[緘黙] 何も話さない男と同じクラスになって、何が楽しいのか [ストーリー]

2009年04月04日(土曜日)

緘黙ストーリー、中学生編の第16回です。通算第43話をお届けします。今回から、中学3年生編に入ります!

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中学3年は、中学校の最上級学年です。長かったような短かったような中学生活も、あと1年で終わりです。

義務教育最後の学年でもあります。進路に向けた準備がいよいよ大詰めを迎える学年です。もっと言えば、高校進学を見据えた受験勉強が本格的になる学年です(私も、他のほとんどの生徒も、高校進学を考えていました)。そう考えると、身が引き締まる思いでした。

その一方、私は新しいクラスの女子の顔ぶれを見て、「このクラスには美人が少ない」「僕の青春は終わった」と密かにガッカリするなど、軽薄なことも考えていました(緘黙してたって、思春期なんです!許してやってください!)。

新しいクラスには、中2のときの同級生・陸上部のRさんがいました。長身でスタイルがよく、端整な顔立ちをしたRさんは、このクラスでも一番の美人でした(中2のときも、彼女が一番美人でした)。

■ 中2の時、一番仲良かった人と同じクラスに

Rさんは中2のとき、女子でありながら、緘黙の私に一番仲良くしてくれたクラスメイトでした(第38話「どうして彼女は、僕のためにここまで」参照)。この学校は1学年11クラスあったことを考えると、彼女とまた同じクラスになったのは偶然とは考えにくいです。緘黙の私への、先生の特別な配慮だったのかもしれません。ですが、もし偶然なら、これはドラマチックです。

「私、2年のとき、ヒロシと同じクラスだったんだよー!」
「ね、ね、(ヒロシは)カワイイでしょ!」

新しいクラスで、Rさんは、自分の友人・知人たちに、私のことを楽しそうに紹介していました。

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このとき私は、Rさんはなんて心優しい人だろうと感じ入りました。私のことをこういう形で色々な人に好意的に紹介して、緘黙の私が新しいクラスの人間関係でつまづかないよう、予め手を打ってくれているのだろうと解釈していました。

ですが今になって考えると、単にRさんは、私と同じクラスになった喜びを誰かと分かち合いたかっただけなのかもしれません。もしくは、2年のときのように、一緒に私のことを「カワイイ」と言って騒ぐ友達が欲しかったのかもしれません。はたまた、ヒロシのかわいさを、多くの人に知ってもらいたい!と考えていたのかもしれません(私には理解できない世界ですが…)。

■ Rさんと会話

この頃、Rさんと一言二言、何か会話をした記憶があります。そのとき、私はRさんのことを「Rさん」と言ったのですが、それに対してRさんは優しい声で、こう答えていました。

「ヒロシ、私はヒロシのこと呼び捨てで呼んでるんだから、ヒロシも私のこと『R』って、呼び捨てで呼んでくれていいんだよ」

なるほど、向こうは呼び捨てで呼んでくれているのに、こちらは「さん」付けとは失礼というものです。それにしても、人間関係が希薄な人生を送ってきた私にここまで踏み込んで言った人は、Rさんが初めてです。

この話からはまた、当時の私は、学校でも一言二言程度なら話ができるようになっていたことも分かります。きっと小声で、しかも何か必要に迫られての会話だったのではないかと思うのですが。

■ 初登場!Pさん・Qさんコンビ

もう一人、私と同じクラスになって喜んでくれた人がいました。

それは、Pさんという女子生徒です。実はPさんと私は小学校以来の同級生で、中2のときも同じクラスで少し親しくしていたのでした。今回またしても同じクラスになったうえ、班まで一緒になったということで、大変喜んでくれました。

「ねえQ、富条君のこと覚えてる?私、2年のとき、同じクラスだったんだよ!」

「Q」とは、Pさんの女友達です。Pさん、Qさん、そして私の3人は、小学校の頃同じクラスだったことがあります。今回、久しぶりにみな同じクラスになったわけです。

この時以後、Pさん・Qさんコンビは、これまで以上に私に親しくしてくれるようになりました。また、例によって、私のことを「カワイイ」と言うようにもなりました。

■ 緘黙男と同じクラスになって、何が楽しいのか

陸上部のRさんも、Pさん・Qさんコンビも、クラスの中でも特に活発な女の子でしたが、それだけに、ほとんど何も話さない私などと同じクラスになって、一体何が楽しいのだろうと不思議に感じていました。

■ 予感

このように、新学期が始まり、女子3人が私にとりわけ親しくしてくれたのですが、男子で親しい人はできませんでした。一番親しいクラスメイトは男子ではなく女子という逆転現象が、中2に続いて起きてしまいました。しかも、友達と言えるほど仲のよいクラスメイトは、相変わらずできないままでした。

ですが、このことについては、私は特に問題には感じていませんでした。相変わらず、友達なんていなくても構わないと思っていたので。

新しいクラスでは、上の女子3人のほかに、中2で私と出席番号が同じだったSさんもいました。彼女とも、2年のときと同様に仲良くできるだろうと思っていました。そのほか、知っているクラスメイトが男女問わずたくさんいました。

新しいクラスではいじめも受けず、人間関係で苦しむことはないだろう。当初はそう考えていました。

[続きの話]

◇ [緘黙] なんだ、この修学旅行は [ストーリー]