は、主に国内の先行研究をもとにした、緘黙症の概説です。「緘黙の心理」「緘黙の診断」「緘黙の指導」の3つの節から構成されています。

よくまとめられてあるので、緘黙症、特に場面緘黙症が国内で過去にどう研究されていたのかを簡単に知るには、有用だろうと思います。『場面緘黙児の心理と指導』にはないことも書かれてあります。

ただ、どうもこの本は臨床家向けのようです。例えば、緘黙のわが子にどう接すればよいかとか、緘黙を自力で克服するための方法とか、そうしたことは書かれてありません。このため、このブログの多くの読者の方には、あまり向かない本かもしれません。

なお、現在はもっと新しい研究成果に基づいた本や、より詳しい本が出ています。具体的には、『場面緘黙Q&A』『場面緘黙児への支援』、『場面緘黙児の心理と指導』です。私が保護者の方に何か1冊おすすめするとすれば、むしろこれらの本を挙げます。

今回の本では、緘黙以外にも、引っ込み思案や無気力など、目立たなくて見落とされがちな非社会的行動問題が正面から取り上げられており、その点を高く評価したいと思います(偉そうなこと書いて、スミマセン)。現在でも不登校、ひきこもり、ニートといった、目立つものはよく問題視されるのですが、引っ込み思案や緘黙などの目立たない行動問題は、いまだに見落とされがちなのではないでしょうか。

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