[緘黙] 何も話さなくても、気持ちは通じ合う? [ストーリー]

2008年12月02日(火曜日)

緘黙ストーリー、中学生編の第12回です。通算第39話をお届けします。

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前回前々回とお話したとおり、中学2年のクラスでは、NさんやRさんといったクラスの中心グループの女子が、私にベタベタしてきたのでした(私は男です)。緘黙の男の子がかわいかったのでしょうか。

彼女たちに混じって私にベタベタしてきた女子の一人に、Sさんという人がいました。今回は、このSさんのお話です。

※ 最近の緘黙ストーリーは、なんだかクラスの女子のことばかり書いています。

■ ちょっと無口なSさん

このSさんという人、私から見れば少し不思議な人でした。私にベタベタしてきた女子はおしゃべりな人ばかりだったのですが、Sさんは少々無口で、声が小さい人でした。しかし、どこか開放的で、どちらかと言えばクラスの中心グループにいるという、そういう人でした。

その無口な性質ゆえか、Sさんが男子と話している場面をほとんど見たことがありません。しかし、私に対してだけは、「ヒロシー♪」と下の名前で呼んで、わりと話しかけてくれました。私はよほど好かれていたのか、それとも、緘黙で変わり者だったため、ある意味、男子と思われていなかったのか…。

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■ 私が一番気に入っていたのがSさん

これから少し恥ずかしい話に入ります。読者の方は、覚悟してください。

実はこのクラスで、私にベタベタしてきた女子のうち、私が一番気に入っていたのが、このSさんでした(といっても、恋愛感情は欠片もありませんでした!)。

Sさんは少し無口な人だったので、緘黙の自分に似たところがあると、勝手に親近感を感じていました。

また、Sさんと私とは出席番号が同じだったため、何かと一緒になったことも、Sさんに好感を覚えるようになった大きな理由でした。出席順の座席では私のお隣はいつもSさんでしたし、グループ分けでも、Sさんと一緒になることが多かったです。

■ Sさんと一緒なら、言葉はいらなかった

私にとって不思議だったのは、Sさんは、お友達と一緒の時は私に親しく話しかけてくれるのに、私の隣に座って二人きりになると、なぜか黙り込んでしまうことでした(こういうのは、場面緘黙とは言いません)。「Sさんって、僕の隣に座ってること、どう思ってるんだろう?」これが、私にとって大きな謎でした。

ともあれ、隣の席のお相手が常日頃から親しくしてくれる人だと、なんだかとても安心できます。それに、嬉しいものです。私にとっては、Sさんが隣の席に座っていれば、何も話してくれなくてもそれで十分でした。Sさんと一緒なら、言葉などいらなかったのです。

これは、緘黙が治った現在の私には、なかなか考えられないことです。今の私なら、誰かと一緒にいると、何か話さないと、気まずい「間」ができてしまうと思いがちです。

■ 何も話さなくても、気持ちが通じ合っている…?

そうしてSさんの隣に座り続けているうちに、「もしかしたら、Sさんも、僕の隣に座っていることを嬉しく思ってくれているのではないか」とか、「お互い何も話さなくても、気持ちは通じ合っているのではないか」とか、だんだんと妄想が膨らんでいきました。

Sさんと二人で座っていると、ただ黙って一緒にいるだけでも、何か通じ合うものを感じるというか、そんな気がしたのです(気のせい、気のせい!)。

あるとき、音楽の授業でリコーダーのテストをしました。テストは、出席順で隣の席に座っている者同士がペアになって行うものでした。多くのペアが課題曲をうまく吹きこなせない中、私とSさんのペアは、最後までパーフェクトで吹き終えました(私は緘黙でしたが、リコーダーは吹けました)。ああ、やっぱり僕とSさんは気持ちが通じ合っているのかも!と、妄想に拍車がかかってしまいました。

Sさんとは、3年になっても同じクラスになりました。しかし、3年に入ると、Sさんは、なぜか2年のときのように私を可愛がってくれなくなりました。気持ちは通じ合っていなかったのでしょう。(>_<)


もっとも、私の方こそ、学校で緘黙していたので、Sさんにとっては、何を考えていたのかはっきり分からなかったに違いありません。

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◇ [緘黙] 演歌に目覚める [ストーリー]

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